ロゴ

お気軽にご相談ください!

0120-390-865 受付時間:平日10:00〜18:00

NEWSお知らせ

2025.05.09  2025.05.26コラム

ABW(Activity Based Working)とは?働きやすいオフィス環境の作り方

多様化する働き方への対応が求められる中で、「ABW(Activity Based Working)」という考え方が注目を集めています。業務内容に応じて働く場所やスタイルを柔軟に選べるABWは、従来のオフィス運用に変化をもたらします。本記事では、ABWの基本概念から導入時に考慮すべきポイント、具体的なオフィス設計の工夫までをわかりやすく解説します。

ABWとは何か?働き方の基本概念と背景

働く場所を自ら選ぶという考え方

ABW(Activity Based Working)は、業務の内容に応じて最適な場所・時間・方法で働くことを重視するワークスタイルです。業務特性や従業員の気分、集中度合い、必要なコミュニケーションの形などに応じて、自席に縛られず柔軟に働く環境を整えるという特徴があります。単に「どこでも働ける」状態を指すのではなく、「何をするか」に基づいて最適な働き方を選べる仕組みを整えることが、ABWの基本的な考え方です。

オフィス内では、集中作業に向いた静かなスペース、打ち合わせに適した半個室、カジュアルなディスカッションがしやすいラウンジなどを複数設け、それぞれの目的に応じて自由に選択できる環境が求められます。加えて、必要に応じて自宅やサテライトオフィスなどオフィス外の選択肢を取り入れることで、より広範な柔軟性を実現します。

このように、ABWは「場所の自由」だけでなく、「目的との一致」が働き方を支える軸になっているという点で、他のスタイルとは一線を画します。

フリーアドレスやテレワークとの違い

ABWは、よく比較される「フリーアドレス」や「テレワーク」と混同されることがありますが、考え方の根本が異なります。フリーアドレスは、従業員の座席を固定しない仕組みですが、ABWでは座席の自由だけでなく、業務内容によって適した場所そのものを選び取ることが前提となっています。

また、テレワークは「場所に縛られない働き方」として定着していますが、ABWは「働く目的に最も適した環境を選ぶ」という方針が軸です。たとえば、チームでの対話が必要な場合はオフィスに集まり、個人作業に集中したいときは静かなスペースや自宅を選ぶといったように、業務に最適な選択を自律的に行う仕組みが重視されます。

このため、ABWはフリーアドレスやテレワークの要素を内包しつつ、それらをより戦略的に統合した働き方といえます。

日本国内で注目が高まる背景

近年、ABWは国内の企業においても関心が高まっています。その背景には、働き方改革の推進や感染症拡大を契機としたオフィスの見直し、さらに人材の多様化といった社会的な変化があります。企業は一律の制度や物理的な制限に頼るのではなく、柔軟で自律性の高い働き方を制度として組み込む必要性を感じ始めています。

また、従業員のモチベーションや生産性を引き出すには、業務内容や性格に合った働く環境が整っていることが重要です。ABWの考え方は、このような個別性への配慮や、環境整備による能動的な働き方の支援という観点で、注目を集めています。

国内では、オフィス家具メーカーや設計会社などがABWを取り入れた空間設計の提案を強化しており、オフィスづくりにおけるひとつの潮流となりつつあります。

ABWが求められる理由と導入の動機

従業員の多様なニーズへの対応

働き方に対する価値観やニーズは、組織内でも人それぞれ異なります。集中して業務に取り組みたい人、チームでの対話を重視する人、気分を変えて場所を選びたい人など、多様な働き方が求められる中で、画一的なオフィス設計や就業制度では対応が難しくなっています。ABWは、そのような状況に対して柔軟に応える手段として注目されています。

働く場所や時間、使用するツールを選択できる環境が整うことで、従業員は自身の能力を最大限に発揮しやすくなります。個々のパフォーマンスやモチベーションを向上させるためには、環境への適応性と選択肢の広さが不可欠です。ABWはそうした多様性への受け皿として、有効に機能します。

オフィススペースの再評価

従来のオフィスは、固定席を中心とした画一的な設計が主流でした。しかし、近年の働き方の変化により、オフィスという空間の役割そのものが見直されています。単なる作業場所ではなく、コミュニケーションや創造性を引き出す場として、空間の再設計が求められています。

ABWの導入を検討する企業は、既存のスペースを再構築し、機能性や柔軟性を高めることに着手しています。個人作業に特化した静かなエリア、リラックスできる交流スペース、集中を促すブースなど、複数の目的を持った空間を組み合わせることにより、業務効率と快適性を両立させることが可能になります。

こうした取り組みは、単にレイアウトを変更するだけでなく、オフィスの在り方そのものを再定義することにつながります。ABWはその起点として、企業文化や組織運営にも影響を与える視点を提供します。

業務効率化への貢献

業務に適した環境を自ら選ぶことができれば、無駄な移動やコミュニケーションの齟齬を減らすことができます。たとえば、個別対応が多い職種であれば、パーソナルなスペースが適しており、逆にプロジェクト型の業務であればチームで集まる環境が必要です。ABWは、そうした業務ごとの最適な環境選択を促すことで、作業の質とスピードを高める効果が期待されます。

また、従業員の自主性を尊重するABWは、単なる制度変更にとどまらず、日々の働き方に対する意識変革にもつながります。従業員が「どこで」「どのように」働くかを自ら判断することで、業務への主体的な関与が促進されます。このような姿勢は、組織全体の効率向上に直結しやすく、長期的には企業の生産性向上にも貢献します。

ABW導入のために必要な要素

物理的なオフィス環境の設計

ABWを実現するためには、まずオフィスの物理的な環境整備が欠かせません。従来のような固定席を前提とした構成では、業務内容に応じた柔軟な働き方を支えることは困難です。そこで必要になるのが、用途に応じたスペースの多様化です。

たとえば、集中作業に適した静かなゾーンや、短時間の打ち合わせに使えるカジュアルなスペース、リラックスしてアイデアを出し合えるようなクリエイティブエリアなど、目的に沿った場所を複数配置する設計が求められます。これにより、従業員はその日の業務や気分に応じて、最適な場所を自律的に選択することが可能になります。

また、レイアウトの可変性や移動のしやすさも重要な要素です。必要に応じて机や椅子を動かしたり、ゾーンを入れ替えたりできる柔軟性があれば、利用者にとっても心理的な負担が軽減されます。こうした構成が整っていない場合、制度だけが先行し、ABWの効果が十分に発揮されないことがあります。

社内ルールと運用フローの整備

環境の整備と並行して不可欠なのが、明確なルールづくりと運用フローの確立です。ABWは自由度の高い働き方を可能にする一方で、組織としての秩序や運用基準が曖昧になりやすい側面を持ちます。そのため、自由と規律のバランスを取るための指針を用意する必要があります。

たとえば、スペース利用の優先順位や予約方法、使用時のマナー、在席管理のルールなどを具体的に定めておくことで、利用者間のトラブルや混乱を未然に防ぐことができます。また、管理部門が利用状況を把握できる仕組みを持つことで、継続的な改善にもつなげられます。

さらに、制度を一度整えたからといって終わりではなく、定期的に現場の声を集めてルールを見直していく運用体制も欠かせません。ABWは導入が目的ではなく、機能し続けることに価値があります。そのためには、利用者と運用側の双方向でのやりとりを継続的に行う姿勢が求められます。

ツール・システムの適切な選定(例:Google Workspace、Microsoft 365)

ABWの実践には、場所を選ばずにスムーズな業務遂行を可能にするツールやシステムの活用が不可欠です。特に、情報共有やスケジュール管理、資料の作成・保存などをオンラインで完結できる仕組みは、ABWにおいて中心的な役割を担います。

国内で広く利用されている「Google Workspace」や「Microsoft 365」などは、社内外を問わず円滑な連携を可能にする代表的なツールです。チャット・ビデオ会議・ファイル共有といった基本機能が統合されており、物理的な距離を感じさせない働き方を支える基盤となります。

また、これらのツールはセキュリティ面にも配慮されているため、情報の管理や権限設定などの運用ルールと組み合わせることで、安全性を確保しながら柔軟な働き方を実現できます。システム選定の際には、社内のITリテラシーや業務特性を踏まえて、無理なく運用できる範囲から導入を始めることが現実的です。

ABWの導入は、制度や環境だけでなく、ツール・システムの整合性と運用力も問われる取り組みです。全体としての設計力が不足している場合、働きやすさの追求がかえって業務の煩雑化につながるおそれもあります。適切なバランスを見極めながら、段階的に進めていくことが鍵となります。

ABWの導入ステップと社内浸透のプロセス

現状分析と課題の洗い出し

ABWの導入を検討する際は、いきなりレイアウト変更や制度整備に着手するのではなく、まずは現状の働き方やオフィスの利用状況を正確に把握することが出発点となります。どのような業務が多く、どのような空間が足りていないか、社員が感じている不便やストレスの要因などを整理することが重要です。

この段階では、ヒアリングやアンケートといった手法を活用し、実際に働いている社員の声を広く集めることが求められます。また、オフィスの利用実態や座席の稼働率などを可視化することで、定量的な視点からも課題を明確にすることが可能になります。

こうして現状のギャップを見極めることで、ABWを導入する意義や改善すべき優先順位が明確になります。焦点を曖昧にしたまま制度を導入すると、かえって社員の混乱や運用の停滞を招くため、初期段階での分析は非常に重要です。

パイロット運用とフィードバックの活用

分析結果に基づいてABW導入の方向性が定まったら、次に進めるべきはパイロット運用です。全社一斉に導入するのではなく、一部の部署やフロアを対象にして小規模な試験導入を実施することで、実際の運用における課題や調整点を確認することができます。

パイロット期間中は、利用者の動きや反応を観察し、何がスムーズに運用され、どこに摩擦が生じているかを把握する必要があります。運用フローの妥当性やスペースの設計、ツールの使い勝手など、現場視点での改善点を洗い出すことが目的です。

また、実施後には対象者からのフィードバックを収集し、それを基に改善策を検討するプロセスが重要です。定性的な声をそのまま反映するのではなく、全体のバランスを見ながら制度設計に落とし込むことで、次の段階に進む準備が整います。

このような段階的な進行により、導入リスクを抑えながら制度の完成度を高めることが可能になります。

全社導入と定着化に向けた工夫

パイロット運用で得た知見をもとに制度や環境を調整したら、いよいよ全社展開を進めるフェーズに移行します。この段階では、制度の意図や使い方を全従業員に丁寧に伝えることが不可欠です。特に、ABWは自由度の高い働き方である一方、各自の理解や使いこなしに差が出やすいため、導入初期のサポートが重要となります。

具体的には、研修やガイドラインの整備、Q&A対応の設置などにより、スムーズな運用を支援する体制を整える必要があります。また、現場のリーダー層が率先して活用し、模範を示すことで、制度への信頼感を醸成することにもつながります。

さらに、制度を定着させるには継続的なモニタリングと改善が欠かせません。導入後にアンケートやミーティングを通じて社員の声を収集し、必要に応じてルールや空間の見直しを行う柔軟性が求められます。形だけの制度にならないよう、運用の「更新性」を確保する視点を持つことがABWを長期的に機能させる鍵となります。

ABW導入によるメリットと注意点

期待できる成果と効果

ABWの導入によって得られる最も大きな効果のひとつは、働く人それぞれのスタイルに合わせた柔軟な選択が可能になる点です。従来の固定的な座席や就業スタイルでは実現が難しかった、自律的で多様な働き方が実現しやすくなります。

業務に適した場所を選べることにより、集中力が高まり、業務効率や生産性の向上にもつながります。また、コミュニケーションが必要な場面では自然と人が集まる設計にすることで、組織内の連携が円滑になる効果も期待できます。

さらに、オフィススペースの使い方が見直されることで、空間の無駄を減らし、設備や管理にかかるコストの最適化にもつながります。限られたリソースを有効に活用しながら、パフォーマンスを引き出す環境づくりを支える点が、ABWの魅力です。

コミュニケーションの変化への対応

一方で、ABWを導入することにより、従業員同士の物理的な距離が生まれやすくなります。場所や時間を自由に選べるという特性上、固定席での業務と比べて、日常的な会話や偶発的なコミュニケーションが減る可能性があります。

これに対しては、情報共有や連携を補うための仕組みや文化を組織として意識的に整備する必要があります。たとえば、チーム内で定期的に進捗を共有するミーティングを設けたり、チャットツールを活用して気軽に話しかけられる環境を整えることが有効です。

また、働く場所が分散することで、組織内での一体感や帰属意識の低下が懸念される場面もあります。これを防ぐには、部門間を超えた対話の場やイベントの設計などを通じて、意図的に交流を生み出す工夫が求められます。

勤怠管理・セキュリティ上の課題

ABWの自由度の高さは、労務管理やセキュリティに対しても新たな視点を必要とします。特に勤怠管理の面では、固定された時間・場所に縛られない働き方に対応するため、柔軟かつ正確に勤務状況を把握できる仕組みが求められます。

この点では、日本国内でも導入事例の多いクラウド型の勤怠管理システムが有効です。リアルタイムでの記録やスマートフォン対応などを活用することで、従業員の働き方を正しく反映しながら、管理負担を軽減することが可能になります。

加えて、情報セキュリティ面での対策も見逃せません。従業員が多様な場所から社内情報へアクセスする状況では、端末やネットワークの安全性を保つ対策が必須です。アクセス権限の明確化や、ログ管理、ウイルス対策ソフトの導入など、基本的な対策を徹底し、環境に応じたリスク管理を行う必要があります。

ABWのメリットを最大限に引き出すためには、こうした制度面・技術面の下支えが不可欠です。働き方の自由と、企業としてのガバナンスとの両立をいかに実現するかが、導入成功の鍵となります。

ABW導入企業の取り組み事例(日本国内)

オフィスの多機能化とゾーニングの工夫

ABWを導入している企業の多くでは、オフィス空間そのものの再設計が積極的に行われています。特に重視されているのが、「一人で集中する場所」「複数人で話し合う場所」「気軽に立ち寄って交流できる場所」など、目的に応じたゾーンを明確に分ける設計です。

このような構成により、従業員は自分の業務内容に適した場所を選んで働くことができるようになります。たとえば、静かな環境が求められる作業には、音の少ない集中ブースを使い、創造的なアイデア出しには柔らかな照明やカジュアルな家具が並ぶエリアを活用するなど、空間の使い分けが自然と行われています。

また、フロアの中にリラックスできるスペースやカフェ風のエリアを設けることで、仕事の合間に気持ちをリセットできるような設計も見られます。このような物理的な環境整備は、ABWの効果を最大限に引き出す基盤として欠かせません。

制度設計と社員の声の反映

ABWの運用を成功させている企業では、制度面でも独自の工夫が施されています。まず重要なのは、単にオフィスを開放的にするだけでなく、「誰が・いつ・どこで働くか」を柔軟に調整できるルールや仕組みを整えることです。

たとえば、座席の予約システムを導入して利用状況を把握しやすくしたり、週ごとに勤務場所を申請できる仕組みを設けたりと、実際の運用に即した制度が採用されています。また、一定のルールのもとであれば出社・在宅のハイブリッド運用も可能とし、従業員にとっての選択肢を広げている例もあります。

これらの制度設計においては、現場の意見を取り入れる姿勢が非常に重要です。定期的なアンケートやワークショップを通じて、社員の声を反映しながら運用ルールを調整していくことで、納得感と使いやすさの両立を図っています。こうした双方向の取り組みが、制度定着の大きな支えとなります。

柔軟な働き方に対する評価と課題感

ABWを導入したことで、社員からは「働く環境を自分で選べるのがうれしい」「業務に応じた場所で仕事ができて効率が上がった」といった肯定的な声が多く挙がっています。特に、自律的に働くスタイルが定着している職場では、集中力の向上やストレス軽減といった効果が実感されているようです。

一方で、すべての従業員がすぐにABWに順応できるわけではありません。働く場所が日によって変わることに戸惑いを感じたり、固定席の方が安心感を持てるという声も存在します。また、チーム内での連携が弱まりやすいといった懸念も一部では見られます。

このような声に対しては、無理にABWを押し付けるのではなく、選択肢の一つとして提供しつつ、徐々に文化として根付かせていくスタンスが効果的です。柔軟な働き方には柔軟な対応が求められるという意識のもと、導入企業は試行錯誤を重ねながら、自社に適した形を模索しています。

まとめ:ABWを実現するために意識すべき視点

ABWの導入は単なるオフィスの再構築ではなく、組織全体で「働き方の本質」を見直す取り組みであり、制度設計・空間構成・意識改革の三方向からのアプローチが求められます。導入を成功させるためには、一律の施策を押し付けるのではなく、現場の声に耳を傾けながら自社に適した運用方法を丁寧に設計し、柔軟に調整していく姿勢が欠かせません。