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2025.06.03  2025.05.26コラム

WELL認証とは?オフィスに導入するメリットと取得の流れ

働き方の多様化や健康経営の重要性が高まる中、オフィス環境そのものが企業価値の一部として注目されています。その流れの中で、従業員の心身の健康に配慮した空間設計を評価する「WELL認証」が広がりを見せています。本記事では、WELL認証の基本的な考え方から、導入によって得られる具体的なメリット、取得までの実践的なプロセスに至るまでを丁寧に解説します。制度の背景や仕組みにとどまらず、現場で役立つ情報に焦点を絞り、実務に直結する内容をお届けします。

WELL認証とは何か

健康と快適性を重視する認証制度

従業員が長時間を過ごすオフィス環境は、単なる作業空間ではなく、心身の状態や業務の質に影響を与える要素として注目されています。そのような背景のもとで設けられたのが「WELL認証」です。この制度は、建築物がどれだけ人間の健康や快適性に配慮されているかを評価する仕組みです。設計や設備の優劣だけではなく、利用者の視点に立って「働く人にとって心地よいかどうか」を軸に基準が設定されています。

WELL認証は、建築・インテリア・設備・運用といった多方面の改善を促す制度として活用されており、取得の有無がオフィスづくりの質を測る一つの指標となっています。制度は日本国内でも徐々に普及しつつあり、働く環境の質を高める取り組みとして、多くの企業が注目を寄せています。

WELL認証の評価項目と仕組み

WELL認証では、働く人の健康と快適性を包括的に捉えるため、評価軸が非常に多岐にわたります。制度全体は10の評価コンセプトで構成されており、「空気」「水」「光」「温熱快適性」「音」などの物理的環境に加え、「運動」「食物」「こころ」「材料」「コミュニティ」といった心理的・行動的な側面も対象としています。これらの要素は、オフィスにいる人の行動や心理、健康状態に直接関わる要素として設計されています。

評価方法には、計画・設計段階での書類審査に加え、実際の使用環境をチェックする現地審査が含まれています。つまり、表面的な設計意図だけでなく、運用の実態まで含めた「実効性」が重視されているのが特徴です。

また、評価結果に応じて、4段階のレベルが設定されています。このように、認証そのものがゴールではなく、認証取得のプロセスを通じてオフィス環境の改善を進めることが期待されています。

建築基準との違いと位置づけ

一般的な建築基準や法律は、安全性や機能性を重視した最低限の要件を定めています。一方、WELL認証は「快適性」「感情面」「働きやすさ」といった、より人間中心の観点から評価する点が大きな違いです。制度の性質上、義務ではなく任意での取得となりますが、だからこそ、積極的に取り組む姿勢が企業の価値観を示すものとして見なされやすくなっています。

加えて、WELL認証は設計段階のみならず、オフィスの運用・維持段階にも影響を与える要素を持ちます。清掃頻度や温度調整の方法、光の管理や飲料水の質など、目に見えにくい部分にも評価が及ぶ点が特徴的です。このことから、制度は単なる建築設計の話にとどまらず、働く環境そのものの考え方を根本から問い直す機会を提供しているとも言えます。

なぜ今、WELL認証が注目されているのか

健康経営と従業員のウェルビーイングの関係

近年、従業員の健康や快適性を企業経営の中核に据える「健康経営」の考え方が広がりを見せています。働き手の心身の健康は、組織の生産性や持続可能性に直結するとされ、経営戦略の一部として重視されるようになりました。この流れの中で、WELL認証は「職場環境を通じて健康を支援する仕組み」として位置づけられています。

特に注目されているのが、身体的な負荷の軽減やストレス管理といった、従業員個人に直接関わる要素です。光や音、空気といった日常的に触れる環境が、働き手の集中力やメンタルに影響を及ぼすことは、多くの専門家により指摘されてきました。WELL認証は、こうした要素を体系的に整えるための枠組みとして機能し、健康的な組織づくりを後押ししています。

働き方改革や人材定着との関連性

柔軟な働き方やリモートワークが一般化したことで、企業はオフィスの存在意義を再定義する必要に迫られています。その中で、物理的なオフィスを「集まることに価値がある場」へと転換させる動きが加速しています。WELL認証は、この文脈において、ただの作業場ではなく「働きたくなる場所」としてのオフィスづくりに貢献しています。

加えて、優秀な人材の確保や離職率の低下といった観点からも注目されています。働く環境が整っている企業は、従業員満足度が高まり、定着率にもよい影響を与えると言われています。採用活動においても、オフィス環境は企業文化や価値観を示す重要な要素とされるため、WELL認証はその一助として活用されています。

企業価値を高める手段としての有効性

WELL認証の取得は、社内外に対して「人を大切にする企業である」というメッセージを発信する手段にもなります。環境や福祉への配慮が求められる社会において、こうした姿勢は企業価値の向上につながります。単なる制度の取得にとどまらず、継続的な取り組みとして位置づけることで、ステークホルダーとの信頼関係を強化する要因となり得ます。

また、社内での意識改革にもつながります。健康や快適性に焦点を当てた取り組みを通じて、従業員一人ひとりが働く環境への関心を高める機会となり、結果として職場全体の質の向上が期待されます。企業としての責任ある姿勢を示すだけでなく、内部からの改善意識を育てるという側面でも、WELL認証は有効な手段となっています。

WELL認証の評価基準とは?10のコンセプトを整理

身体的・心理的な健康要素を多角的に評価

WELL認証の大きな特徴は、人の健康と快適性を軸に10の分野で評価を行う点にあります。これらの分野は「コンセプト」と呼ばれ、空間を利用する人の行動や感覚に直接影響を与える要素として設計されています。対象となるのは、建築物そのものの性能だけでなく、そこで生活・活動する人にとっての「実際の体験」です。制度の軸が、ハード面とソフト面の両方にまたがっている点が、他の建築評価制度と異なる点といえます。

10のコンセプトは、それぞれ独立した観点から評価されながらも、相互に関連しています。例えば、「光」と「こころ」は別のカテゴリとして定義されていますが、照明環境が心理状態に与える影響は無視できないものです。このように、健康と快適性に多面的にアプローチしている点が、制度全体の特徴となっています。

環境整備の細部まで影響を与える指標群

WELL認証で設定されている評価指標は、設計段階での工夫だけでなく、建物の利用時にどのような状態を維持しているかも対象に含まれます。たとえば、「空気」の項目では、単に換気設備が整っているかだけでなく、日々の管理状況や清掃方針など、運用面も問われます。これにより、認証取得を一時的な目標とするのではなく、継続的な環境維持の意識づけが求められます。

また、「食物」や「運動」といった項目においては、オフィス内で提供される食事の内容や、身体を動かしやすい構造の有無などが評価対象になります。これらは設計担当者だけでなく、人事や総務部門とも連携が必要な領域であり、組織全体で取り組む意識が必要とされます。

WELL認証が空間づくりだけでなく、企業文化の形成にも関わる制度とされる理由は、このような多面的な評価基準にあります。

設計から運用までが評価の対象となる特徴

WELL認証のプロセスでは、建物の完成前に行う設計評価だけでなく、使用開始後の実環境を対象とした審査も実施されます。これは、計画段階で理想的な構造が設計されていたとしても、それが現場で適切に運用されているかどうかを確認するためです。この仕組みによって、見せかけの取り組みではなく、実効性のある環境整備が求められます。

評価は1回限りではなく、取得後も一定期間ごとの更新が必要となる仕組みです。そのため、WELL認証を取得した企業には、維持・改善の姿勢が常に求められることになります。この継続的な取り組みが、制度の信頼性を高める要因の一つとなっています。

運用段階での取り組みには、清掃頻度の見直しや従業員からのフィードバック収集といった、柔軟かつ実用的な施策が含まれます。こうした積み重ねにより、認証を起点としたオフィス改善が長期的に継続される構造が生まれます。

導入による実際のメリットとは

従業員の満足度と生産性の向上

WELL認証を取得することで得られる最大の効果のひとつが、従業員の満足度と生産性の向上です。働く環境が整備されることで、日常の業務におけるストレスの軽減や集中力の向上が期待されます。光の質や空気の清浄度、温度や音の快適さといった環境的要素は、従業員の心理的な安定に直結する重要な要素です。

また、オフィス内で健康的な行動を促す仕組みを取り入れることで、体調管理への意識が自然と高まり、結果として欠勤率やパフォーマンスのばらつきを抑える効果が見込まれます。こうした要素は、個人の働きやすさに直結するため、制度の導入が従業員の日常的な満足度に影響を与えることになります。

企業ブランディングへの貢献

WELL認証は、対外的な評価指標としても有効に機能します。健康や快適性に配慮したオフィス環境を整えている企業という印象は、顧客や取引先からの信頼につながりやすくなります。また、情報発信の中でWELL認証の取得を明示することで、企業の姿勢や価値観を視覚的に伝える手段ともなります。

とくに、環境や福祉への配慮が求められる時代において、働く人々を大切にする取り組みは企業の社会的責任として評価されやすくなっています。こうした文脈の中で、WELL認証は企業ブランディングの一部として位置づけられ、ブランド価値の強化に貢献する要素と見なされます。

他社との差別化と採用競争力の強化

人材の獲得競争が激化する中で、WELL認証を取得していることは、他社との差別化要因としても機能します。働く環境に配慮しているかどうかは、求職者が企業を評価する際の判断材料のひとつになっており、制度の有無が選ばれる理由になることもあります。

とくに、若年層を中心に働き方やライフスタイルに対する意識が変化している現代では、柔軟性や快適性のある職場づくりが求められています。その中で、WELL認証という外部評価を通じて職場環境の質を可視化できる点は、採用活動における強力なアピールポイントとなります。

さらに、認証取得後も継続的に環境を改善し続ける企業の姿勢は、既存の従業員にとっても安心感を与える要因となります。職場に対する信頼が高まることで、離職リスクの低下にもつながる可能性があります。このように、WELL認証は外部への発信と内部の意識改革、双方に対して効果を持つ取り組みとして注目されています。

WELL認証取得のプロセスと流れ

事前準備から認証取得までの大まかな流れ

WELL認証の取得には、設計・施工段階から実運用に至るまで、一連の計画的なプロセスが求められます。まずはプロジェクトの登録から始まり、対象施設の基本情報や運用計画を整理します。この段階では、どの評価項目に対応するかを明確にし、必要な整備項目を洗い出す作業が発生します。

その後、計画に基づいて空間づくりを進めながら、WELL認証の評価基準に準拠した環境整備を実施します。光や温熱環境、空気質、音環境などの基準に沿って、設計と設備の調整を行うことが求められます。同時に、運用体制や社内ルールも基準に合わせて整える必要があります。すなわち、空間の設計と同時に、使い方や維持管理の方法についても制度の要求に沿った対応が不可欠となります。

このように、認証取得のプロセスは単なる書類審査ではなく、実際の施設運営や社内の取り組みまで一体的に見直す機会となります。

評価申請時の実務的な注意点

評価申請を行う際には、整備した内容が基準を満たしていることを客観的に示す必要があります。これには、各評価項目に対する証拠資料の準備や、建築図面・運用ルールの文書化などが含まれます。計画だけでなく、実際の運用実績を裏付ける資料も求められるため、現場との連携が欠かせません。

また、評価項目によっては、現地審査による確認が行われます。専門機関の担当者が実際に施設を訪れ、空間の使用状況や環境品質を確認することで、制度の実効性が担保されます。この審査をクリアして初めて、正式な認証が発行されます。

注意すべき点として、基準を満たしていない項目がある場合は、部分的な改善や再評価のプロセスが必要になることもあります。したがって、取得を目指す段階では、早期に全体像を把握し、スケジュールに余裕を持たせた進行が重要です。

外部パートナー活用の選択肢と検討ポイント

WELL認証の取得においては、外部の専門家や支援事業者と連携することで、プロジェクト全体の進行を円滑にすることが可能です。特に、評価項目に関する専門知識や、過去の対応実績を持つパートナーは、制度への理解が深く、設計・運用の両面で的確なサポートを提供してくれます。

国内では、建築設計事務所やオフィスデザイン会社の中に、WELL認証支援を行っている企業も増えており、選定時には実績や対応範囲を確認することが大切です。どこまで自社で対応し、どこから外部に依頼するかを明確にすることで、プロジェクトの管理負担を抑えつつ、品質の高い認証取得につなげることが可能です。

また、社内の担当者だけでは判断が難しい評価項目においても、専門家の視点が加わることで、制度の意図に沿った柔軟な対応がしやすくなります。制度を正しく理解し、戦略的に取得を目指すためにも、適切なパートナーとの連携は重要な選択肢となります。

国内で進むWELL認証取得の事例

大手企業における活用と成果

WELL認証は、国内でも徐々に認知が広がっており、特に大手企業を中心に取得への取り組みが進んでいます。こうした企業では、単に制度を導入するのではなく、組織のブランディングや採用戦略と結び付けている点が特徴的です。オフィスを健康的かつ快適な空間へと再設計し、従業員の働きやすさを高めると同時に、外部に向けたイメージ強化にも活用しています。

さらに、企業が保有する研究開発拠点や本社機能の一部にWELL認証を導入することで、施設全体の質を引き上げる動きも見られます。このように、認証取得は限定的な施策ではなく、企業全体の経営戦略と連動する形で実施されています。

中堅企業での取り組みと応用可能性

一方で、中堅規模の企業においてもWELL認証の取得事例が増えてきました。比較的小規模なオフィスであっても、対象範囲を明確に設定し、必要な評価項目に絞って取り組むことで、現実的なコストと負担で認証を目指すことが可能です。この柔軟性が、中堅企業にとって導入のハードルを下げる要因となっています。

また、WELL認証を通じて企業文化や社内コミュニケーションの活性化を図るケースもあり、単なる制度取得にとどまらず、組織の内部改善につながる手段として注目されています。こうした取り組みは、限られたリソースの中でも効果的にオフィス環境を改善したい企業にとって、導入の後押しとなる要素です。

オフィス設計における工夫と特徴

WELL認証の取得を目指す過程では、設計面での創意工夫が求められます。国内の多くの企業では、自然光を取り入れるレイアウトの工夫や、集中とリラックスの両方を支えるゾーニングの最適化など、空間づくりに重点を置いています。こうした設計の工夫は、制度の基準に沿うだけでなく、従業員の働き方に柔軟に対応するオフィス環境の実現にもつながります。

さらに、健康や快適性に配慮した設備の導入や、日常的な行動を促す工夫なども取り入れられており、制度が企業全体のワークスタイル改善を促す契機となっています。これにより、WELL認証は単なる一過性の取り組みではなく、オフィスのあり方そのものを見直すきっかけとしても機能しています。

まとめ:オフィス環境改善の鍵となるWELL認証

導入検討の第一歩としてのポイント整理

WELL認証は、従業員の健康や快適性を中心に据えた空間づくりを促す制度として、企業の働き方改革や職場改善の手段として有効に機能します。空調や照明といった物理的な要素に加え、精神的な安心感やコミュニケーションの質までを評価軸に含めている点が特徴です。導入を検討する際には、施設の構造や規模にとらわれず、評価項目の中から現状に合わせた方針を見出すことが重要になります。

制度に向き合うことで、オフィス空間だけでなく組織全体の働き方に対する意識も変化していきます。設計から運用まで一貫した改善を図るためには、社内の関係部門と連携を図りながら、計画的に取り組むことが求められます。

短期的な成果ではなく、長期的視点での活用を

WELL認証は、一度の取得で完結するものではありません。空間の使用状況や人の行動が変化する中で、継続的に改善を積み重ねていく姿勢が問われます。そうしたプロセスを経て初めて、働きやすい環境の定着や、企業文化としての浸透が実現されていきます。

短期間で成果を求める取り組みではなく、中長期的に持続可能な働き方を築くための一手段として、制度を柔軟に活用していくことが期待されます。健康や快適性に配慮した空間づくりが、これからの企業経営において不可欠な要素となることは、もはや避けられない流れといえるでしょう。