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2025.12.05  2025.11.27コラム

コワーキングスペースを開設する前に知るべき5つの注意点|成功につながる計画とは

オフィスの柔軟性やコミュニケーションの質を高める選択肢として、コワーキングスペースの導入を検討する動きが広がっています。しかし、初期設計や運用方針を誤ると、期待した効果が得られない可能性もあります。この記事では、コワーキングスペースを開設する際に見落とされがちな5つの注意点を整理し、現実的な計画立案につなげる視点を提供します。

コワーキングスペースが注目される背景と役割の変化

働き方の多様化に対応する空間ニーズ

近年、多様な働き方を受け入れる職場環境の重要性が増しています。出社と在宅を組み合わせた勤務体制や、個人の裁量を尊重した柔軟な働き方が浸透する中で、従来の固定席型オフィスでは対応が難しくなってきました。こうした変化に対応するため、企業はオフィスの役割や構成そのものを見直す必要に迫られています。

コワーキングスペースは、こうしたニーズに応える手段として注目を集めています。業務効率の向上だけでなく、心理的な快適さや社内コミュニケーションの活性化にも効果が期待できます。たとえば、集中して作業できる個人席と、部署の垣根を越えて交流できる共用スペースを組み合わせることで、チーム全体の生産性を高める設計が可能になります。

従来の執務空間では、部署ごとの座席配置や仕切りによって日常的な会話が生まれにくい傾向がありました。一方、コワーキングスペースでは、動線や座席のレイアウトに工夫を施すことで、偶然のコミュニケーションを促すことができます。たとえば、共用設備を人の集まりやすい場所に配置することで、自然な会話のきっかけを設計できるのです。

コワーキングスペースに求められる新たな役割

もともとコワーキングスペースは、異なる職種や立場の人々が同じ場所で働く環境として広まってきました。しかし最近では、企業が自社オフィス内にこうした要素を取り入れ、社内の働き方に変化をもたらす事例も増えています。単なるスペース提供にとどまらず、組織内の交流や発想の広がりを支える仕組みとしての役割が期待されています。

オフィスにおける「定位置」の考え方も変わりつつあります。固定席での業務を前提とした設計から、業務内容に応じて最適な場所を選べるような柔軟な仕組みへと移行する動きが進んでいます。コワーキングスペースは、そうした変化に適した機能を備えているため、導入に向けた関心が高まっているのです。

また、社内に共用スペースを設けることで、部門を越えた情報共有や交流が生まれやすくなります。プロジェクトごとに編成されるチームや、部門横断型の取り組みにも対応しやすく、空間の活用方法として大きな利点があります。このように、柔軟で目的に応じた空間設計ができる点が、コワーキングスペースの導入を後押ししています。

オフィス環境のあり方を戦略的に捉える企業が増える中で、コワーキングスペースは単なる作業場ではなく、組織文化や働き方の改革を支える一つの手段と見なされています。空間に求められる役割が明確になるほど、その設計や運用にも具体性が求められるようになります。

初期設計で失敗しやすい3つの落とし穴

利用者像を具体化せずに設計を進めてしまう

コワーキングスペースの開設にあたり、最初に検討すべきは「誰が使うのか」という視点です。利用者の行動や目的を明確にしないまま設計を進めてしまうと、導入後に想定と現実のズレが生じやすくなります。

たとえば、集中作業を想定した席のすぐ隣に会話が盛んになるスペースを配置してしまうと、使いにくさが表面化しやすくなります。また、来客対応やミーティングを重視する部署が主な利用者であるにもかかわらず、個人作業向けの席ばかりを配置してしまうと、空間が活用されないまま残る可能性も高くなります。

このようなミスマッチを防ぐためには、導入前の段階で「利用の目的」「利用者の特徴」「利用頻度」などを言語化し、レイアウトや設備に反映させることが求められます。漠然とした理想像に基づく設計では、実用性に欠ける空間となってしまうおそれがあります。

空間デザインが機能性より「おしゃれ」重視

見た目の良さに重点を置きすぎた設計も、運用開始後に問題を引き起こす原因となります。デザイン性の高いインテリアや装飾は、初期段階では目を引く要素になりますが、実際の利用シーンでは機能性の方が優先される場面が多くなります。

たとえば、イスや机のデザインを重視するあまり、座り心地や作業時の姿勢が考慮されていない場合、長時間の使用に耐えられず利用が定着しません。さらに、照明が暗すぎる、電源の数が足りない、音の反響が気になるといった問題も、見た目を優先するあまり見落とされがちです。

「おしゃれな空間=使いやすい空間」とは限りません。業務で日常的に使用するスペースとして考えるのであれば、デザインと実用性のバランスが取れているかどうかを丁寧に見極める必要があります。外観の印象だけで判断せず、利用シーンを具体的に想像しながら設計を進めることが重要です。

柔軟性が欠けていて変化に対応できない設計

コワーキングスペースは、利用者や利用目的の変化に合わせて運用方法を見直していく前提で設計するべき空間です。しかし、初期設計の段階で柔軟性を持たせていないと、変更が難しくなり、結果的に使い勝手の悪い空間になってしまう可能性があります。

たとえば、パーテーションや什器が固定されていると、レイアウトの変更が制限されてしまいます。また、照明や空調の設定が特定の用途にしか対応していない場合、新しい利用ニーズに応えることができません。コワーキングスペースの特性を活かすには、一定の可変性を持たせることが欠かせません。

さらに、利用者が増えたり、チーム編成が変わったりすることで、空間の用途も変化します。その変化に合わせて機能を追加したり、レイアウトを調整したりできる構造にしておくことで、長期的に活用し続けられるスペースをつくることができます。

運用で直面する5つの実務的課題

利用ルールのあいまいさによる混乱

コワーキングスペースは、自由度の高い空間である一方で、利用方法に関するルールが不明確だとトラブルが発生しやすくなります。たとえば、席の確保方法や滞在時間の基準、会話の可否といった基本的な利用ルールが曖昧なままだと、利用者ごとに認識の差が生じます。

こうした状況を避けるには、明文化されたルールをあらかじめ整備しておく必要があります。入口や掲示板など、目につきやすい場所にルールを表示することや、利用前に周知の機会を設ける工夫も有効です。運用側が明確な方針を示すことで、利用者同士の認識が揃い、空間の秩序が保たれやすくなります。

セキュリティと情報保護の体制が不十分

共用スペースであるコワーキングエリアでは、情報の取り扱いに関する意識が欠かせません。社内外の人が混在する環境で機密性の高い業務を行うことは、情報漏洩のリスクを高める可能性があります。

たとえば、共有Wi-Fiの安全性や、デバイスの置き忘れによる情報流出など、対策を講じるべきポイントは多岐にわたります。空間設計の段階で、視線の遮蔽や物理的な区画を工夫するほか、セキュリティ意識を高める掲示物や案内資料も効果的です。

また、ネットワーク環境についても、一定以上のセキュリティ基準を満たす構成を採用することが求められます。利用者の安心感を高めるうえでも、こうした基盤の整備は避けて通れません。

稼働率の把握が困難で効果測定ができない

コワーキングスペースの導入後、どの程度活用されているのかを把握できなければ、効果的な運用改善につなげることができません。利用時間や利用者の属性、滞在傾向などを記録・可視化する仕組みがない場合、感覚的な評価に依存せざるを得なくなります。

稼働率を適切に把握することで、レイアウトの見直しやルールの改善、機能の追加といった判断がしやすくなります。たとえば、特定の時間帯に集中して混雑する傾向があるなら、時間帯別に席数を調整するなどの対応が可能になります。

適切な分析が行えないまま運用を続けると、活用の偏りや使われないスペースの増加など、非効率が積み重なりやすくなります。そのため、利用実態の把握を前提とした仕組みを準備することが重要です。

共用設備の運用と維持が想像以上に煩雑

コワーキングスペースには、プリンターや電源設備、プロジェクター、共有ディスプレイなど、さまざまな設備が設置されることが一般的です。これらを快適に利用できる状態に保つには、定期的な点検や補充、整備が欠かせません。

たとえば、消耗品の在庫が切れていたり、備品の故障が放置されていたりすると、利用者の満足度は大きく低下します。特に短時間で利用されることが多い環境では、機器のトラブルがダイレクトに不満につながりやすくなります。

このような状況を防ぐには、設備のメンテナンスに関する担当者やフローを明確にしておく必要があります。また、利用者からの不具合報告を受け付ける仕組みも合わせて用意しておくと、早期対応がしやすくなります。

想定以上に人の管理が必要になる

自由に使えるスペースであることは、運用の柔軟性につながる一方で、管理の負荷が増える要因にもなります。無人での運営を想定していたとしても、実際には問い合わせ対応やトラブル時のフォローなど、人の手が必要になる場面は少なくありません。

たとえば、初めて利用する人が操作に戸惑うケースや、複数人での席の使い方を巡ってトラブルが起きる場面では、対応できる体制が求められます。こうした事態に備えて、有人対応の時間帯を設けたり、受付業務をサポートする仕組みを整えたりする必要があります。

人手に頼る範囲を最小限に抑える工夫をしつつも、完全な無人運営を目指すのではなく、必要なサポートを柔軟に組み合わせた運用体制を構築することが現実的です。

コスト面で見落としやすいポイント

初期投資だけでなく継続コストも把握が必要

コワーキングスペースを開設する際、初期費用に目が向きやすい傾向があります。内装工事や家具の設置、設備の導入など、目に見えるコストは比較的把握しやすいためです。しかし、実際の運用においては、継続的に発生する費用の存在が大きな影響を与えます。

たとえば、空調や照明などの光熱費、共用部分の清掃や消耗品の補充、設備のメンテナンスなどは、継続して発生する支出となります。また、システムの更新やネットワーク環境の維持にも費用がかかる場合があります。こうした支出は、導入当初の見積もりには含まれていないことも多く、後から予算に響く可能性があります。

さらに、運用を進めていく中で必要となる改善費や追加工事も視野に入れておくべきです。たとえば、利用者の声を受けてレイアウトを変更したり、使い勝手を向上させるための機器を追加したりすることが想定されます。初期費用だけで完結するのではなく、継続的な投資が必要になる点を見越した計画が重要です。

稼働率が想定より伸びないリスク

コスト面で最も注意すべき点の一つが、スペースの稼働率に関する見積もりの甘さです。開設前には理想的な稼働状況を想定していても、実際には利用者の確保が難航することもあります。特に社内利用を前提とした場合、目的やメリットが伝わっていなければ、利用が定着しにくくなります。

稼働率が伸び悩んだ場合、空間は維持費だけを生み出す存在となり、コストパフォーマンスの低下につながります。その結果、導入目的そのものが疑問視されるようになり、最終的には運用停止を検討するケースに至ることもあります。

このようなリスクを回避するためには、導入前に利用ニーズの有無を丁寧に調査することが求められます。どのような業務やシーンで使用されるのか、誰が主体となって使うのかといった要素を明確にし、現実的な稼働モデルを描くことが重要です。理想を前提にした計画ではなく、実態に即した見積もりを重視することで、運用後のトラブルを未然に防ぎやすくなります。

また、利用促進に向けた社内周知や初期導入時のサポート体制も、稼働率に影響を与える要素の一つです。空間を整えるだけでは不十分であり、運用開始後のフォローを含めたコストをあらかじめ見込んでおくことで、収支バランスの精度を高めることができます。

社内外の「利用促進」に向けた設計戦略

偶発的な交流を促す空間動線の工夫

コワーキングスペースの真価は、ただ「席がある」ことではなく、「人が動き、つながる場」が生まれるかどうかにあります。特に社内利用を想定した場合、部署や職種の異なるメンバーが交わることで、新しい発想や気づきが生まれる設計が求められます。

そのためには、空間の使い方を計画的に設計することが不可欠です。たとえば、共用設備を空間の中央に配置する、あえて動線を交差させるなど、無理のない形で人がすれ違い、会話のきっかけが生まれるように工夫する必要があります。

また、壁や仕切りの使い方も重要です。完全に閉じた個室では交流が生まれにくくなりますが、視線を適度に遮ることで安心感を保ちながら会話を促す効果が期待できます。こうした設計により、自然なコミュニケーションが生まれやすい空間を構築できます。

利用者の声を反映する仕組みの導入

スペースを継続的に活用してもらうためには、使う人の意見を取り入れる姿勢が欠かせません。特に、運用開始からしばらく経ったタイミングで現場の声を収集することにより、潜在的な不満や改善のヒントを把握しやすくなります。

意見を集める方法としては、アンケートの実施や意見箱の設置、日常的な声かけなどが考えられます。形式にこだわる必要はなく、気軽に意見を届けられる手段を複数用意することで、利用者との接点を増やすことが可能です。

また、収集した声を実際の運用に反映させる姿勢も重要です。反映された内容を明示することで、利用者の満足度や関与度が高まり、リピーターの定着にもつながりやすくなります。改善のサイクルを仕組み化することで、コワーキングスペースの魅力は継続的に高められます。

社内周知とマニュアル整備の重要性

コワーキングスペースを設けても、利用方法が分からなければ活用は進みません。特に大規模な組織や拠点が分散している環境では、社内周知が行き届かず、空間の存在自体が知られていないケースも見受けられます。

このような状況を避けるためには、利用方法や予約手順、利用可能な時間帯などを明記したガイドを用意し、全社的に展開する取り組みが求められます。メール配信や社内掲示、イントラネットへの掲載などを通じて、複数の手段で情報を届けることが効果的です。

また、初めて利用する人でも迷わず使えるように、案内板やナビゲーションの配置にも配慮が必要です。誰でもスムーズに利用できる環境を整えることが、自然な利用促進につながります。利便性の高さと安心感が両立された空間は、徐々に社内に定着していきます。

自社の業種や目的に合った活用パターンの検討

プロジェクト型業務や部門横断チームに特化

コワーキングスペースの導入にあたり、汎用性の高い空間を目指すことも一つの方針ですが、実際には業種や業務内容に応じた“特化型”の活用を想定するほうが、有効な場合があります。特に、プロジェクトベースで動くチームや、部署をまたいだ協業が頻繁に行われる組織では、そうしたスタイルに最適化された空間の方が機能しやすくなります。

たとえば、短期集中で動くタスクチームや、新規事業を立ち上げるメンバーが集う拠点として位置づけることで、目的意識の高い活用が期待できます。一定期間だけ利用するチームの受け皿として使えば、固定的な席配置に依存せずに効率的な働き方を支援できます。

このように、用途を限定することで空間設計の方針も明確になり、必要な設備やゾーニングの最適化が進めやすくなります。利用者にとっても、目的が明確なスペースの方が心理的に使いやすくなり、結果的に稼働率の向上につながる可能性があります。

拠点分散型の働き方支援として

近年、従業員の勤務場所が複数拠点に分散する動きが広がっています。本社・支社間だけでなく、自宅・外出先などを含む多拠点での就業に対応する仕組みとして、コワーキングスペースを活用する企業も増えています。

自社の拠点以外に設けたコワーキングスペースを一時的な業務場所として利用することで、移動の負担を軽減し、柔軟なワークスタイルを実現できます。また、社員が業務の合間に立ち寄れる「中間拠点」として活用することで、在宅勤務中の孤立感を緩和する効果も期待できます。

このような活用には、アクセスの良さや利用予約のしやすさ、設備の信頼性などが重要になります。さらに、社内の勤務制度と連携させて、柔軟な利用をサポートするためのガイドラインを整備しておくことが望まれます。

外部パートナーとの共同拠点としての可能性

業種によっては、外部との連携やパートナーシップが日常的に発生するケースもあります。そうした企業にとって、外部関係者とのミーティングや共同作業がしやすいスペースの確保は重要な課題となります。コワーキングスペースは、こうしたニーズに応える柔軟な拠点としても活用可能です。

たとえば、取引先や委託先との打ち合わせやワークショップの場として設計することで、社内外の境界を越えた協業をスムーズに進めることができます。また、訪問者向けの対応スペースとして位置づければ、来客対応の負荷を軽減する効果も見込めます。

このような使い方を想定する際は、セキュリティ対策やエリア分離などの配慮も欠かせません。内部利用と外部利用を明確に区分できる構造にすることで、安心して共同作業を進められる環境が整えられます。

まとめ|開設前の視点が、運用の成否を分ける

設計前の“問い”がプロジェクトの質を左右する

コワーキングスペースの開設を成功させるためには、初期段階における検討の質が重要です。空間を「どのように設けるか」よりも前に、「なぜ設けるのか」「誰がどのように使うのか」といった本質的な問いに正面から向き合うことが求められます。

目的が曖昧なまま設計を進めると、導入後の活用が思うように進まず、スペースが持て余される結果になりかねません。逆に、利用者像や業務の流れを具体的に想像したうえで設計された空間は、現場に自然と溶け込み、組織の活動を下支えする存在として機能しやすくなります。

また、開設前に検討した内容が、運用開始後の改善や変更にも強く影響します。使われ方の変化に対応する柔軟性を確保するためにも、初期段階から一定の可変性を織り込んでおくことが有効です。事前の設計にこそ、長期的な活用の可能性が詰まっていると言えます。

継続的に使われる仕組みづくりを目指す

コワーキングスペースは、完成した時点で終わりではなく、そこからの運用と改善が本質的な価値を決定づけます。特に社内での利用を前提とする場合、導入後の社内周知やフィードバックの仕組みを継続的に維持することが重要です。

一度の設計で完全な空間をつくることは現実的ではありません。むしろ、運用しながら調整していくという考え方に立つことで、より実態に合ったスペースとして成熟していきます。そのためには、計画段階から改善を前提とした運用体制を設けておくことが有効です。

柔軟性と継続性を両立することで、コワーキングスペースは単なる物理的な場所を超え、組織文化や業務スタイルに深く根づく資産として機能していきます。開設前の視点が、その価値の土台をつくる鍵となります。