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2025.12.06  2025.11.27コラム

コワーキングスペースのレイアウトで「無駄な空間」を減らす方法|賢く設計するためのヒント

空間を効率的に使えていない、使われていない場所が多い──そんな状態のコワーキングスペースでは、満足度も生産性も伸び悩みます。限られた面積の中で、無駄な空間を減らし、働きやすさを最大化するには、レイアウト設計に戦略が必要です。本記事では、現場で起こりがちなレイアウトの失敗とその対策を整理しながら、空間価値を高めるための実践的なヒントを紹介します。

なぜ“無駄な空間”が生まれるのか

感覚で設計されたレイアウトの落とし穴

コワーキングスペースを設計する際、「おしゃれな雰囲気」や「居心地の良さ」といった感覚的な要素が重視されすぎるケースがあります。もちろん空間の印象は重要ですが、デザインの印象だけで配置を決めると、実際には使われないエリアが発生することがあります。たとえば、広く取ったラウンジスペースが実際には会話に不向きで誰も利用していない、というような場面は少なくありません。

このような失敗は、「誰が」「どのように」その場所を使うのかという視点が設計段階で十分に検討されていないことに起因しています。直感や雰囲気だけを頼りにすると、視認性は高くても利便性の低い空間が生まれてしまいます。その結果、面積があるにもかかわらず稼働率が低い“死んだスペース”ができ上がってしまうのです。

利用者目線を欠いたゾーニングの問題

ゾーニングは、コワーキングスペースにおいて最も基本的な設計要素のひとつです。集中作業用のエリア、会話を伴う打ち合わせ用スペース、休憩や飲食ができるラウンジなど、用途ごとにエリアを分けることで、利用者が目的に応じた場所を選びやすくなります。

しかし、ゾーニングが曖昧だったり、利用者の導線を考慮していなかったりすると、本来活用されるべきスペースが敬遠される状況に陥ります。たとえば、静かな作業をしたい人がラウンジ横のブースを避ける、会話スペースが奥にあり利用者が見落とす、などのケースです。

設計者の頭の中では明確な意図があっても、それが利用者に伝わらなければ意味を成しません。意図が明確でないエリアは、使われない空間になりやすく、結果的に「無駄」と見なされます。

スペースの目的と使用状況の不一致

一見、計画的に見えるレイアウトでも、実際の使用状況と乖離している場合には、そのスペースは有効に機能していません。たとえば「個室が埋まらない」「会議室の予約が少ない」などの問題は、空間に対する需要と設計された供給が一致していないことが背景にあります。

その原因の多くは、「想定」で作られたスペース設計にあります。特定の業種・働き方・組織規模などに最適化していない汎用的なレイアウトは、どの層にとっても中途半端な存在になりやすいのです。また、導入した家具や設備が利用目的と合致していない場合にも、スペースが使われずに放置される結果となります。

このように、空間の目的と実際の使われ方にずれが生じていると、そのズレこそが“無駄な空間”を生む根本原因になります。レイアウトが固定されすぎている場合は、柔軟な使い方ができず、状況に応じた調整も難しくなります。

レイアウト設計前に明確にすべき3つのこと

誰のための空間かを定義する

コワーキングスペースを設計する際、まず必要になるのが「誰に使ってほしいのか」を明確にすることです。これは利用者像の言語化に近く、業種、働き方、利用時間帯、グループか個人かといった条件を丁寧に整理することから始まります。想定するターゲットが曖昧なままだと、必要な設備や空間構成にズレが生じ、結果として「誰にも最適化されていない空間」ができてしまいます。

利用者の像を具体的に描くことで、必要な座席の種類、求められる音環境、望まれる雰囲気などの前提が自然と明らかになります。それにより、見た目の印象ではなく、実際に“使われる設計”に近づけることが可能です。レイアウト設計の起点は、ターゲットの行動と感覚を想像するところから始まります。

業務内容と求める過ごし方を整理する

利用者がどのような業務を行うのかを把握することも、設計の精度を高めるためには欠かせません。たとえば、長時間の集中作業を行う人が多いなら遮音性の高いエリアが必要になりますし、頻繁に打ち合わせがある層には、会話のしやすいスペースが欠かせません。

さらに、仕事だけでなく、休憩や軽い雑談、飲食など、過ごし方の幅も意識する必要があります。空間の使われ方は単一ではなく、複数の目的が重なります。そのため、「働く」以外の要素も含めてどのような場面が想定されるのかを整理することが、無駄のないゾーニング設計につながります。

また、利用時間帯の偏りや混雑しやすい時間帯も考慮すべき要素です。これらの要素を先に洗い出しておくことで、ピーク時にも柔軟に対応できる空間設計が可能になります。

収益性と利用効率のバランスを見極める

スペースの設計には、収益性と利用効率のバランスを取る視点も欠かせません。単に見た目や快適性を追求するだけでは、運営コストに対するリターンが見込めない可能性もあります。一方で、効率性を重視しすぎると、居心地の悪さからリピーターを失う結果になりかねません。

そこで重要になるのが、「面積を最大限活かす配置」と「多用途に転用できる空間」の組み合わせです。特定の用途に特化した空間だけでなく、状況に応じて目的が変えられる柔軟なエリアを設けることで、空間の稼働率を底上げする工夫が求められます。

また、視覚的な余白や開放感を適度に保つことも、利用者の満足度を支える要素になります。数字では測れない部分に配慮しながら、全体としてのバランスを調整していくことが、長期的なスペース運営において重要な設計判断となります。

「無駄」を減らすゾーニング設計の基本

用途を明確にしたエリア分けの考え方

ゾーニングとは、スペースを用途に応じて分ける設計のことを指します。コワーキングスペースでは、「作業に集中するためのエリア」「会話や打ち合わせをする場所」「休憩や軽食ができるラウンジ」など、多様な利用シーンに応じたゾーンの設計が必要です。

しかし、これらの分け方が曖昧なままだと、利用者がどこで何をすればよいかがわかりづらくなり、結果的に空間が使われない原因になります。目的を明確にしたエリア分けを行うことで、利用者の行動がスムーズになり、回遊性の高い空間へと変化します。

また、エリアごとの特性を整理することは、レイアウト全体の調和にもつながります。用途が明確であれば、設備や家具の選定も的確になり、使われない空間の発生を防ぐ設計につながります。

動線設計で空間の死角をなくす

ゾーニング設計と同様に重要なのが、利用者の動きやすさを左右する「動線」の考慮です。動線とは、空間内での人の流れを指し、これが適切に設計されていないと、奥まった場所や角のスペースが見落とされ、利用されないまま放置されがちです。

例えば、エントランスから最も目立つ位置に誰でも使える作業席が配置されていれば、利用者は自然と足を運びます。一方で、通りにくい場所に位置した会議室や個室は、空きがあっても利用されにくくなります。

動線がスムーズであることは、使いやすさだけでなく空間の稼働率にも直結します。全体を俯瞰しながら、利用者がどこから来て、どのように移動するのかを想定し、その導線に沿ってゾーンを配置することが、無駄な空間を減らすための基本的なアプローチです。

可変性を備えたエリア設計の重要性

すべての利用者が同じ使い方をするわけではありません。そのため、ゾーンごとの役割を固定しすぎず、必要に応じて用途を切り替えられるような可変性のある設計が求められます。固定されたレイアウトは一見安定感がありますが、利用者層や働き方の変化に対応しきれなくなるリスクも含んでいます。

たとえば、普段はフリーアドレス席として活用されているスペースを、混雑時には簡易的な会議エリアとして使えるようにするなど、設計段階から柔軟な使い方を想定することが重要です。その際、可動式の家具や間仕切りを活用すれば、レイアウト変更の負担を軽減しつつ、利用ニーズに応じた空間に変化させやすくなります。

可変性を取り入れることで、使われない空間を減らすだけでなく、時間帯や曜日によって発生する利用パターンの差にも対応できます。このように、ゾーニングに柔軟性をもたせることで、コワーキングスペース全体の利用価値を高めることが可能です。

利用されないスペースを“活きた空間”に変える発想

個人席や会議室の空き時間を可視化する

コワーキングスペースでは、特定のエリアが時間帯によって使われていない状態になることがあります。個人席や会議室などは、稼働率が低いままになっていると、空間の無駄につながりかねません。この問題に対処するには、「いま・どこが・どのように空いているか」を明確にする可視化の工夫が求められます。

たとえば、受付エリアや入口付近で空席の状況がわかるようにするだけでも、利用者の動きは大きく変わります。情報が見えることで、空いている場所に自然と流れが生まれ、稼働率の偏りを抑える効果が期待できます。また、スタッフによる案内や掲示の工夫によっても、埋もれていたスペースに利用が発生する可能性が高まります。

可視化の仕組みを取り入れることは、設備を追加するよりも手軽で、空間全体のバランスを調整する手段として有効です。

一時利用・兼用エリアとしての活用法

スペースを1つの用途に限定してしまうと、利用頻度にばらつきがある場合に空間が遊んでしまう可能性があります。これを防ぐには、複数の用途に対応できる兼用エリアとしての設計が効果的です。

たとえば、普段は集中作業用のスペースとして設けているエリアでも、時間帯や曜日によってはイベント開催や軽い打ち合わせ用のスペースとして使えるようにすることで、空間の活用度が高まります。椅子やテーブルの配置を少し変えるだけで、まったく異なる使い方ができるように工夫することがポイントです。

このような発想は、すでに存在している設備を有効に活かす視点にもつながります。使い方を限定しないことで、空間の可能性が広がり、常に人が動いている「活きた空間」に近づけることができます。

「余白」をあえて活かすという選択肢

レイアウト設計では、すべての空間を何かの機能で埋めたくなるものですが、あえて何も置かない“余白”を活かすという発想もあります。余白には、人の動きを誘導したり、心理的な安心感を生んだりする効果があります。また、偶発的なコミュニケーションが生まれる場としての役割も果たします。

たとえば、広い通路の途中に少し腰をかけられるベンチがあるだけで、その空間に滞留が生まれます。こうした場所がきっかけで、短い会話が交わされたり、新たなつながりが生まれたりする可能性があります。

余白は、機能性を追求するあまりに軽視されがちですが、実際には人の流れを柔軟にし、空間にリズムを生む大切な要素です。設計の初期段階から、「何も置かない場所をどう活かすか」という視点を持つことが、活用されないスペースを価値ある場に変える一手になります。

見落とされがちな設備配置の最適化

電源とWi‑Fiの配置が動線を左右する

設備の配置は、コワーキングスペースの快適性や利便性に直結します。その中でも特に影響が大きいのが電源とWi‑Fi環境です。利用者は、座席のデザインやスペースの広さだけでなく、機器を安心して使えるかどうかを無意識のうちに判断材料としています。

たとえば、電源が届きにくい席や、通信が不安定なエリアでは、いくら外観が整っていても長く滞在されにくくなります。これにより、一部の席が継続的に空いてしまう事態が起こりやすくなります。適切な設備配置は、スペースの使われ方そのものを変えるため、レイアウト設計の段階で優先的に検討するべき項目です。

特定の場所に設備を集中させるのではなく、全体にバランスよく配置することで、どの席にも均等に利用価値を持たせることができます。

家具配置が招く滞留と離脱

家具の配置は、空間の印象と利用者の動き方に密接に関係しています。配置が整っていない場合、人が立ち止まりにくくなったり、逆に混雑を生んで移動しづらくなったりします。結果として、動線が断たれ、特定のエリアへのアクセスが妨げられることで、使われないスペースが生まれやすくなります。

たとえば、大きなテーブルを通路の近くに置いたことで、人の流れが不自然に曲がってしまう、というケースも考えられます。配置の工夫がなければ、目立たない場所にあるスペースは見過ごされがちです。

家具は視覚的な印象だけでなく、流れを整える装置としても機能します。座席の向きや背もたれの高さ、仕切りの位置などを調整することで、人の動きを自然に誘導することが可能になります。

視線と音の抜けに配慮した区切り方

集中できる空間を作るうえで重要なのは、視線や音への配慮です。周囲の視線が気になると、利用者は無意識のうちに落ち着かなくなり、その場所を避けるようになります。同様に、話し声や雑音が響く場所は、短時間の滞在に留まりやすく、長時間の利用には不向きな印象を与えます。

このような問題に対しては、仕切りやパーティションの設置が有効です。ただし、完全に遮断するのではなく、抜け感を保ちながら圧迫感を軽減する設計が求められます。素材や高さを工夫することで、視線を適度に遮りながら、開放感も維持できます。

また、音の反響を抑えるために壁面や床材の選定にも配慮が必要です。音の抜けを最小限に抑えることで、隣接するエリアとの干渉を減らし、快適な空間を確保できます。これらの工夫は、細部であるがゆえに後回しにされがちですが、実際には利用満足度に大きな影響を与える要素です。

定期的なレイアウト改善を仕組みにする

フィードバックの集め方と反映の方法

コワーキングスペースのレイアウトは、一度完成すれば終わりではありません。利用者の行動やニーズは日々変化しており、それに合わせて柔軟に調整する必要があります。その第一歩として重要なのが、利用者からのフィードバックを収集する仕組みを整えることです。

例えば、定期的に利用者アンケートを実施したり、スタッフが現場で拾った声を記録しておくことで、改善のヒントが蓄積されます。こうした声をそのまま保管しておくのではなく、運営チーム内で定期的に共有し、設計意図と実際の使われ方のギャップを把握することで、課題を可視化できます。

小さな改善であっても、利用者の不便を解消する視点で反映していくことが、長期的なスペースの質を高めるポイントです。

利用データを活かした見直しのタイミング

直感や意見だけでなく、客観的な利用データも重要な判断材料になります。座席の稼働状況や滞在時間、エリアごとの利用傾向などを把握することで、どのスペースが有効に使われていて、どこに改善の余地があるのかを見極めることが可能です。

これらの情報は、予約システムや入退室管理など、既存の仕組みから取得できることが多いため、無理なく集計と分析が行えます。ただし、集めるだけでなく、定期的なタイミングで見直す体制を設けることが肝要です。

たとえば、四半期ごとやシーズンの変わり目などに、実際のデータとフィードバックを照らし合わせてレイアウトを見直すことで、変化に対応した改善を継続的に進められます。

外部視点を取り入れる意義

内部の視点だけでは気づきにくい課題も存在します。そこで有効なのが、外部の専門家や第三者の視点を取り入れることです。レイアウトや動線設計に詳しい設計士、またはコワーキングスペースの運営に精通したアドバイザーなどが行う客観的なチェックは、自分たちでは見落としがちな課題の発見につながります。

外部の視点を取り入れる際には、現状の図面や使用実態を事前に共有し、利用者の声も含めた全体像を提示しておくことが効果的です。それにより、スペースの目的や制約を理解したうえで、実効性のある提案を受け取ることができます。

このように、内部と外部の両輪で改善を重ねる体制を築くことで、レイアウトは常に進化し続けることができます。改善の習慣を仕組みとして定着させることで、空間の価値を長期的に維持することが可能になります。

まとめ|空間の価値は“使われ方”で決まる

設計で避けるべき3つのポイント

コワーキングスペースの設計においては、「なんとなく決めたレイアウト」「雰囲気優先のゾーニング」「設備の配置任せきり」という3つの設計ミスが空間の無駄を生む主な原因となります。利用者の行動が読み取れていないまま進められた設計は、見た目が整っていても実際には使われない場所を増やす結果を招きます。

空間づくりの本質は、利用者の視点に立ち、どのような行動を求めているかを読み解くことにあります。設計の段階でこの視点を持てていないと、稼働率が低く収益にもつながらない空間が生まれてしまいます。

「活用される空間」にするための視点

空間を有効に使うには、まず「なぜそのエリアが必要なのか」を問い直すことが大切です。利用シーンの想定が曖昧なままでは、スペースに役割が生まれません。誰にとって、どのような場面で使われるのかを明確にすることが、空間を活きた状態に保つ鍵となります。

そして、設計が完了したあとも、運用中に得られるフィードバックやデータをもとに柔軟な改善を続ける姿勢が求められます。一度設計したままの状態に固執せず、日々の変化に応じて使われ方を最適化する意識を持つことが、空間の質を左右します。

レイアウトは運用とともに進化させる

レイアウトの良し悪しは、設計図上では判断できません。実際に使われてはじめて、その価値が問われます。だからこそ、空間設計は“完成”ではなく“スタート”と捉えることが重要です。

理想的なレイアウトとは、利用者の行動が自然に促され、無理なく動ける構成を持ち、しかもそれが時間の経過や利用状況の変化に柔軟に対応できる状態にあります。計画と運用が連動してこそ、空間の価値は本当の意味で発揮されます。