2025.07.30 2025.07.24コラム
オフィスに最適な棚の選び方|収納力とデザイン性を両立する方法

目次
効率的な業務環境を実現するうえで、収納スペースの設計は軽視できません。中でもオフィスの棚は、単なる物の置き場ではなく、空間の印象や働きやすさを左右する重要な存在です。
この記事では、収納力とデザイン性の両立を軸に、導入時に確認すべき基準や、よくある失敗例、適切な設置方法について詳しく解説します。日々の業務を支える棚選びを、より効果的かつ戦略的な判断に変えるための視点をお届けします。
なぜ今「棚」がオフィス設計で重要なのか

ワークスタイルの変化に伴う収納の見直し
近年、働き方の多様化が進むなかで、オフィスの設計も変化しています。とくに、フリーアドレス制の導入やテレワークとの併用が一般化するにつれて、固定席に依存しない柔軟なレイアウトが求められるようになりました。そのような状況において、収納棚の役割が見直されています。
これまで個人のデスクに分散されていた書類や備品は、共用の収納へと集約されつつあります。それに対応するためには、設置場所や利用目的に合わせた棚の選定が必要です。
また、個人所有物の最小化が進むことで、棚の数やサイズを最適化する企業も増えています。収納の見直しは、整理整頓の効率を高めるだけでなく、オフィス全体の動線設計や業務の進めやすさにも影響を与えます。
収納棚は「しまう場所」以上の意味を持ち、業務の流れや職場環境の質そのものを左右する要素となりつつあります。そのため、棚の選び方は戦略的に考える必要があります。
機能性と印象づくりを両立させる存在
収納棚は実用面だけでなく、空間の印象にも大きな影響を与えます。たとえば、素材や色の統一感がない棚が並ぶと、視覚的に雑然とした印象を与えてしまいます。
一方で、素材や色をそろえることで統一感のある空間を演出でき、整った印象につながります。こうした視覚的な印象は、業務への集中度にも影響を及ぼします。
また、棚は収納だけでなく、空間の仕切りとしても活用されます。オープンスペースの中で目線を程よく遮ることで、集中しやすいエリアをつくることができます。こうした設計は、開放感とプライバシーの両立を図るうえで効果的です。
現在のオフィスでは、見た目と使いやすさの両方を備えた「見せる収納」が求められています。棚を選ぶ際は、単にスペックを比較するだけでなく、オフィス全体のデザイン方針や働き方のスタイルと合っているかを見極める視点が重要です。棚は、オフィスをより快適な空間へと導くための重要な構成要素となっています。
オフィスに設置する棚の主な種類と特徴
オープンシェルフ・キャビネット・ワゴンの違い
オフィスで活用される棚には、目的や設置環境に応じてさまざまな種類があります。その中でも代表的なものとして挙げられるのが、オープンシェルフ、キャビネット、ワゴン型収納です。
オープンシェルフは、背板や扉がない構造の棚で、収納物が視認しやすく、出し入れのしやすさが特徴です。書類や文房具、共有ツールなどをすぐに取り出せる利便性があり、共用スペースや執務エリアに適しています。
一方で、収納物が常に見えるため、整頓状態がオフィス全体の印象に影響を及ぼします。使用者の整理整頓への意識が必要とされる点も考慮すべきポイントです。
キャビネットタイプは、扉付きの収納棚で、外から収納物が見えないため、見た目に落ち着きや統一感をもたらします。中には鍵付きのものもあり、機密性の高い資料や個人情報を保管するのに適しています。デザインバリエーションも多く、壁面や通路脇など、目につく場所に配置しやすいのも利点です。
ワゴン型収納は、キャスター付きの可動式タイプで、用途に応じて自由に配置を変えられる機動性が魅力です。
個人が使用するアイテムをまとめて収納し、必要なときに移動できるため、フリーアドレス制やプロジェクト型の働き方と相性が良いとされています。オフィス全体の流動性を高める役割を担うことができます。
ローパーテーション型や壁面収納の利便性
空間を有効活用しながら収納力を確保したい場合には、ローパーテーション型や壁面収納の導入が効果的です。
ローパーテーション型は、腰高程度の高さで仕切りとしても使える棚です。視界を完全に遮らないため開放感を維持しながら、空間をやわらかく区切る役割を果たします。収納物が目線に入ることで自然と整理整頓を意識できるという利点もあります。執務スペースの間仕切りとして設置することで、動線やゾーニングに一役買う存在となります。
壁面収納は、限られた床面積を有効活用できる選択肢です。書類や備品を壁沿いにまとめることで、中央スペースを広く保ち、通行の妨げにならないよう設計することができます。
また、壁の高さを活かすことで収納力を拡張できるため、コンパクトなオフィスでも対応可能です。棚自体が目を引く存在となるため、オフィスの内装やコンセプトに合わせたデザイン性も重要な要素となります。
棚の種類ごとに、それぞれの特徴と適した用途があります。オフィスの機能や働き方に応じて、どのタイプをどこに配置するかを慎重に検討することで、収納の役割は最大限に発揮されます。適切な組み合わせと配置が、快適で機能的な空間づくりの基盤を支えることにつながります。
収納力とデザイン性を両立させる選び方

素材やカラーの統一感で空間に調和を持たせる
オフィスにおける収納棚は、単なる収納のための道具ではありません。オフィスの印象を左右する、インテリアの一部としても重要な役割を担います。棚を選ぶ際は、収納力だけでなく、素材やカラーにも注目しましょう。
たとえば、木製の棚を採用することで温かみのある雰囲気を演出することができます。ナチュラルなトーンは、来客スペースやコミュニケーションエリアなど、人が集まりやすい場所に適しています。
一方で、スチールやメラミン素材の棚は、スタイリッシュで現代的な印象を与え、集中しやすい執務スペースとの相性が良いとされています。
色の使い方にも工夫が求められます。複数のカラーが混在していると視覚的に落ち着きがなくなり、空間の印象が散漫になります。棚の色味を周囲の壁や床、デスクなどと合わせることで統一感が生まれ、整った印象を持たせることができます。デザインと収納機能を両立させるには、周囲の空間との「調和」を基準に選定を進めることが重要です。
また、同一シリーズで揃えることで、全体のバランスが保たれ、レイアウトの変更にも柔軟に対応できます。配置替えのたびに棚同士が不自然に浮いてしまうような状況を避けるためにも、素材とカラーの統一は意識するべきポイントとなります。
使用頻度と収納物のサイズに合わせた設計がカギ
棚の選定で見落とされがちなのが、収納する物の「使用頻度」や「サイズ」を前提にした設計です。見た目に優れていても、日々の業務に支障をきたすようでは本末転倒です。
頻繁に出し入れするアイテムであれば、腰の高さにオープン収納を設けると取り扱いがしやすくなります。逆に、保管が主な目的である場合には、上段や扉付きの収納を活用することで見た目も整います。
棚の奥行きや高さも用途に応じて選ぶべきです。たとえば、大型の書類やツールが多い部署では、深さのある棚が適していますが、スペースが限られている場合は薄型で縦長のデザインが有効です。適切なサイズ感で設計された棚は、無駄な動作を減らし、業務の効率を高めます。
収納する物の量だけを基準に棚を選んでしまうと、導線を圧迫したり、レイアウトに支障をきたしたりするケースもあります。そのため、棚の大きさや構造は、実際の利用シーンをイメージしながら慎重に検討する必要があります。
棚の機能と美観を両立させるためには、空間の調和と使用実態を具体的に想定することが不可欠です。見た目と実用性のどちらかに偏ることなく、働く人の動きや感覚にフィットする形で棚を選ぶことが、最適な収納環境を生み出すための前提となります。
棚の配置と導線設計がオフィスの生産性を左右する
通路の確保と視線の抜け感を意識した配置
オフィスに棚を配置する際には、収納力だけに目を向けるのではなく、全体の動線や視界の設計にも配慮する必要があります。とくに、動線を妨げないように通路を確保することは、業務効率の維持に直結します。たとえば、頻繁に人が行き交う通路のそばに大きな棚を設置してしまうと、移動の妨げとなり、ストレスや集中力の低下を招くことがあります。
また、棚の高さによって視線が遮られると、空間の圧迫感が生まれやすくなります。これを避けるためには、エリアによって棚の高さや奥行きを調整し、視線が抜けるような設計を意識することが大切です。ローパーティション型の棚や背の低いオープンシェルフを使うことで、開放感を保ちつつ収納機能も確保することが可能です。
空間に余白を残すことも忘れてはなりません。棚をぎっしりと並べるのではなく、余白のある配置にすることで、自然と空間全体にゆとりが生まれ、働く人に心理的な安心感を与える効果が期待できます。
共有エリアとパーソナルスペースのバランス設計
オフィスにおける棚の役割は、収納だけではありません。空間を区切る仕切りとしての役割も担っています。そのため、共有エリアとパーソナルスペースをどのように分けるかという視点からも棚の配置を考える必要があります。
たとえば、共用の書類棚を執務エリアの中央に設置すれば、自然と人が集まりやすくなり、コミュニケーションのきっかけを生み出すことができます。一方で、静かに集中したい作業エリアでは、棚を仕切りとして使うことで視界を遮り、個の空間を確保することが可能になります。
パーソナルスペースと共有スペースの境界を曖昧にせず、明確に分けることで、オフィス全体に秩序が生まれます。そのためには、棚の配置だけでなく、高さ・素材・向きにも注意を払うことが求められます。視覚的に“壁”をつくらず、あくまで自然な区切りとして棚を活用することが理想的です。
また、使用頻度の高い棚ほど、共用エリアに近い場所に配置するなど、アクセスのしやすさも考慮に入れる必要があります。どれだけ収納力に優れた棚であっても、使いづらい場所に設置されていては意味がありません。実際の業務フローや社員の動きをイメージしながら配置を検討することで、業務効率と快適性の両立が実現します。
棚の位置は、単なるレイアウトの一部ではなく、オフィス全体の機能性と雰囲気に直結する重要な要素です。動線と視線の両面から最適化を図ることが、生産性を高める空間づくりにつながります。
ありがちな棚選びの失敗とその回避法
収納量だけで選ぶと逆効果になる理由
棚を選ぶ際、つい注目してしまうのが「どれだけ収納できるか」という点です。確かに収納力は重要な要素ですが、それだけを基準にしてしまうと、かえって使いづらい空間になってしまうことがあります。
収納量を優先しすぎると、棚のサイズが必要以上に大きくなり、空間を圧迫してしまいます。通路を狭くしたり、視界を遮ったりすることで、オフィス全体に窮屈な印象を与えることがあります。こうした配置は、結果として業務の効率を下げてしまうことにもつながります。
また、大容量の棚を導入しても、中身が整理されていなければ意味がありません。棚が大きければ収納物を詰め込みやすくなり、逆に散らかる原因になることもあります。あらかじめ収納する物の種類や頻度を洗い出し、それに見合った容量と構造を選ぶことが、快適な運用につながります。
棚選びでは、「多ければ便利」と考えるのではなく、必要な分だけを効率よく使える設計を目指すことが重要です。
デザイン先行で使い勝手を損なうリスク
デザイン性を重視するあまり、実用性を犠牲にしてしまうケースも少なくありません。見た目の美しさは確かに大切ですが、実際の使用場面にそぐわない棚を導入すると、日常業務に支障をきたす可能性があります。
たとえば、扉の開閉がしにくい構造や、奥行きが浅すぎて収納物が入りきらない設計などは、実際に使ってみて初めて不便さに気づくことがあります。また、素材がデリケートすぎると、頻繁な出し入れや移動に耐えられず、傷つきやすいという問題もあります。
さらに、デザイン優先で空間全体との調和を無視してしまうと、オフィス内で棚だけが浮いた印象を与えることになります。色味や質感、形状などを周囲の家具や内装と揃えることで、初めて空間としての統一感が生まれます。
棚のデザインは空間の印象を左右する重要な要素である一方、業務の快適さを確保するためには、実用性とのバランスを見極める必要があります。見た目だけで判断せず、使いやすさとメンテナンス性をしっかりと確認してから導入することが、失敗を避けるための基本的な考え方です。
事例から学ぶ、効果的な棚導入の工夫
フリーアドレスオフィスでの活用アイデア
フリーアドレス制を採用しているオフィスでは、個人の持ち物を固定席に置くことができないため、共有スペースに設置する棚の活用が不可欠です。このような環境では、誰もが使いやすく、使った後に元に戻しやすい構造が求められます。
たとえば、オープンシェルフを複数並べることで、使用頻度の高い備品や共用の資料をすぐに取り出せる仕組みを作ることができます。棚にラベリングを施し、カテゴリーごとに分類するだけでも、利用者のストレスを軽減できます。
さらに、使用者が直感的に使い方を理解できるようにすることが、整った状態を維持するためのカギとなります。
また、フリーアドレスに適した棚は、移動が容易なものや、使わないときに折りたためる機能があるとより柔軟に運用できます。必要に応じて配置を変えられる棚は、プロジェクトや人数の変動にも対応しやすく、環境に応じたカスタマイズが可能です。スペースの最適活用という観点からも、固定されたレイアウトに縛られない棚の存在は、大きなメリットになります。
間仕切り・視覚的アクセントとしての応用法
収納棚は、機能面だけでなく、空間をデザインするアイテムとしても活躍します。その一つが、棚を間仕切りとして活用する方法です。パーティションとは異なり、収納機能を持ちながら空間を緩やかに区切ることができるため、視覚的にも実用的にも優れた手段となります。
たとえば、デスクエリアと会議スペースの間に高さのある棚を設置することで、視線を遮りながら収納場所を確保できます。これにより、オフィス全体の開放感を保ちつつ、必要な機能を両立させることが可能です。
また、両面からアクセスできる棚を選べば、裏表のない仕切りとしての活用ができ、利便性がさらに向上します。
デザイン性の高い棚をアクセントとして取り入れることで、オフィスの印象を高める演出も可能です。たとえば、素材にこだわった棚をエントランスに設置すれば、来訪者に対するブランディング効果も期待できます。加えて、棚に植物や小物を配置することで、無機質な印象をやわらげ、心地よい空間を作り出すことができます。
収納棚を空間の一部として捉える視点を持つことで、オフィスの可能性はさらに広がります。単なる「物をしまう場所」としてではなく、動線の誘導や印象の形成に関わる要素として設計に組み込むことで、より多機能かつ魅力的なオフィス環境を構築することができます。
棚はオフィス環境の質を底上げする要素
選び方ひとつで業務効率と印象は変わる
収納棚は、業務を支える基盤としての役割だけでなく、空間そのものの印象や快適性を左右する重要な要素です。どのような棚をどこに配置するかという選択が、働きやすさやチームの連携、さらには企業の印象づくりにまで影響を及ぼします。
デザイン性も収納力も妥協しない判断を
収納だけに偏るのではなく、デザイン性や動線との相性にも目を向けた選定が求められます。業務に必要な機能性と空間の一体感を両立させることで、オフィスの生産性と魅力が自然と高まります。
棚は単なる家具ではなく、職場環境の質を高める戦略的なツールであることを意識した導入が大切です。
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