2025.10.05 2025.09.29コラム
クローズドスペースとは?オフィスに取り入れる意味と役割を解説

目次
オフィス空間の設計において、業務効率や集中力を高める環境づくりが注目されています。その中で導入が進むのが「クローズドスペース」です。個室型のレイアウトがどのような役割を果たすのか、設計上のメリット・デメリットを具体的に掘り下げていきます。
クローズドスペースとは何か?その定義と背景

オフィスにおける空間設計の変化
働き方の多様化にともない、オフィス空間の設計にも変化が見られるようになっています。従来のオープンな空間を前提としたレイアウトから、業務に合わせた柔軟な区分けが求められるようになってきました。なかでも注目を集めているのが「クローズドスペース」と呼ばれる空間設計です。
この形式は、完全に個室化された空間だけを意味するものではなく、視線や音の遮断を目的とした閉じたエリアの総称として使われています。天井まで区切られた会議室やミーティングブースのほか、パーテーションなどで半個室化されたスペースもクローズドスペースの一部に該当します。
業務の性質に応じて、必要な集中力や情報保護レベルを確保するために設計されているのが特徴です。特に、対面とリモートが混在するハイブリッドな働き方では、周囲との境界を意識した空間設計が欠かせません。クローズドスペースの導入は、そのようなニーズへの具体的な対応策のひとつとして位置づけられています。
クローズドスペースの基本的な特徴
クローズドスペースの最大の特徴は、外部からの視線や音を遮ることによって、業務に集中しやすい環境をつくり出せる点にあります。パーソナルスペースを確保しやすくなることで、周囲の動きに気を取られにくくなり、作業の効率が安定しやすくなります。
また、外部との遮断によって、音声を含む情報が漏れにくくなる効果も期待できます。たとえば、クライアントとのオンライン会議や打ち合わせなど、周囲に聞かれたくないやりとりが発生するシーンでは、クローズドな空間が安心感につながります。こうした視点から、情報管理の面でも有効なレイアウトといえるでしょう。
さらに、クローズドスペースは完全な壁による個室だけでなく、可動式のパネルや吸音材などを活用した柔軟な構成でも実現できます。そのため、現状のオフィス構造を大きく変更せずに導入できる点も、近年ニーズが高まっている理由のひとつです。
なぜ今、クローズドスペースが注目されているのか
働き方の多様化と集中環境の必要性
近年の働き方改革の推進により、個々の業務スタイルが多様化しています。業務内容や職種によって求められる集中力の度合いが異なり、それに合わせた空間設計が求められるようになってきました。こうした背景の中で、周囲の視線や音から隔離された空間で作業できるクローズドスペースの必要性が高まっています。
とくに、クリエイティブ業務や文章作成、情報分析などの作業では、一定時間集中を保つことが成果に直結します。オープンな空間では、会話や電話の音が気になり、集中が途切れる場面も発生しやすくなります。そうした課題に対して、クローズドスペースは視覚的・聴覚的な干渉を減らし、静かな環境で業務を行える手段として注目されています。
また、働き方の自由度が増したことにより、自席でじっくりと仕事を進めたいというニーズも見受けられます。すべての業務をオープンな空間で行うのではなく、必要に応じて選べる空間があることが、オフィス設計において重要な要素となっています。
Web会議の増加による環境整備の重要性
デジタルツールの普及にともない、社内外とのコミュニケーションにオンライン会議を活用する機会が増加しています。リモートワークやハイブリッドワークが浸透する中で、オフィス内でもWeb会議に対応できる空間の整備が不可欠になっています。
オープンなスペースでは、周囲の雑音や背景の映り込みが気になることがあり、話し手・聞き手のどちらにとってもストレスの原因となることがあります。特に、重要な商談やプレゼンテーションを行う場合には、集中できる環境が求められます。クローズドスペースはそのようなシーンに適した空間として機能し、会議の質を高めるための環境づくりに寄与します。
さらに、周囲に話の内容が漏れにくくなることは、情報保護の観点でも価値があります。たとえば、個人情報や機密性の高い内容を取り扱う際には、他の社員が行き交うオープンエリアよりも、隔離されたスペースの方が適しています。
こうした変化に対応するため、オフィス内に一定数のクローズドスペースを設ける動きが拡大しています。働く環境に合わせて空間の種類を使い分けられることが、今後のオフィス設計において重要なテーマとなっているのです。
クローズドスペースの具体的な導入方法

パーテーションによる簡易的な区切り方
クローズドスペースを導入する際、まず検討されるのがパーテーションの活用です。床から天井まで届かないタイプのパーテーションであっても、視線を遮るだけで作業への集中度は大きく変わります。特に、自席周辺に高さのある仕切りを設けることで、個別空間としての認識が生まれやすくなります。
また、吸音効果のある素材を使用すれば、周囲の会話や雑音を軽減し、静かな作業環境を整えることが可能です。設置や移動が容易な製品も多く、フロアレイアウトの柔軟性を維持しながら導入できる点も評価されています。
必要に応じて取り外しができる仕様を選ぶことで、プロジェクトや人員構成の変化に応じた再配置がしやすくなります。コストを抑えつつ空間を仕切りたい場合に、パーテーションは現実的な選択肢のひとつです。
ブースや造作壁による半恒久的な仕切り
より高い遮音性や視覚的な隔離が必要な場合には、ブースや造作壁によるクローズドスペースの導入が適しています。ブースとは、机・椅子を備えた小型の個室空間で、電話やオンライン会議、集中作業などの用途に活用されています。
既存のスペース内に設置できるタイプのブースは、電源や照明などを内蔵している製品もあり、オフィスインフラとの整合性も取りやすくなっています。特に、会議室を占有せずに短時間での利用が可能な点が、日常業務における効率化につながります。
一方、造作壁を用いたスペース構築は、オフィス設計の一環として計画的に行われるケースが多く、企業のカルチャーや業務特性を反映しやすいという特長があります。壁の素材や色味によって空間の印象を変えることができ、デザイン面でも一体感を持たせやすくなります。
用途が明確で頻度が高い業務には、こうした半恒久的な構造の方が適しています。ただし、施工が必要な場合は時間やコストがかかるため、導入前には十分な計画と社内調整が欠かせません。
日本国内オフィスでの導入事例に見る傾向
国内では、多くの企業が試験的に一部フロアをクローズドスペース化し、社員の反応や業務効率を確認しながら段階的に導入を進めています。たとえば、既存のフリーデスク制を維持しつつ、クローズドブースを併設することで、目的に応じた空間選択が可能になる構成が増えてきました。
また、打ち合わせや資料作成のための「短時間利用スペース」を明確に設けることで、業務中の移動や場所の確保にかかるストレスを減らす狙いもあります。このような設計は、設備投資の規模を抑えつつ、空間の使い勝手を高める工夫として有効です。
中には、既存の会議室を用途別に細分化し、小型のクローズドスペースとして活用する動きも見られます。大規模な改修を伴わないこの手法は、業務の流れを崩すことなく導入できるため、特に中小規模のオフィスで選ばれやすい傾向があります。
導入することによる主なメリット
集中力・生産性の向上
クローズドスペースをオフィスに導入する最大の利点のひとつが、作業環境の静穏性による集中力の向上です。視覚的・聴覚的な刺激を最小限に抑えることで、周囲の会話や動きに気を取られず、業務に没頭しやすくなります。
たとえば、企画書の作成やアイデアの整理など、個人の集中が求められる場面では、クローズドな空間が有効に働きます。また、周囲の目を気にすることなく、自身のペースでタスクを進められるため、時間の使い方にも余裕が生まれます。
こうした効果は一時的なものではなく、日常業務の質に持続的な影響を与えることが期待できます。一定の集中時間を確保することで業務の効率が高まり、結果としてチーム全体の生産性にも好影響を与える可能性があります。
情報漏洩リスクの軽減
オフィス内で取り扱う情報には、社外に漏れてはならない機密事項や個人情報が含まれるケースがあります。クローズドスペースは、こうした情報の取り扱いにおいても役割を果たします。
音の遮断や視線の制御が可能になることで、周囲の第三者に会話の内容が伝わるリスクを抑えられます。特に、顧客対応や契約関連の打ち合わせにおいては、密閉された空間の方が安心感を得られる場面が少なくありません。
また、画面や資料の内容が他者に見られにくくなるため、機密性の高いデータを扱う作業にも適しています。こうした視点からも、クローズドスペースは単なる作業エリアではなく、セキュリティ強化の一環として捉えることができます。
コミュニケーションの質的向上
クローズドスペースは、個人作業だけでなく、少人数での対話にも適した空間です。たとえば、1対1の面談やプロジェクトチームでの打ち合わせなど、周囲を気にせずに会話したい場面では、クローズドな環境が心理的な安心感を与えます。
開放的なスペースでは話しづらい内容でも、仕切られた空間であれば率直な意見交換がしやすくなります。このような環境は、職場内の信頼関係を築くうえでも有効に働き、コミュニケーションの質を高めることにつながります。
また、外部とのオンライン会議においても、雑音や他の社員の動きが入りにくいため、話の流れが中断されにくくなります。話し手と聞き手の双方にとって、スムーズなやり取りが可能になる点も見逃せないポイントです。
このように、クローズドスペースは「話しやすい空間」を提供するという観点からも、業務効率だけでなく職場の関係構築にも寄与する側面を持っています。
想定されるデメリットと対応策
空間の圧迫感や閉塞性への配慮
クローズドスペースを導入することで、集中力の向上や情報管理の強化といった効果が期待できますが、一方で空間的な圧迫感を感じるケースもあります。特に、天井に近い高さまで仕切られた空間や、採光が不十分な構造では、閉塞的な印象を受けやすくなります。
こうした印象を軽減するには、素材や色合いに工夫を凝らすことが有効です。たとえば、明るめのパネルやガラス素材を取り入れることで、視覚的な抜け感を保ちながら仕切ることができます。また、照明設計を見直すことで、空間全体に開放感を持たせることも可能です。
さらに、完全な個室ではなく、適度に視界が抜ける設計を採用することで、圧迫感を抑えつつ、集中環境を維持できます。空間デザインの工夫により、心理的な負担を最小限にとどめることが重要です。
コミュニケーション不足を防ぐ仕組みづくり
クローズドスペースは個々の作業に集中しやすい一方で、社員同士の自然な会話や気軽な相談が減少しやすいという側面もあります。特に、壁やパネルによって視線が遮られていると、在席の有無が分かりにくくなり、声をかけるタイミングを逃しやすくなります。
こうした問題を解決するためには、情報共有のルールや社内ツールの活用が求められます。たとえば、在席状況をデジタルで可視化したり、チャットツールなどで気軽にやり取りができるようにすることで、物理的な距離を心理的な距離にしない工夫が必要です。
また、定期的にオープンなスペースでの打ち合わせや雑談の機会を設けることも有効です。クローズドスペースとオープンスペースを用途によって使い分けることで、コミュニケーションの偏りを防ぎ、業務に適したバランスを維持できます。
レイアウト変更時のコスト・柔軟性の課題
クローズドスペースは、その性質上ある程度の設備や構造物が必要になるため、レイアウト変更を行う際の柔軟性に制約が出る場合があります。特に、造作壁などを導入している場合は、移設や再設計に手間や費用がかかる可能性があります。
このようなリスクを避けるためには、初期段階から将来的な変化を見越した設計が重要です。可動式のパーテーションやモジュール式のブースを活用すれば、レイアウト変更時にも柔軟に対応できます。
また、プロジェクトごとに異なる使い方を想定する場合には、汎用性の高い設計を取り入れることが推奨されます。クローズドスペースは固定的な空間と考えられがちですが、工夫次第で可変性を持たせることが可能です。業務の流動性に合わせた設計を心がけることで、導入後の運用負荷を抑えられます。
導入を検討する際に考慮すべきポイント
業務内容と働き方に合っているか
クローズドスペースを導入する際は、空間の構造そのものよりも、まず自社の業務特性に適しているかを確認することが重要です。業務によっては、静かな環境よりも頻繁なコミュニケーションやチームワークを重視することが求められます。反対に、思考を深める作業が中心となる業務では、静かな空間が業務効率に直結する場合もあります。
すべての業務に一律でクローズドスペースを導入するのではなく、用途や対象部門を明確にすることで、効果的な運用が可能になります。部署ごとの作業スタイルを踏まえた上で、必要な広さ・遮音性・視覚遮蔽のレベルを選択することが求められます。
また、導入後の使われ方が当初の想定とずれてしまうと、活用が定着しない原因になるため、業務の実態と導入目的の一致は欠かせない視点です。
社内ルールや評価制度との整合性
クローズドスペースの運用が社内文化や制度と噛み合っていない場合、業務効率の向上どころか混乱や不公平感を生むことがあります。たとえば、誰がどのタイミングでスペースを使えるのか、どのような業務目的で使用すべきかといった運用ルールが曖昧だと、社内の不満につながる恐れがあります。
予約制や利用時間の制限など、具体的な使用ルールを設定することで、全社員が平等に利用できる環境を整えることが重要です。加えて、クローズドスペースの利用が業績評価に影響するような構造になっていないかも、あらかじめ確認しておく必要があります。
特定の社員のみが長時間使用している状況が続くと、不公平感が生まれやすくなります。そのため、運用ルールと評価制度のバランスが取れているかを見直し、利用状況の透明性を確保することが求められます。
事前の社内ヒアリングとフィードバック体制
クローズドスペースの導入は、空間デザインだけの問題ではなく、働く環境全体の見直しにもつながる要素です。そのため、導入前には社内の声を丁寧に拾い上げるプロセスが欠かせません。利用者の立場で何が求められているのかを把握することで、現場にフィットした設計が可能になります。
ヒアリングでは、既存の働き方で感じている課題や改善希望を明確にすることが目的です。たとえば、「周囲の声が気になる」「電話や会議がしづらい」といった現場の声を拾い上げることで、設計の方向性が具体化しやすくなります。
また、導入後も継続的にフィードバックを受け取る仕組みを整えることで、運用状況を改善しやすくなります。初期段階で想定していなかった課題が出てきた場合でも、早期に調整を行うことで、社内への定着を促すことが可能です。
まとめ|クローズドスペースは目的に応じた活用が鍵
導入目的を明確にすることの重要性
クローズドスペースの導入は、単なる空間の仕切りではなく、業務の進め方や社員の働きやすさに直結する設計上の取り組みです。導入にあたっては、まず「何のために必要なのか」を明確にしなければなりません。
集中力の向上を狙うのか、Web会議の環境整備を進めたいのか、あるいは機密性の高い業務に対応したいのか。目的によって必要な設備や空間の設計は大きく変わります。意図があいまいなまま進めてしまうと、実際の運用において活用されずに終わるリスクがあります。
そのため、設計段階から社内の業務実態を正確に把握し、実際の働き方と照らし合わせながら進めることが重要です。
空間の役割を定義することで効果を最大化
クローズドスペースを効果的に運用するためには、空間ごとに明確な「役割」を持たせることが有効です。たとえば、集中作業専用ブース、打ち合わせスペース、短時間の通話用エリアなど、それぞれに用途を設定することで、使用の目的が定まりやすくなります。
空間の使い方が明確になれば、利用者間の混乱も起きにくくなり、業務上の無駄も削減できます。また、誰でも気軽に利用できるような設計やルールを設けることで、職種や役職にかかわらず活用されやすくなります。
導入後も、運用状況を継続的に観察しながら改善を加えていくことで、より効果的な働き方の支援につながります。クローズドスペースは、空間という資源を最大限に活用するための戦略的な選択肢のひとつです。
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