ロゴ

お気軽にご相談ください!

0120-390-865 受付時間:平日10:00〜18:00

NEWSお知らせ

2025.11.02  2025.10.10コラム

非効率なオフィスはもう卒業!新しい働き方を成功させる設計術

従来のオフィス設計にとらわれたままでは、新しい働き方は根づきません。柔軟で効率的な働き方を実現するためには、空間の見直しだけでなく、制度や運用との連動が欠かせません。本記事では、形だけの刷新に終わらせないための設計術を具体的に解説します。

今、オフィスに求められている役割とは

業務の場から「価値を生む場」への変化

かつてのオフィスは、業務を遂行するための“作業場所”という性質が強く、デスクや会議室の配置、固定された座席によって構成されてきました。しかし、働き方が多様化した現在では、オフィスの機能や位置づけそのものが見直されています。リモートワークやサテライトオフィスの導入が進む中で、単に仕事を行うための場所という枠を超えて、オフィスには「人と組織をつなぐ場」「創造性や偶発性を引き出す場」としての役割が求められています。

特に近年では、コミュニケーションの活性化やチームビルディングといった、個人の作業効率以外の要素が重視される傾向にあります。これは、オフィスを離れた働き方が進むほど、人と人が実際に顔を合わせる場の価値が高まっていることを示しています。単なる機能性だけでなく、「空間が生む体験」や「関係性の質を高める設計」が、オフィスに対する新たな期待となってきています。

オフィスと働き方の一体設計という視点

オフィスの役割が変化している今、空間設計だけでなく、そこでどのように働くのかという視点を組み込んだ設計が欠かせません。たとえば、集中作業に適した静かなゾーンと、雑談や相談がしやすいオープンなスペースを共存させることで、業務内容や社員の性格に応じた使い分けが可能になります。こうしたゾーニングの考え方は、働き方そのものを支える基盤となります。

また、オフィスが果たすべき役割は、企業ごとの価値観や文化によって異なります。すべての企業に共通の「理想的なオフィス像」が存在するわけではありません。だからこそ、働き方の戦略と連動した空間設計が求められるのです。自社の目指す働き方に沿って、どのような機能が必要なのか、どのような仕掛けが有効なのかを見極めながら設計していくことが、オフィス改革を成功させる鍵となります。

オフィスの物理的な構成要素に加え、そこに込める意図やストーリーが働く人の行動を変え、結果として組織全体の生産性や活力にもつながります。今の時代に求められているのは、効率的な設備配置ではなく、「働き方の質」を高めるための場づくりです。

なぜ“空間の刷新だけ”では失敗するのか

行動を変えずに環境だけ変える危うさ

オフィス移転やリニューアルを行うとき、多くの企業が「新しいレイアウトやデザイン」を導入することに注力しがちです。確かに、最新の家具や快適な設備、明るい空間は視覚的な変化をもたらします。しかし、環境だけを変えても働き方そのものは自動的に変わらないという現実があります。

たとえば、フリーアドレスやオープンオフィスを導入しても、社員が従来と同じ固定的な動きやコミュニケーションスタイルのままであれば、期待していた効果は発揮されません。空間が新しくなっただけでは、日常業務の進め方、情報の扱い方、意思決定の流れなど、働き方の“中身”は変わらないからです。

さらに、社員が新しい環境をどう使うべきか理解していない場合、混乱や不満が増えることもあります。座席の使い方や打ち合わせのルールが不明確なままだと、場所探しや調整の手間が増え、生産性が下がることすらあります。環境の刷新は「きっかけ」であっても、行動の変化や文化の醸成が伴わなければ意味を持ちません。

制度・文化との整合がとれていない事例の典型

オフィスの変革が失敗しやすい背景には、制度や文化との不一致があります。働き方を支える制度が従来のままでは、新しい空間を十分に活かすことはできません。たとえば、柔軟なスペースを用意しても、評価制度が時間や席の在席率を重視しているままであれば、社員は自由に使いこなせず、結局古い働き方に引き戻されてしまいます。

また、企業文化として「顔を合わせていることが重視される」「上司の目の届く場所で仕事をすることが評価される」という価値観が強い場合、どれだけ先進的なオフィスを設計しても、実際には使われないスペースが増え、投資効果が薄れてしまいます。空間だけを整備しても、働き方を変える制度・文化が伴わなければ定着しないのです。

このような失敗を避けるためには、移転やリニューアルを単なる空間刷新ではなく、**働き方そのものの設計プロジェクトとして位置づけることが重要です。**新しい空間に合わせて業務フローや評価制度、コミュニケーション方法を見直し、文化を変えるための仕組みづくりを並行して進めることで、初めて環境の変化が行動の変化につながります。

オフィスは“箱”ではなく、企業の戦略や文化を体現する装置です。見た目の刷新だけでなく、制度・文化・運用を含めた総合的な設計こそが、働き方改革を成功に導く鍵となります。

柔軟な働き方を支える空間設計の基本

ゾーニングの考え方とワークスタイルの関係

柔軟な働き方を実現するには、働く人の行動を支える「空間の多様性」が欠かせません。その起点となるのが、オフィスのゾーニングです。ゾーニングとは、オフィスを目的や使用シーンに応じて明確に区分けする設計手法です。たとえば、集中して一人で作業を行うスペース、複数人でアイデアを出し合うエリア、リラックスして雑談できるスペースなど、それぞれの働き方に適した環境を用意することで、働く人が状況に応じて最適な場所を自ら選べるようになります。

ゾーニングは見た目やインテリアの問題ではなく、「行動を誘導する設計」として機能します。たとえば、集中エリアでは静寂を保つために音の吸収性に優れた素材を使う、コミュニケーションエリアでは立ち話しやすい高さのテーブルを配置するなど、空間の使い方を自然に誘導する仕掛けが設計に織り込まれていれば、使う側に過度なルールを強いることなく自律的な行動が促されます。

また、ゾーニングの適切な設計によって、チーム内外の情報共有や連携の質も向上します。コミュニケーションの密度が高まるだけでなく、静と動の空間がうまく分かれることで、集中力を維持しやすくなるという効果も期待できます。

多様な働き方に対応するスペースとは

柔軟な働き方を支えるには、ゾーンごとの設計に加えて「選択肢の豊富さ」も重要です。誰もが同じように働くわけではない以上、オフィスにもさまざまなタイプのスペースが必要です。たとえば、壁で仕切られた一人用ブース、複数人で囲むテーブル、立ったまま使えるスタンディングデスク、靴を脱いで過ごせる畳のスペースなど、働き方や好みに応じて選べる構成が求められます。

さらに、可変性の高い家具や可動式のパーティションを活用すれば、1つのスペースを多用途で使えるようになります。これにより、人数や目的に応じてレイアウトを柔軟に変えることができ、限られた面積でも効果的な空間活用が可能になります。固定された用途に縛られない設計は、働き方の変化やチームの再編にも対応しやすく、結果としてオフィス全体の適応力を高めます。

このように、空間そのものに「選択の自由度」と「柔軟な運用性」を組み込むことが、働き方の多様性を支える鍵となります。形式にとらわれない空間構成こそが、変化の激しい今の時代にふさわしい設計思想と言えるでしょう。

働き方の変化を促す“見えない設計”とは

行動を変える動線・視線・距離感の演出

オフィス空間には、視覚的に見えるデザインだけでなく、人の動きや心理に影響を与える「見えない設計」が数多く存在します。たとえば、社員同士が自然に出会うように動線を設計することで、偶発的な会話や情報共有が生まれやすくなります。あえて距離を近づけたり、視線が交差する場所をつくることで、対話のきっかけが増え、チーム間の関係性にも変化が生まれます。

こうした設計は、業務効率を目的とした配置とは異なり、「人の行動そのものを変えるための仕掛け」として機能します。たとえば、打ち合わせスペースを通路の近くに設けることで、周囲からの視線を意識するようになり、話し合いの質やスピードに変化が出ることもあります。何気ない空間構成が、働く人の行動や判断に影響を与える点を意識して設計することが重要です。

また、閉鎖的なスペースばかりでは、行き来の少ない環境になりがちです。逆に、オープン過ぎると落ち着かないという声もあります。だからこそ、「どのように人が動くか」「どこで立ち止まるか」といった動線設計と空間の開閉性のバランスが問われます。見た目以上に“行動の質”に着目することで、自然と新しい働き方が定着しやすくなるのです。

心理的安全性と集中・協働の両立

もうひとつの“見えない設計”の要素は、働く人が安心して行動できる「心理的安全性」を生み出す空間です。たとえば、周囲の目を過度に気にせず話ができるスペースがあれば、意見やアイデアを発信しやすくなります。逆に、どこからも見られるようなオープンな環境だけでは、対話や発言に慎重になりすぎてしまうこともあります。

そのため、協働を促す空間と、集中できる空間のどちらも必要です。そして、それらがうまく切り替えられるように設計されていることが理想的です。たとえば、少し歩いた先に集中スペースがあることで、意識的に環境を切り替える行動が生まれ、仕事の質にもリズムが生まれます。このように、物理的な設計が行動だけでなく“気持ちのスイッチ”にも影響を与えるのです。

さらに、声の大きさや話すタイミングを選びやすい空間構成も、心理的な余裕をもたらします。たとえば、壁や植栽などの工夫によって「話してもよい場所」と「静かにするべき場所」が自然と分かるようにすれば、過度なルールを設けなくても利用者の意識は変わります。

オフィス設計において「目に見えない要素」をどう扱うかは、働き方の変革に直結する重要なテーマです。物理的な変更だけでなく、人の行動や感情の変化までを見越した設計こそが、新しい働き方を支える基盤となります。

空間と制度はセットで設計する

運用ルール・制度設計との連動が鍵

オフィスの設計を成功させるには、空間そのものの工夫だけでなく、それをどう使うかという“制度面の整備”が欠かせません。たとえば、フリーアドレスを採用したとしても、席の使い方や荷物の保管方法が曖昧なままでは、混乱を招いたり利用率が下がる原因になります。空間が意図した通りに機能するためには、それを支える運用ルールが明確である必要があります。

制度と空間が切り離されて設計された場合、どちらかが足を引っ張る形になり、せっかくのオフィス改革が定着しません。たとえば、オープンなスペースをつくっても、会話や雑談が評価に反映されにくい文化が残っていれば、誰もその場を積極的に活用しようとはしません。これは制度側が空間の意図を支えきれていない典型例です。

設計段階で重要なのは、空間の使い方を前提とした運用の仕組みを並行して計画することです。利用時間の制限や、スペースごとの使用目的をガイドラインとして共有するだけでも、ユーザーの混乱を防ぎ、空間の意図が伝わりやすくなります。こうしたルールは、細かすぎると形骸化しやすく、緩すぎても迷いを生むため、バランスの取れた設定が求められます。

オフィス設計と評価制度・働き方規範の関係

空間設計を本当の意味で機能させるには、「人の行動」を変える仕組みが必要です。その中でも、評価制度との連動は非常に重要な要素です。たとえば、自律的に働くことが求められるレイアウトに対して、評価基準が出社回数や上司の目の届く範囲にいるかどうかといった“見える働き方”に依存していると、社員は空間を自由に使いこなすことに不安を感じてしまいます。

また、働き方の規範や行動指針が組織として明文化されていない場合、空間に込めた意図が現場に正しく伝わらず、活用が偏る原因となります。自由度の高いオフィスほど、「どう行動することが期待されているか」という共通認識が求められます。制度や評価の在り方がその指針を示すことで、初めて空間が意図通りに使われるようになります。

空間と制度の関係性は、一方通行ではありません。オフィスの設計をきっかけに、働き方の規範や制度そのものを見直す機会にもなります。たとえば、個人の成果をより重視する制度へ移行することで、集中スペースの活用が促進されるといった相乗効果が期待できます。こうした連動を意識することで、オフィスは単なる場所ではなく、組織の文化と戦略を具現化する装置として機能します。

変化に強いオフィスを設計するには

働き方の変化は想定内として捉える

働き方は社会情勢やテクノロジーの進化、企業戦略の変化に応じて、常にアップデートされるものです。そのため、オフィスも「完成したら終わり」という前提ではなく、変化を織り込んだ前提で設計することが求められます。これは、“変化に対応する”という受け身の姿勢ではなく、あらかじめ“変化が起こる”という前提で空間や仕組みを設計するという発想です。

たとえば、部門の統廃合やチーム構成の変更といった組織的な変化は、オフィスの使い方に直接影響を与えます。こうした変化に柔軟に対応するには、空間そのものが固定化されていないことが重要です。使い方を限定せず、再構成しやすい状態を保つことが、変化への対応力を高める鍵となります。

柔軟性と余白をデザインに組み込む

変化に強いオフィス設計では、「柔軟性」と「余白」が欠かせません。まず、柔軟性とは、物理的なレイアウトが変更しやすい構造であることを指します。固定された壁や大型の什器を極力避け、パーティションや家具の移動によって用途やレイアウトを簡単に変更できる構成にすることで、必要に応じたスペースの再構築が可能になります。

一方で、余白とは「すぐには使わないが将来的に活用できるスペース」をあらかじめ持っておくという考え方です。これは単なる空きスペースではなく、予備的な機能を担えるエリアとして設計されるもので、急な業務増や新たな施策導入時に対応できる柔軟性を支えます。余白を持つことで、変化があっても拡張や再配置を無理なく行えるようになります。

また、空間設計だけでなく運用面でも柔軟性を持たせることが肝要です。たとえば、利用者自身がレイアウトを調整できるようにする、自律的な使い方を促すルールを設けるなど、運用の柔軟性も空間の適応力を高める要因になります。

変化に強いオフィスは、堅牢な構造に頼るのではなく、変化を受け入れる“しなやかさ”を持った設計から生まれます。これからの働き方を支えるためには、現在のニーズだけでなく、未来の不確実性にも対応できる設計思想を持つことが不可欠です。将来の拡張性と流動性を備えたオフィスこそが、持続的な成長を支える基盤となります。

オフィス設計で働き方は変えられる

空間は組織の文化を“かたち”にするツール

働き方改革やハイブリッドワークといったキーワードが注目される中で、オフィス設計は単なる環境整備ではなく、組織の文化や価値観を体現する手段としての役割を担っています。空間は目に見える「器」である一方で、そこで過ごす人々の行動や思考、コミュニケーションのあり方を大きく左右します。

たとえば、社員同士の対話を活性化したいと考えるのであれば、その意図が自然と伝わるようなレイアウトや場のデザインが求められます。また、集中と協働を両立させたい場合は、ゾーニングや音環境の設計などにその思想を反映させる必要があります。こうした意図がしっかりと空間に表現されていれば、利用者の意識や行動も変化していきます。

組織の意図と働き手の感覚をつなぐ役割

オフィスは経営層やマネジメント層の意図を、現場の働き手に“感覚として”伝えるインターフェースでもあります。制度や指針では伝えきれないニュアンスを、空間を通じて感じてもらうことができれば、自律的な行動や価値観の共有が自然と生まれる可能性があります。

働き方を変えたいと考えるなら、まずはその思想を「空間」という形で示すことが有効です。どんな行動を促し、どのような関係性を育てたいのか。その答えを空間に込めることで、言葉よりも深く、行動を通して浸透する働き方の変革が実現に近づきます。

オフィス設計は、働き方を変えるためのきっかけであり、仕組みであり、メッセージでもあります。その可能性に真摯に向き合うことが、次の時代の組織にとっての競争力となるでしょう。