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2025.07.26  2025.07.24コラム

オフィスレイアウト設計の基本|働きやすい空間づくりのコツ

オフィスレイアウトは、単なるデスクの配置ではなく、働く人の動線・集中力・チームの連携、さらには企業の価値観や文化までも映し出す要素です。この記事では、レイアウト設計における基本的な考え方と具体的な工夫をわかりやすく整理し、快適かつ機能的な空間づくりのヒントを提供します。実務に落とし込める内容を重視しているため、すぐに役立つ知識として活用いただけます。

オフィスレイアウト設計が求められる背景

働き方の多様化とレイアウト設計の関係

近年、働き方の変化が急速に進んでいます。以前は全社員が固定席に座り、終日オフィスで業務を行うスタイルが一般的でしたが、今ではリモートワークやフレックス勤務が浸透し、社員の出社頻度や働く時間帯も多様になっています。この変化に伴い、従来の一律なデスク配置や部署ごとの固定エリアでは、柔軟な対応が難しくなってきました。

その結果、業務に適したスペースを自由に選べるようなレイアウトや、共有スペースの比率を見直す動きが広がっています。誰もが同じ空間を同じように使う前提から脱却し、個人の働き方に適した空間を提供することが重要視されるようになっています。

レイアウトが生産性・満足度に与える影響

オフィスのレイアウトは、業務効率だけでなく、従業員の心理的な満足度やモチベーションにも大きな影響を与えます。例えば、視線が交差しやすい配置では集中しづらくなる一方で、チーム内の連携は活発になります。逆に、個人作業を重視する業務では、パーティションや距離感に配慮したレイアウトのほうが好まれる傾向があります。

また、コミュニケーションの場と静かな作業エリアが混在している場合、双方にとってストレスの要因となることがあります。このように、レイアウト設計には明確な意図が求められます。ただ単にデスクを並べるのではなく、働き方と空間が調和する構成が、結果として業務の質や従業員の定着率にも影響していきます。

オフィス空間への期待値の変化

従来、オフィスは「仕事をする場所」としての役割に特化していました。しかし現在では、「企業の文化を感じる場」「組織の価値観を共有する装置」としての側面も強まっています。訪問者や新入社員にとって、初めて目にするオフィスの印象は、その企業の信頼性や姿勢を象徴する要素として作用します。

加えて、従業員のエンゲージメントを高める場としても、オフィスの果たす役割は見過ごせません。働きやすさに配慮された空間は、日々の業務に前向きな姿勢をもたらし、企業に対する愛着を育む要素となります。そのため、単なる設備やレイアウトの更新ではなく、「空間づくり」を経営的視点で捉える姿勢が求められています。

設計前に整理すべき3つの要素

業務内容とチーム構成の把握

オフィスレイアウトを検討する際、最初に押さえておきたいのが、各部署・チームの業務内容と構成です。業務の特性によって、求められる空間のあり方は大きく異なります。たとえば、集中作業が多い業務では静けさと一定の個人スペースが必要になります。一方で、頻繁な打ち合わせや情報共有を行う業務では、メンバー同士の距離が近いことや視線が交わる配置の方が適しています。

また、チームの人数や職種のバランスもレイアウト設計に直結します。部署間の連携頻度や役職構成もあわせて整理しておくと、ゾーニングの方向性や動線の計画がしやすくなります。こうした基礎情報をあいまいにしたまま進めてしまうと、後になって配置変更が頻発し、結果として空間効率が悪くなる要因にもつながります。

空間利用の目的と役割の明確化

次に重要なのが、空間ごとの「目的」と「役割」の明確化です。執務エリア、会議室、応接スペース、リフレッシュエリアなど、それぞれに求められる機能や雰囲気があります。これらを一律の基準で配置すると、業務の内容と合致せず、結果的に使いづらい空間が生まれてしまいます。

たとえば、会話が多く発生するエリアの隣に集中スペースを設けてしまうと、静けさが保てず本来の目的を果たせません。逆に、自然な動線の中に休憩スペースを設けることで、気軽なコミュニケーションの場が生まれます。このように、機能の異なるエリアごとに目的を整理し、それに合った設計を行うことで、オフィス全体の生産性が高まります。

また、従業員が意図を持って空間を選べるようになることで、働き方そのものにも積極性が生まれます。利用者の視点に立ち、「どう使ってもらいたいか」を具体的に描くことが、設計成功の鍵となります。

企業文化・ブランディングとの整合性

最後に確認すべきは、自社の企業文化やブランドメッセージと、空間デザインとの整合です。オフィスは単なる作業の場ではなく、外部に対しては企業の姿勢を示すショーケースとなり、内部に対しては価値観や行動指針を浸透させる媒体にもなります。

たとえば、オープンな風土を大切にする企業であれば、壁や仕切りを最小限にしたレイアウトがふさわしい場合があります。一方で、落ち着いた雰囲気や専門性を強調したいのであれば、素材や照明、色使いも含めた空間演出が必要です。

また、社内報やパンフレットだけでなく、オフィス空間自体が「語るメッセージ」になることを意識することで、来訪者への印象も変わります。言葉では伝えにくい文化や価値観を、空間そのもので表現する視点は、これからのレイアウト設計に欠かせない考え方です。

代表的なレイアウト形式と特徴

同向型・対向型・フリーアドレスの違い

オフィスレイアウトを検討する際、基本となるのが「デスクの配置形式」です。中でも代表的なスタイルとして、同向型、対向型、フリーアドレスが挙げられます。

同向型は、全員が同じ方向を向いて並ぶレイアウトで、集中力の維持や指示の統一が求められる業務に適しています。視界の動きが少ないため、個々の作業に集中しやすい一方で、他者との関わりが限定されやすくなる特徴があります。

対向型は、デスクを向かい合わせに配置する形式です。チームでの連携が頻繁に発生する業務では、このレイアウトが効果的です。メンバー間の情報共有がしやすく、対話が自然に生まれやすいというメリットがありますが、視線の交錯や物理的な距離が気になる場面もあるため、設置環境に応じた工夫が求められます。

フリーアドレスは、固定席を持たずに自由に席を選べるスタイルです。プロジェクトごとの柔軟なチーム編成や在席率の低下に対応しやすく、スペースの有効活用が図れる点が特徴です。ただし、全体のルール設計や荷物管理の工夫を怠ると、快適性や機能性を損ねる可能性もあります。

各形式が与える心理的・物理的影響

レイアウト形式の選定には、業務効率だけでなく、利用者の心理的な負荷にも目を向ける必要があります。たとえば、同向型の配置では周囲の動きが視界に入りにくいため集中しやすくなりますが、孤立感を覚える場合もあります。逆に、対向型ではチーム感が強まりやすい一方で、常に人の視線を感じることにストレスを抱く人もいます。

また、物理的な距離感や音の伝わり方もレイアウトに大きく関係します。会話や電話の内容が筒抜けになる環境では、業務への集中を妨げる原因になりかねません。そのため、単に座席の配置を決めるのではなく、周辺の仕切りや素材、距離感といった要素まで含めて検討する必要があります。

加えて、チームごとの業務密度や必要な機材の有無に応じて、スペースの使い方を調整することが、全体の効率性を高めるポイントとなります。

組み合わせによる柔軟な活用方法

1つのレイアウト形式に固執するのではなく、複数のスタイルを組み合わせて設計するアプローチも有効です。たとえば、開放感を重視するエリアではフリーアドレスを導入し、集中作業が求められるエリアでは同向型を採用するなど、用途に応じてレイアウトを切り分けることで、柔軟な働き方を支える環境が整います。

また、会議スペースやカフェスペースと連動させることで、座席配置の効果をさらに高めることも可能です。導線設計や視線誘導といった要素を取り入れ、空間全体の使い勝手を意識した配置とすることで、日常の業務がよりスムーズに進行するようになります。

このように、レイアウト形式には一長一短があり、目的や業務特性によって最適な組み合わせは変わります。従業員が安心して働ける環境づくりを実現するには、こうした違いを理解した上で、全体構成に落とし込むことが欠かせません。

快適さを生むゾーニングの考え方

執務・会議・リフレッシュのバランス

オフィス内には、執務、会議、リフレッシュといった機能の異なるエリアが共存しています。それぞれの目的が明確であるにも関わらず、十分なゾーニングがされていない場合、業務効率や居心地に影響を及ぼす可能性があります。

執務エリアでは集中を維持できる環境が求められ、静けさや視線の遮断が必要になります。一方で、会議スペースでは声の通りやすさ、可動性のある家具配置が重要になります。さらに、リフレッシュエリアにはリラックスできる照明や動線上の開放感が求められます。このように、空間ごとの役割に合わせてエリアを明確に区切ることが、全体の快適性を底上げする鍵となります。

音・視線・動線を意識した分離と融合

ゾーニングを行う際には、空間の物理的な配置だけでなく、音の広がりや視線の通り、動線の連続性も考慮する必要があります。例えば、会話の多いエリアと集中作業を行うエリアが隣接していると、音の干渉により双方にとって不快な環境となる可能性があります。壁やパーティションで完全に区切る手法もありますが、視覚的に閉鎖感を生まないよう工夫することも大切です。

また、通路の設け方ひとつで業務の流れや人の動き方が変わります。無駄な交差が多いとストレスや疲労の原因になりかねません。逆に、視線が自然と抜ける配置や、目的の場所まで迷わず到達できる構成にすることで、利用者の快適度は大きく向上します。

ゾーニングは“分ける”ことだけが目的ではなく、必要な場面では“つなぐ”機能も持たせるべきです。たとえば、オープンな会議エリアを執務エリアと隣接させることで、意見交換のしやすさを高める効果も期待できます。メリハリを持たせつつ、空間同士が滑らかに連動することが理想といえるでしょう。

集中と交流を両立させる設計手法

現代のオフィスに求められているのは、集中しやすいだけでなく、偶発的な会話や連携が生まれやすい環境です。その両立のために有効なのが、空間の「使い分け」に留まらない「行動設計」です。

たとえば、執務席の近くにスタンディングの打ち合わせスペースを設けると、必要な時にすぐ意見交換ができます。また、リフレッシュスペースにカジュアルなテーブルやソファを配置することで、自然なコミュニケーションが生まれるきっかけになります。

このように、あらかじめ人の行動を予測し、その動きに合わせた空間構成を設計することが、集中と交流を同時に実現する上で不可欠です。単にエリアを分けるだけでなく、人の動きと心理に沿った空間づくりを意識することが、働きやすさを高める設計手法といえます。

空間効率と可変性を両立させる工夫

限られた面積を最大限に活かす視点

限られたスペースを有効活用するためには、単に配置を詰め込むのではなく、空間全体を俯瞰し、使われていない「隙間」に着目する必要があります。廊下や壁際、家具の間などにできるデッドスペースを排除するだけでなく、機能を持たせて再構成する発想が求められます。

たとえば、壁面に収納を一体化することで通路を広く取れるようになり、全体の動線も改善されます。また、通路の幅や机の配置を見直すだけでも、空間の使い勝手は大きく変わります。こうした小さな調整の積み重ねが、限られた面積の中で生産性を損なわないオフィスづくりを支える重要な工夫となります。

空間効率を高めるためには、視点を「配置」から「活用」に切り替え、単位面積あたりの価値をどこまで高められるかを考えることが基本になります。

将来の変化を見据えた柔軟な設計

人員の増減やチーム構成の変化など、オフィス環境には必ず変動が伴います。そのため、設計の段階から可変性を意識しておくことが、長期的な視点での快適さやコスト削減につながります。

柔軟性のあるレイアウトとは、移動や変更が前提として考えられている構成です。壁を固定せずパーティションで区切る方法や、モジュール化されたデスク配置はその代表的な例です。さらに、電源やネットワークの位置も移動しやすく設計されていると、後からのレイアウト変更にかかる手間や費用を大幅に抑えることができます。

短期的な最適化ではなく、変化を想定した構造にしておくことで、結果としてオフィス空間は長く活用できる資産になります。設計の柔軟性は、経営判断のスピードにも影響するため、最初の段階でしっかりと戦略に組み込むことが望まれます。

可動家具や共用スペースの活用方法

可変性を高めるうえで効果的なのが、可動式の家具や多目的に使える共用スペースの活用です。キャスター付きの机や棚を導入することで、レイアウトの変更が容易になり、必要に応じてレイアウトを柔軟に調整できるようになります。

また、特定の目的に限定せず利用できる共用スペースは、プロジェクトごとの集まりや個人作業、来客対応などさまざまな用途に応じた使い方が可能です。空間を固定的に捉えるのではなく、状況に応じて形を変えられるように設計することが、現代のオフィスにおいては求められています。

これらの工夫は、業務効率を高めるだけでなく、従業員にとっても「自分に合った働き方が選べる」環境づくりにもつながります。可動性と共用性を両立させた設計は、多様な働き方に対応する上で有効な選択肢といえるでしょう。

レイアウト改善の実践ステップ

課題抽出から関係者ヒアリングまで

オフィスレイアウトを見直す際、まず行うべきは現状の課題を可視化することです。従業員の不満や作業効率の低下、使われていないスペースの存在など、目に見える問題を整理するだけでなく、潜在的な使いづらさにも注目する必要があります。

その上で、部署ごとの業務内容や働き方の違いを把握するために、関係者へのヒアリングを実施することが重要です。現場の声を拾うことで、形式的な改善ではなく、実際の業務に合致した提案が可能になります。ヒアリングでは、一部の意見に偏らないよう配慮し、幅広い立場からの意見を収集する姿勢が求められます。

また、ヒアリング結果をもとに改善の優先順位を決めることで、全体の方向性が見えやすくなります。どの課題をどの順で解決するのかを明確にすることが、プロジェクトの進行をスムーズにします。

レイアウト案の仮設計と評価基準

課題の整理ができたら、次はそれを踏まえたレイアウト案の仮設計に進みます。この段階では、複数のプランを比較検討できるように、異なるパターンで構成することが効果的です。それぞれの案がどのような働き方を促すのか、どの課題をどの程度改善できるのかを明確にしておくと、後の評価がしやすくなります。

評価の際には、単なる見た目や印象ではなく、業務の流れ、動線、コミュニケーションのしやすさ、集中できる環境かどうかといった観点で比較することが求められます。また、コストや工期の条件もあわせて検討し、現実的に実行可能かどうかを判断することも欠かせません。

必要に応じて、現場へのフィードバックを取り入れ、案を微調整する柔軟さも重要です。仮設計はあくまで出発点であり、最適な形に近づけるためのツールとして活用する意識が大切です。

スモールスタートによる検証と調整

全体を一気に変更するのではなく、まず一部のエリアで試験的にレイアウトを変更してみる方法も有効です。この「スモールスタート」型の進め方は、リスクを抑えつつ実際の反応を確認できるメリットがあります。

たとえば、少人数のチームを対象にした執務スペースの見直しや、共用エリアの一部改装など、小規模な変更から始めることで、想定外の課題や調整点を早い段階で発見できます。さらに、利用者の反応や利用頻度などを踏まえて、より効果的な改善策を検討する余地も生まれます。

段階的に全体へと展開していくことで、従業員の混乱を最小限に抑えながら、納得感のある移行が可能になります。このようなステップを踏むことで、設計意図と現場の実態が一致したレイアウト改善が実現します。

働きやすい空間の鍵は“設計意図の明確化”

感覚ではなく、設計思考が求められる時代

オフィスレイアウトにおける最も重要な要素は、空間そのものの美しさや最新の設備ではなく、「どのような働き方を実現したいのか」という明確な設計意図です。働き方が多様化し、組織ごとに求められる要件が変化する中で、汎用的な正解は存在しません。だからこそ、自社の業務や文化、将来像に沿った設計の方向性を明らかにすることが必要です。

デザインや設備はその意図を具現化するための手段に過ぎません。どのようなレイアウト形式を採用するか、どのようにゾーニングするか、どのような柔軟性を持たせるかといった判断は、すべて設計の目的と連動しているべきです。感覚や慣習に頼った判断ではなく、論理と構想に基づく設計が今後のオフィス空間には求められています。

企業ごとの答えを導き出すために必要な視点

働きやすいオフィスを実現するには、自社の実態と将来像に正しく向き合う姿勢が欠かせません。課題を丁寧に拾い上げ、働き方や組織の特性に応じてレイアウトを計画することで、ようやく意味のある空間設計が成立します。

また、レイアウト改善は一度きりの取り組みではありません。環境や組織の変化に合わせて見直しを繰り返す中で、常に最適な状態を保つことが求められます。だからこそ、設計段階での意図の明確化は、長期的な視点でも有効な手段となります。

オフィスは「働く場所」であると同時に、「企業の姿勢を表す場所」でもあります。自社らしさを空間に落とし込むことは、従業員にとっても来訪者にとっても、強いメッセージとして作用します。どのような空間が最適なのか。その答えは、業種や人数ではなく、「何を大切にしたいか」という問いへの向き合い方にこそあります。