2026.02.20 2026.02.17コラム
リモートワーク対応のオフィス設計で重視すべきコミュニケーション設計

目次
働き方が柔軟になる一方で、組織内のコミュニケーションに課題を感じる企業が増えています。出社とリモートが混在する環境では、オフィスの設計がその課題解決の鍵を握ります。本記事では、リモートワークに対応したオフィスづくりの中でも、特に重視すべき「コミュニケーション設計」に焦点を当て、空間と仕組みの両面から実践的な視点で解説します。
リモートワーク対応のオフィス設計とは?

リモートワークの普及で変わるオフィスの役割
リモートワークが定着しつつある今、オフィスの役割は大きく変わろうとしています。毎日出社することが前提だった時代とは異なり、現在では「出社する理由」が必要とされるようになりました。従来のように業務をこなす場としての機能だけでは、社員を惹きつけることが難しくなっています。
そのため、オフィスには「そこに行く価値」を設計の中に組み込むことが求められています。近年では、業務効率だけでなく、偶発的な対話や協働による創造性の向上が注目されています。特に対面によるコミュニケーションは、リモートでは得にくい信頼構築やアイデア創出の面で大きな効果を発揮します。
こうした背景から、リモートワーク対応のオフィスでは、空間づくりを通じて「人と人が自然に関わる設計」が重要となっているのです。
なぜ「コミュニケーション設計」が重視されるのか
リモートワークが広がるなか、企業の多くが「雑談の減少」「意思疎通の不足」といった課題に直面しています。業務に必要な情報交換は行えても、信頼関係やチームの一体感が築きにくいという声は少なくありません。
そこで注目されているのが、空間を通じて会話を促す「コミュニケーション設計」です。たとえば、固定の会議室だけでなく、カジュアルな打ち合わせスペースや、立ち話しやすい場所を配置することで、自然なやり取りが生まれやすくなります。
このように、リモートワークと共存するオフィスでは、作業効率だけでなく、対話の質を高める仕組みづくりが求められているのです。
コミュニケーション設計の仕組みと流れ
物理空間×デジタルのハイブリッド設計
リモートワークを前提としたオフィスでは、物理的な空間だけでなく、デジタル環境との連携を前提とした設計が求められます。出社する社員とリモート勤務の社員が同時に会議を行うケースも多く、どちらにとってもストレスのない環境を整える必要があります。
たとえば、オンライン会議が頻繁に行われるオフィスでは、遮音性の高い会議ブースや少人数用の個別スペースが有効です。さらに、画面越しでも表情や声が明瞭に伝わるよう、マイクやカメラの配置を考慮した空間づくりが重要になります。
また、デジタルツールを通じて非対面でも自然なやり取りができるよう、会話のきっかけを促す設計も必要です。これにより、物理空間とデジタル環境のどちらでも、チームとしての一体感を保つことができます。
4つのコミュニケーションレイヤー
コミュニケーション設計を考える際には、対話の種類を分けて設計に反映させることが効果的です。たとえば、会議や報告のような「フォーマルな対話」は、音響と視線が整った静かな会議スペースが適しています。
一方で、偶発的な会話や日常の雑談といった「インフォーマルな対話」は、ラウンジやカウンター席などカジュアルな空間の中で起こりやすくなります。このようなやり取りは、信頼関係の構築や情報共有の促進につながります。
さらに、チャットやメールなどの「非同期型の対話」も、オフィス内のデジタル環境が整っていれば、移動中や別の業務の合間でもスムーズに行えます。複数のレイヤーを意識した空間設計により、社員同士の接点を増やし、より柔軟で活発なコミュニケーションを実現できます。
リモートワーク対応オフィスのメリット・デメリット

主なメリット
リモートワークを前提に設計されたオフィスには、多くのメリットがあります。最も大きな利点の一つは、柔軟な働き方に対応できる環境を整えられることです。社員一人ひとりが自分に合ったワークスタイルを選択できることで、働きやすさや生産性の向上が期待できます。
また、オフィスの設計によって企業の方向性や価値観を視覚的に示すことができるため、ブランディングの一環としても効果を発揮します。来訪者に対して企業の姿勢を伝える場としての役割を持たせることも可能です。
さらに、リアルな場でのコミュニケーションを重視した設計を取り入れることで、対面の利点とリモートの効率性を両立することができます。偶発的な会話や自然な情報共有が促進され、組織全体の一体感にもつながります。
注意すべきデメリットと対策
一方で、リモートワーク対応のオフィスにはいくつかの注意点も存在します。たとえば、出社率が一定ではない場合、スペースの利用に偏りが出やすくなるという問題があります。席数が余る一方で、会議室が不足するなどの状況が起こりやすくなります。
このような課題に対しては、ABW(Activity Based Working)という考え方が有効です。業務内容に応じて働く場所を選べる仕組みにより、空間の無駄を最小限に抑えながら、社員の行動パターンに適した設計が可能になります。
また、オンライン会議が多くなることで、音の干渉や視線の集中など、新たなストレスが発生する場合もあります。この点については、遮音性や視線の抜けを意識した空間設計を取り入れることで、快適な作業環境を保ちやすくなります。
オフィスの設計は、利便性と快適性のバランスが求められます。メリットを最大化するためには、デメリットへの理解とその対策が欠かせません。
ありがちな誤解とつまずきやすいポイント
見た目の良さを重視しすぎる設計
リモートワーク対応のオフィス設計を進めるうえで、つまずきやすいのが「デザイン性の高さがそのまま働きやすさにつながる」という誤解です。おしゃれな内装や洗練された家具は一見魅力的に映りますが、使い勝手や実際の業務との相性を無視した設計では、成果に結びつきにくくなります。
特に、カジュアルな見た目を重視するあまり、集中できる場所が確保されていなかったり、会議スペースが足りなかったりするケースは少なくありません。設計の初期段階で、見た目と機能のバランスを意識することが大切です。
ツール導入だけで問題が解決するという思い込み
次に挙げられるのが、会議システムやコミュニケーションツールなどを導入するだけで、リモート対応が完了すると考えてしまうケースです。たしかに、国内で普及しているオンライン会議ツールやチャットシステムは便利ですが、それらを効果的に活用するには、適した空間設計との組み合わせが欠かせません。
たとえば、オープンな執務スペースで頻繁にオンライン会議が行われると、周囲の雑音や視線が気になり、生産性が低下します。ツールの利便性を最大限に引き出すためには、それに適した場所の確保や、用途ごとに空間を分ける工夫が必要です。
リモートワーク対応のオフィスは、単なる設備の導入ではなく、日々の業務や社員の行動を踏まえた設計によって機能します。誤った前提に基づいた計画では、かえって課題が増えるリスクがあることを理解しておくことが重要です。
コミュニケーションを支える空間設計の方法
ゾーニングで会話の質と量をコントロール
リモートワークに対応したオフィス設計では、目的に応じた空間の「ゾーニング」が重要になります。特定の目的に合わせてエリアを分けることで、コミュニケーションの質と量を適切にコントロールできます。
たとえば、集中を重視するエリアでは会話を最小限にし、静かで落ち着いた環境を整える一方、意見交換や相談が活発に行われるエリアでは、適度な音と開放感を持たせることで自然な対話が生まれやすくなります。このように、エリアごとに「会話のあり方」を設計することで、無理のないコミュニケーションが促進されます。
また、ゾーニングは動線にも大きく影響を与えるため、社員の移動経路や行動パターンを考慮したレイアウトが求められます。日常的なすれ違いやちょっとした立ち話の機会を増やすような構成が、信頼関係の形成につながる場合もあります。
ICTとの連携で時間・場所を超える仕組み
コミュニケーションを支えるもう一つの要素が、ICTとの連携です。特に、オンライン会議の頻度が高い職場では、専用ブースの設置や音環境の整備が欠かせません。国内でも広く使われている会議システムに対応した設計を行うことで、リモートと対面の差を最小限に抑えることが可能になります。
空間設計と合わせて、各チームでコミュニケーションのルールを明確にしておくことも効果的です。会話の内容に応じて「どの空間を使うか」を判断できるようにしておくことで、意図しないストレスや混乱を防げます。
このように、リアルとデジタルを組み合わせた設計によって、時間や場所に縛られない柔軟なやり取りが実現できます。物理的な空間だけでなく、社員の行動を支える仕組みとして設計を捉えることが、これからのオフィスには求められています。
成功事例に学ぶ、戦略的オフィス設計
偶発的な会話を促す設計でコミュニケーション活性化
ある企業では、リモートワークが主流となったことで、対面での交流機会が減少し、チーム間の情報共有や雑談の機会が極端に減ってしまったという課題を抱えていました。これに対し、出社する目的を「対話の場」と再定義し、オフィスをその機能に特化させた設計へと変更しました。
たとえば、社員同士が自然にすれ違う動線を意識的に作り、途中に立ち話ができるカウンターやミニテーブルを配置することで、会話のきっかけが生まれやすい環境に整えました。また、形式ばらない打ち合わせができる空間を設けたことで、オンラインでは拾いにくかった意見やアイデアが交わされるようになったといいます。
このような取り組みによって、リモートと対面のバランスが保たれ、出社の価値が再認識されるようになりました。偶発的な会話が戦略的にデザインされた空間から生まれることの効果を示す一例です。
集中と協業を両立する空間で定着率を向上
別の企業では、オフィスを縮小移転するタイミングで、リモートワークと出社の併用に最適なレイアウトを検討しました。限られたスペースの中で、集中して作業できる静かなエリアと、相談しやすい開放的なエリアの両方を設ける設計を実施しました。
特に配慮したのが「話しやすさと静けさの共存」です。会話が発生しやすいエリアには、吸音素材を使ったパーティションや家具を活用し、周囲への音漏れを抑える工夫を取り入れました。これにより、誰かと相談したいときにも気兼ねなく会話ができる一方で、周囲で作業をしている人の集中も妨げない環境が整えられました。
さらに、出社した社員が自然に交流できるような空間を設計したことで、在宅勤務とのギャップが埋まり、職場に対する心理的な距離感が改善されたという声も聞かれました。こうした設計が、結果として社員の定着にも良い影響を与えています。
リモートワーク対応オフィス設計のチェックリスト
設計前に確認すべき8つのポイント
リモートワークに対応したオフィスを設計する際には、事前に確認しておくべき項目が複数あります。以下のチェックリストは、計画段階で方向性を整理するための指標として活用できます。
出社の目的が明確になっているか
「なぜ出社するのか」「オフィスで何を実現したいのか」が不明確なままでは、設計方針が曖昧になりやすくなります。まずは出社の意義を再定義することが重要です。
ハイブリッドワークの実態を把握しているか
社員の働き方が完全リモートなのか、週の一部なのか、部署ごとに異なるのかなど、実際の勤務スタイルに合わせた設計を意識しましょう。
チーム間の対話頻度や手段はどうなっているか
会話の頻度や内容、使われているコミュニケーション手段によって、必要な空間や設備は異なります。現状の課題を整理することで、設計に必要な要素が明確になります。
オンライン会議の利用状況を把握しているか
会議の頻度や参加人数、用途によって求められるブースの数や仕様が変わってきます。静音性や映像環境などの要件も設計に反映させる必要があります。
社員の行動パターンを分析しているか
オフィス内での移動経路や滞在時間、よく使われるスペースなどを把握することで、無駄のないレイアウトが可能になります。
将来の組織変化を見越しているか
組織の拡大や縮小、部門の再編などを想定した設計を行うことで、柔軟な運用が可能になります。可変性を持たせた空間構成も検討材料の一つです。
使用予定のICT機器と空間設計が連動しているか
会議システムや共有モニター、ネットワーク環境など、導入予定のICT機器に最適化されたレイアウトが必要です。設置後に調整が難しい部分は、初期段階で整えておきます。
働き方の変化に対応できる柔軟性があるか
働き方やチーム構成は時間とともに変化します。その変化に耐えうる設計であるかを確認し、長期的な視点での運用も視野に入れておきましょう。
このように、設計に入る前の段階で複数の視点から現状と課題を把握しておくことで、より実効性の高いオフィス空間の実現につながります。チェックリストは単なる確認作業ではなく、空間に求める要件を明確にする工程として重要な役割を果たします。
まとめ|リモート時代におけるオフィスの価値とは
リモートワークが常態化した現代において、オフィスは「ただの作業場所」から、「人と組織をつなぐ戦略的な場」へと役割を大きく変えています。
本記事では、そうした変化に対応するために必要な**「コミュニケーション設計」**に焦点を当て、設計の基本、仕組み、メリットと課題、実践方法などを多面的に解説してきました。
オフィス設計で最も重要なのは、単に快適な空間をつくることではありません。
働き方や組織の特性を深く理解し、「どのような対話が、どこで、どのように行われるべきか」を具体的に設計に落とし込むことが求められます。
そのためには、空間、ICT、業務フロー、社員の行動特性といった複数の視点を統合しながら設計を進める必要があります。
特に、出社率の低下や業務の分散が進む中では、「偶然の出会い」や「自然な雑談」を戦略的に生み出すことが、組織の一体感や心理的安全性の醸成につながります。
その実現には、ただの設備導入ではなく、人と組織にフィットした空間設計の力が必要です。
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