2025.11.29 2025.11.27コラム
オフィスの内装で陥りがちな失敗例5選と、発注前に確認すべきチェックリスト

オフィスの内装工事は、見た目のデザインだけで判断すると後悔を招くことがあります。業務効率や社員の快適性に直結するからこそ、計画段階での見落としが大きな損失につながります。本記事では、ありがちな失敗例を具体的に取り上げながら、内装発注前に押さえておくべきチェックポイントを整理しました。失敗を回避し、納得できるオフィスづくりを実現するための参考にしてください。
内装工事でなぜ失敗が起きるのか

オフィスの内装工事における失敗は、偶然に起きるものではありません。多くの場合、計画段階での判断ミスや関係者間の認識のズレが原因です。空間の完成度だけでなく、使い勝手や運用性に関わる点が見落とされると、思わぬトラブルや不満につながります。
見た目重視による本質の見落とし
印象に残るデザインやおしゃれな空間は、確かに好感度の高いオフィスをつくるうえで効果的です。しかし、外見ばかりに目を奪われると、日常業務の動線や機能性にまで目が届かなくなるリスクがあります。たとえば、壁紙や照明のカラーに注力しすぎて、実際の作業環境に必要な配慮が後回しになってしまうケースは少なくありません。内装デザインを空間全体の“パフォーマンス設計”として捉えず、インテリア要素の選定で完結させてしまうと、本来求める働きやすさや効率性を損なう可能性があります。
専門家との連携不足による計画ミス
設計や施工を進める際、施工会社・設計事務所・設備業者との連携が不十分なまま進行してしまうと、現場での調整が増え、全体の統一感を欠く内装になることがあります。特に、担当者が内装に関する専門的な知識を持っていない場合、「このくらいで大丈夫だろう」といった感覚で判断を下してしまい、後から修正に時間とコストを要する事態が発生しがちです。また、業者との認識共有が曖昧なまま施工が始まると、完成後に「イメージと違った」という不満が残ることもあります。初期段階からプロの知見を取り入れた設計方針を明確にし、運用面まで考えた仕様のすり合わせが必要です。
運用を想定しないまま導入が進行
内装工事は空間を“つくる”ことがゴールではなく、“使われる”ことを前提に設計されるべきです。ところが、現場での実際の使い方や社員の行動パターンを事前に検討せずに、雰囲気や印象だけを重視して内装が決定されることがあります。例えば、来客スペースを広く取りすぎて社内業務スペースが手狭になったり、作業エリアに適さない素材を選んでしまったりといった誤りは、運用イメージの不足に起因しています。また、リモートワークやフリーアドレスなど、柔軟な働き方が広がる中で、運用の前提が固定化されてしまうと、すぐにレイアウトの見直しを迫られるケースも増えています。業務スタイルと空間設計をリンクさせる視点が欠かせません。
動線とレイアウトの失敗
内装設計で見落とされがちな要素のひとつに、「動線とレイアウトの整合性」があります。見た目の整ったオフィスでも、実際に業務が滞りなく行われるとは限りません。使い勝手を無視したレイアウトは、日常のストレスや作業効率の低下を引き起こします。導線が複雑になることで時間のロスが生まれたり、働く人の心理的な不快感につながったりするケースも見られます。
移動距離が増える配置のミス
頻繁に使用される複合機や会議室が、執務エリアから離れた場所に配置されていると、社員の移動が無駄に増える原因になります。業務中に何度も席を立つたびに遠回りを強いられ、わずかな時間ロスが積み重なることで、生産性に悪影響を及ぼすことがあります。業務フローと連動しない機器配置は、現場の負担を増やす要因となります。空間の使い方を視覚的に美しく整えることに意識が集中しすぎると、このような実用面が後回しになる傾向が見られます。
集中とコミュニケーションのゾーニング不備
集中力を必要とする業務と、積極的なコミュニケーションが求められる業務とでは、理想的な空間設計が異なります。ところが、こうした業務特性を無視してすべての作業エリアをフラットに並べてしまうと、会話の声や人の出入りが周囲に響きやすくなり、静かな環境を求める社員の集中力が妨げられる場合があります。ゾーニングを意識しないまま開放感や自由度だけを追求した結果、周囲の音や視線が気になって本来の業務に集中できないという声が上がることもあります。スペースの役割を明確にしないまま設計を進めることが、ストレスの発生源となり得ます。
使われない共有スペースの落とし穴
「交流の場」「雑談スペース」「リフレッシュコーナー」など、コミュニケーション促進を目的に設置されたエリアが、実際には誰にも使われていないという状況も散見されます。これは、スペースの配置や導線の設計がうまくいっていないことに起因するケースが多くあります。たとえば、共用エリアが執務スペースと切り離された位置にあり、使うためには席を離れて階段を上る必要があるなど、日常的な利用を前提としない設計がその要因となっている場合があります。また、周囲の目が気になりやすい場所に設置されたことで、気軽に立ち寄りづらい雰囲気を生んでしまうこともあります。設計段階で「どのようなシーンで使われるのか」を丁寧に想定することが欠かせません。
家具・設備の選定ミス

オフィスの内装において、家具や設備の選定は空間の快適性や生産性に大きな影響を与えます。しかし、見た目の印象や一時的な流行に引きずられると、実際の運用に合わないアイテムを導入してしまうリスクが高まります。導入したにもかかわらず使用されない、あるいは現場で不評となる家具や設備の多くは、選定プロセスにおける視点の不足が原因です。
導入目的が曖昧なまま決定される家具
目的を明確にせずに選ばれた家具は、使用シーンと合致しないまま設置されることが少なくありません。たとえば、「疲れにくい椅子を導入したい」というニーズがあったとしても、実際には誰がどのように使うのかまで考慮されなければ、適切な選定とは言えません。単に機能が多い製品を選んだ結果、かえって操作が複雑になり、使用を避けられてしまうこともあります。見た目の良さや高機能性だけで判断するのではなく、業務のスタイルや社員の使用感を意識した選定が重要になります。
サイズや設置スペースの見落とし
スペック表やカタログの情報だけを基に家具や設備を選ぶと、実際の設置スペースとの整合性が取れないまま納入されてしまうことがあります。机と椅子の間隔が狭すぎて動線が塞がれる、会議室に大型ディスプレイを設置したが視野が偏るなど、サイズ感やレイアウトの確認が不足していたことで起こる問題です。特に複数の設備を組み合わせて使う場合、個別の寸法だけでなく、周囲の移動スペースや視認性なども含めた設計視点が必要です。ショールームでの実物確認や、現場の採寸を伴うシミュレーションが求められます。
見た目に振り回される選定リスク
デザイン性の高い家具は空間全体の印象を高める要素になりますが、使用頻度や実用性を犠牲にしてまで選ぶべきではありません。例えば、来客スペースに映えるソファを導入したものの、座面が浅く長時間座るには適していなかったり、素材のメンテナンス性が低く清掃に手間がかかるなど、見た目に偏った選定は運用上の手間や不満につながることがあります。視覚的な魅力と実用性の両立を前提に、目的に応じたバランスの取れた判断が必要です。見栄えの良さが一人歩きしないように、利用者の声や実際の使用シーンを反映させた選定基準を設けることが効果的です。
フリーアドレス運用の誤算
フリーアドレスは、柔軟な働き方の象徴として導入が進んでいます。席を固定しないことで、スペース効率や部署間のコミュニケーション向上を狙う企業も増えています。しかし、運用に関する計画が不十分なまま導入を急ぐと、本来期待された効果が得られず、かえって現場の混乱や不満を招くことがあります。制度としての導入だけでなく、実際に“どう運用されるか”を見据えた準備が必要です。
目的と運用ルールの不整合
フリーアドレスを導入する際に、「なぜ導入するのか」が曖昧なままプロジェクトが進むと、目的と実態の間にズレが生じやすくなります。コミュニケーションを活性化させたいのか、省スペース化を狙っているのか、働き方改革の一環なのか、それぞれの目的によって求められる環境設計やルールは異なります。しかし、それらが整理されないまま施行されると、社員がルールに戸惑ったり、自由度が高すぎて逆にストレスを感じたりする状況を生み出します。目的に応じたルール設計が欠けていると、導入後の運用に支障が出るのは避けられません。
固定化・スペースの無駄化
理想としては、社員がその日の業務内容や気分に合わせて自由に座席を選ぶという運用が想定されます。しかし、実際には早く出社した人が毎日同じ席を確保し、結果として席が固定化される傾向が強まります。このような状況では、本来のフリーアドレスのメリットが十分に活かされず、ただの席替えルールにとどまってしまいます。また、座席に個人の荷物が散在しないようロッカーを設ける必要があるものの、それが想定より大きなスペースを占めてしまい、結果的に有効活用できる面積が減少することもあります。制度上の自由度と実際の使われ方には大きな隔たりがあることを意識する必要があります。
心理的ストレスの見落とし
毎日座る場所が変わる環境は、一部の人にとっては刺激的で快適に映るかもしれません。しかし一方で、「自分の居場所がない」と感じる人も存在します。特に、チームとしての一体感を重視する職場や、集中力を求める業務に従事する社員にとっては、日々の変化が負担となる可能性があります。また、周囲の人が誰になるか分からない環境では、ちょっとした会話も控えがちになり、結果として人間関係の構築が遅れることもあります。フリーアドレスの導入に際しては、社員の心理的側面や職務特性との相性を十分に考慮する必要があります。
ブランドや企業文化との不一致
オフィスの内装は、単なる働く場の整備ではなく、企業の価値観やブランドイメージを体現する重要な要素です。しかし、内装設計の方向性が企業の理念や文化と一致していない場合、外部への印象だけでなく、社員の意識や行動にも悪影響を及ぼすことがあります。内装を形だけ整えても、中身と乖離していれば本来期待される効果を得ることはできません。
コンセプトがないまま進行した失敗
オフィス内装を進めるにあたり、全体のコンセプトが定まっていないまま、各所のデザインを個別に選定してしまうと、統一感のない空間が生まれます。たとえば、受付エリアはモダンでスタイリッシュなのに、会議室は伝統的で堅い印象というように、部屋ごとにテイストがバラバラになってしまうケースがあります。これは、見た目の好みや一部の意見だけでデザインを決めた結果、企業としてのメッセージが伝わりづらくなる原因となります。空間のブランディングは、視覚要素だけでなく「なぜこのデザインにしたのか」という背景と一貫性が問われます。
社外からの印象とのギャップ
オフィスに訪れるのは社員だけではありません。取引先や面接希望者など、外部の人間が最初に接する場所としての印象は、企業の信用や魅力に直結します。しかし、実際の業務内容や企業の雰囲気とは異なるイメージを内装が与えてしまうと、期待とのギャップが生まれます。たとえば、落ち着いた信頼感を重視すべき業種なのに、カジュアルすぎるデザインを採用してしまうと、相手に違和感を与える可能性があります。空間が企業の「顔」となることを意識し、見た目だけでなく伝えたい価値を明確にすることが求められます。
社員の価値観とのズレによる反発
オフィスは社員が日々過ごす場でもあります。そのため、企業が目指す文化や働き方の方向性が、内装にも自然に反映されている必要があります。たとえば、上下関係を強調しないフラットな組織を掲げていながら、役職ごとに明確に区切られた個室ばかりが用意されていると、社員の間で「掲げている文化と実態が異なる」という不信感を生むことがあります。また、働きやすさよりもデザイン性を優先した結果、日々の業務に支障が出るような内装は、現場の不満につながります。価値観と空間が連動していないと、社員の共感や納得感を得られないまま、不満の火種となってしまうことがあります。
発注前に確認すべきチェックリスト
内装工事を成功させるためには、発注前の準備段階でどれだけ的確な検討ができるかが重要です。完成後に「こうしておけばよかった」と後悔するケースの多くは、事前確認の甘さに起因しています。以下に、設計や依頼の前に必ずチェックしておくべき視点を整理しました。
目的・コンセプトの明文化
最初に確認すべきは「内装工事の目的は何か」を明確にすることです。単なる老朽化への対応なのか、働き方の見直しを反映させるのか、あるいは来訪者向けの印象改善を狙っているのかによって、設計の方向性は大きく異なります。また、空間全体のコンセプトが曖昧なままだと、デザインやレイアウトの一貫性が失われやすくなります。目的を具体的な言葉で定義し、それを設計チームや関係者と共有することが、失敗を防ぐ第一歩となります。
導入予定設備の実用性評価
内装設計において、家具や設備の選定はデザインと機能の両面から検討されるべきです。導入を検討している設備が、本当に自社の業務スタイルに適しているかどうかを見極める必要があります。特に、カタログ上での見栄えや機能性だけに注目して選ぶと、実際の使用感や運用時の手間が考慮されないまま設置される可能性があります。選定時には、試用が可能な場合は事前に体験し、できるだけ現場での使用状況に近い形で検証することが望まれます。業務フローと設備の相性も含めて評価する視点が求められます。
運用シナリオのシミュレーション
空間が完成したあと、どのように日々の業務が進むのかを事前にシミュレーションすることも欠かせません。導線や座席の使われ方、共用スペースの動き方などを想定せずに工事を進めると、完成後に不便さが露見し、再調整が必要になることがあります。業務内容やチーム構成をもとに、「このスペースは誰がどのように使うのか」を具体的にイメージしておくことで、レイアウトや家具の配置にも説得力が生まれます。シナリオベースで設計を見直すことで、運用段階のギャップを小さくすることができます。
失敗を防ぐために
オフィスの内装工事は、完成後の姿だけを追い求めるものではありません。業務の進め方、社員の行動、そして企業としての姿勢までも反映される空間設計が求められます。そこには、単に設備を整える以上の視点と判断が必要です。
表層ではなく“運用”を中心に考える
見た目やトレンドに流されると、本質を見落としがちです。魅力的な内装を実現しても、それが日々の業務と噛み合わなければ、使われないスペースや不満の声が増えてしまうだけです。デザインを優先するのではなく、誰がどのように働くのかという視点を中心に据えて設計を進める必要があります。運用から逆算する姿勢が、内装の“使われ方”に説得力を持たせます。
試行錯誤を前提とした設計と見直し
完璧な空間を最初から目指すのではなく、変化に柔軟に対応できる構えを持つことも重要です。業務内容や人員構成は時間とともに変化します。内装計画にも柔軟性を組み込むことで、将来的な修正や拡張がしやすくなります。固定観念に縛られず、「まず試す」「一部から導入する」といった段階的なアプローチを取り入れることで、結果的に大きな失敗を防ぐことができます。
オフィス内装を「働き方をデザインする」機会と捉え、目に見える成果だけでなく、目に見えない効果にも目を向けながら検討を進めていくことが求められます。
- CATEGORY
- コラム
- TAG



