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2025.07.07  2025.06.27コラム

オフィスにおけるBCP対策とは?必要な備えと見直しポイントを解説

災害や感染症といった緊急事態への備えとして、BCP(事業継続計画)はもはや選択肢ではなく必須の対策です。中でもオフィス環境におけるBCPは、事業機能を守るための具体的かつ実践的な対応が求められます。この記事では、オフィスで取り組むべきBCP対策の基本と、見落とされがちな見直しポイントを明確に解説します。

BCP対策がオフィスに求められる理由

自然災害や感染症の常態化

突発的な災害や感染症による混乱は、事業の継続に大きな影響を与えます。特に日本では地震や台風が頻発し、日常的に企業活動の停止リスクが潜在しています。さらに、感染症の拡大によって出社制限やオフィス閉鎖といった状況も発生してきました。こうした背景から、BCP(事業継続計画)は一時的な対応策ではなく、平常時からの準備として定着しつつあります。

オフィスは業務の中枢を担う場であり、その機能が止まることで売上や取引先との関係にも波及します。仮にデータやシステムが守られていたとしても、物理的に業務が行えなければ機会損失は避けられません。そのため、オフィスという空間そのものに対する継続性の確保が求められています。

オフィス機能の停止が事業継続に与える影響

災害時におけるオフィス機能の停止は、単なる物理的被害にとどまりません。従業員の出社が困難になれば業務は停滞し、電話対応や郵送業務などアナログなプロセスが滞る可能性があります。また、現場での意思決定やマネジメントも難しくなるため、組織全体の対応力が著しく低下します。

さらに、オフィスが拠点として機能しない状態が続けば、顧客や取引先からの信頼にも影響を及ぼすおそれがあります。事業を止めないための体制は、企業の信用維持に直結する課題といえるでしょう。

建物単位での備えが企業リスクを左右する

BCPというと、ITの冗長化や業務マニュアルの整備など、ソフト面ばかりに目が向きがちです。しかし、オフィスという建物自体に備えがなければ、どれだけ計画を立てても実行は困難です。建物の耐震性や防災設備の有無、非常時のライフライン確保といったインフラ面は、BCPの実効性に直接関わってきます。

たとえば、停電や断水が長引いた場合でも、最低限の活動を続けられるかどうかは建物の設備によって大きく異なります。また、複数拠点を活用した分散配置が可能であるか、アクセス性に優れているかなども検討対象になります。つまり、オフィスそのものが「使い続けられる構造」であるか否かが、企業リスクの最小化に直結するのです。

企業がBCP対策を具体的に進めるうえで、オフィス環境の整備は土台となる部分です。形だけの計画ではなく、実際に機能する対策を構築するには、まず建物というハード面への理解と見直しが必要といえるでしょう。

BCP策定の基本ステップとオフィスでの実践

業務の優先順位づけと必要資源の洗い出し

BCPを構築する最初のステップは、企業にとって本当に継続すべき業務を見極めることです。すべての業務を対象にするのではなく、事業全体に大きな影響を与える中核業務に焦点を当てます。そのうえで、対象業務を継続するために最低限必要となる人員・設備・情報・インフラを明確にしておく必要があります。

この段階で整理された情報は、災害やトラブル発生時に判断を迅速化する土台になります。業務を支えるリソースがどの程度の損失であれば許容可能なのか、復旧の順番をどう設定すべきかといった観点を加味しながら、計画の全体像を構築していくことが重要です。

オフィス環境においても、この作業は例外ではありません。電源設備、通信インフラ、執務スペース、必要備品などの状況を把握し、優先度をつけて整理することで、対処が必要なリスクの範囲を明確にすることができます。

復旧までの対応手順を明確化する

緊急時の対応を円滑にするには、業務の復旧手順をあらかじめ整備しておく必要があります。誰が何を、どの順番で行うかを定義しておくことで、混乱の中でも迷わず行動できるようになります。役割分担が明確であれば、現場判断のバラつきを抑えることにもつながります。

たとえば、施設内の安全確認、通信手段の確保、取引先への連絡、システムの起動など、それぞれの段階で必要な行動を想定しておくと、初動対応におけるリスクを軽減できます。口頭での伝達や曖昧な記憶に頼るのではなく、手順書やマニュアルとして視認性の高い形で保管しておくことが望まれます。

また、対応の中には時間を要するものもあるため、代替手段や代行要員を事前に設定しておくことも重要です。限られたリソースの中で優先順位を判断するには、事前の整理と可視化が欠かせません。

定期的な見直しと訓練の重要性

BCPは一度策定しただけでは効果を発揮し続けるとは限りません。環境の変化や組織の構造変更、新たなリスク要因の出現により、策定時の前提が通用しなくなることもあります。そのため、定期的な見直しを通じて計画内容を最新化し、実効性を維持する取り組みが必要です。

オフィスに関しても、レイアウト変更や人員の増減、使用するツールの入れ替えなどがあれば、BCPの内容を反映させておく必要があります。加えて、実際の行動につなげるには訓練が不可欠です。平時における模擬対応やロールプレイを実施することで、計画と現場のギャップを洗い出すことが可能になります。

訓練によって得られたフィードバックは、次の改善点を明確にする貴重な材料です。計画の存在だけで安心するのではなく、それが「実行可能な状態」にあるかどうかを検証し続ける姿勢が、信頼性のあるBCPにつながります。

オフィスビル選定時に重視すべきBCP機能

耐震性能・立地・周辺インフラ

オフィス移転や新規入居の際には、賃料や利便性といった観点だけでなく、BCPの観点からビルの基本性能を評価することが求められます。特に耐震性は建物の安全性に直結し、業務の継続性を大きく左右します。建築基準法の改正以降に設計されたビルかどうかを確認することで、一定の耐震基準を満たしているか判断できます。

さらに、立地条件にも注目すべきです。周辺地域が災害発生時にどのような影響を受けやすいか、ハザードマップや地盤の特性を事前に確認しておくことが重要です。交通機関や通信インフラが遮断される可能性が高い場所では、復旧の遅れや避難の困難が発生しやすくなります。拠点の立地選定は、単なる利便性ではなく災害耐性の一要素として捉える視点が必要です。

また、周辺の公共インフラ(上下水道、電力、通信)の安定性もチェックしておくことで、非常時の事業維持が可能かどうかを見極める材料となります。

非常用電源や設備の整備状況

停電発生時に業務を継続するためには、非常用電源の確保が不可欠です。建物に自家発電設備や蓄電池が設置されているかどうかは、BCP対策において非常に重要な指標になります。とくにサーバーや業務端末を扱う部門が多い企業にとって、電力の継続供給は業務停止リスクを減らす要素として強く意識されます。

また、オフィス内の換気設備や空調機能も、停電時に停止してしまうと職場環境の維持が困難になります。非常時でも一定の環境を維持できるよう、設備面での準備がされているか確認が必要です。導入されている機器の種類や設置場所、復旧までの所要時間といった情報も、選定の際には参考になります。

これらの情報はビル管理会社や物件オーナーに問い合わせることで把握できます。契約前の段階で設備面のBCP対応状況を確認しておくことで、将来的なリスクを避けやすくなります。

入居企業の防災意識とビル側の支援体制

オフィスビルにおけるBCP対策は、建物の性能や設備だけで完結するものではありません。同じビルに入居する他の企業の防災意識や、管理側の対応力も大きな影響を与えます。たとえば、合同での防災訓練や、避難経路の整備・共有といった取り組みがあるかどうかは、入居後の対応力に差を生みます。

ビル管理会社が独自に災害対応マニュアルを整備していたり、定期的に設備点検や訓練を実施しているかなども、重要な評価ポイントです。また、非常時の連絡網が整備されているか、情報共有の体制が確立されているかといった点も確認しておくと安心です。

こうした支援体制が整っていれば、企業単体では対応しきれないリスクに対しても、建物全体としての防御力が発揮されます。設備や性能の優劣だけでなく、「建物全体としての防災体制」を意識することが、より実践的なBCP対策につながります。

見落とされがちなオフィス内の物理的対策

家具や什器の固定と安全導線の確保

オフィスのBCP対策において、建物の耐震性や電源設備といったインフラ面に目が向きやすい一方で、室内の物理的対策は見落とされがちです。特に、デスク・キャビネット・書庫といった大型什器の固定は、災害時の人的被害を防ぐために欠かせません。倒壊や落下によるケガを防ぐだけでなく、避難経路の確保にもつながるため、平常時からの整備が重要になります。

また、オフィスの動線を意識したレイアウトも安全性を高めるポイントです。出入口付近や通路に物品を積み上げることで、緊急時の避難に支障をきたすケースが見受けられます。避難を想定した動線設計を事前に検討しておくことで、実際の災害時にも冷静に行動できる環境を整えることが可能です。

こうした対策は設備投資を伴うものばかりではなく、社内の運用ルールや整理整頓の徹底によっても実現できます。大規模な取り組みと併せて、日常的な整備が重要です。

避難経路と誘導体制の明示

避難経路の整備は、BCP対策の中でも最も基本的かつ実務的な項目です。しかし、実際には避難路が荷物でふさがれていたり、誘導表示が不明確なまま放置されているケースも少なくありません。非常口までの動線が明確であること、各所に設置された案内表示が誰でも理解できる状態にあることが求められます。

非常口の数や位置を把握し、避難訓練を実施することで、従業員が自分の行動ルートを明確に認識できるようになります。加えて、緊急時の誘導役を明確にしておくことも効果的です。部署ごとに責任者を定めておけば、情報の伝達や初期対応が円滑に進みやすくなります。

非常時は照明の喪失や煙の影響により、視界が確保できない状況が想定されます。そのため、避難経路には蓄光式の誘導表示や非常灯の設置も視野に入れておくと、安全性が向上します。

安否確認・通信手段の整備

災害発生直後に必要となるのが、従業員や関係者の安否確認です。物理的な対策として、安否確認のための通信手段や緊急連絡網の整備が求められます。電話回線が混雑する状況では、メールや専用ツールを活用した情報共有が有効です。連絡手段が複数ある状態を整えることで、一つの手段が使えなくなっても対応可能になります。

安否確認のために、国内で広く知られている専用の安否確認サービスや、既存のグループウェアを活用する方法もあります。これにより、従業員自身がすばやく状況を報告できる環境が整います。

また、物理的な対策として緊急時用の掲示板をオフィス内に設置しておくと、通信が困難な場合でも一定の情報伝達が可能です。特定の場所に集約する仕組みを設けておけば、現場対応が混乱しにくくなります。

このように、オフィス内の物理的対策は派手さはないものの、BCPの実効性を支える重要な基盤となります。小さな備えの積み重ねが、危機的状況における行動の質を左右することにつながります。

感染症への備えとしてのBCP対応

換気設備・CO₂モニターの導入

感染症対策におけるオフィスBCPでは、空気環境の管理が重要なテーマとなります。特に密閉された室内空間では、換気不足が感染リスクを高める要因とされるため、適切な換気体制を整えることが求められます。

機械換気による定期的な空気の入れ替えが可能な構造であるかどうか、また換気経路が確保されているかといった設備面の確認は、オフィスの安全性を左右します。あわせて、CO₂モニターのような空気質を可視化する機器を用いることで、換気の必要性を定量的に把握しやすくなります。

可視化されたデータに基づいて換気のタイミングを判断できれば、従業員の不安を軽減し、組織としての対応方針にも説得力が生まれます。設備の有無だけでなく、活用の方法を意識することが感染症BCPにおいて効果を発揮します。

非接触型設備とオフィス動線の見直し

接触感染のリスク低減を目的とした非接触型設備の導入も、オフィスの感染症対策として注目されています。ドアの開閉やエレベーターの操作、照明や水回りの利用において、できるだけ人の手を介さずに動作する仕組みを整えることで、接触ポイントの削減が可能になります。

たとえば、自動ドアやセンサー式の蛇口などはすでに一般的ですが、これらがオフィス全体にどれだけ導入されているかは建物ごとに差があります。入退室管理のシステムにも非接触認証を組み合わせることで、セキュリティと衛生管理の両立が図れます。

また、オフィス内のレイアウトや動線も、感染症対策として見直すべきポイントです。共用スペースや通路が狭く、すれ違いや滞留が発生しやすい場合には、動線を一方通行にする、あるいはパーテーションを設置するといった工夫が求められます。日常的な業務運用に無理のない範囲で、自然と距離が保たれる環境を構築することが望まれます。

ハイブリッドワーク体制の整備

感染症の影響により、一部の従業員が出社できなくなる状況を想定すると、業務継続には柔軟な働き方の仕組みが不可欠になります。その一つが、オフィス勤務とリモート勤務を組み合わせたハイブリッドワークの導入です。

この体制を機能させるためには、業務プロセスやコミュニケーションの仕組みをオンラインでも問題なく運用できるよう整えておく必要があります。たとえば、資料のクラウド管理、会議のオンライン対応、チャットツールによる情報共有などが挙げられます。これらを活用することで、物理的な出社ができなくても業務を継続しやすくなります。

ただし、ハイブリッドワークは一時的な措置ではなく、平常時からの習慣づけが重要です。急な切り替えでは対応が難しくなるため、日頃から一部の業務をリモートで行う体制を整えておくことで、有事の際にもスムーズに移行できます。

オフィスを基盤にしながらも、状況に応じて働き方を切り替えられる柔軟性が、感染症対策としてのBCPに求められています。物理的な設備と制度的な整備を両立させることで、業務の継続性と従業員の安全を両立する環境が築かれていきます。

BCPに活用できる国内の代表的サービス・ツール

情報共有・安否確認に使えるツール

BCPの運用において、緊急時の情報共有と安否確認は最優先で対応すべき項目です。これらの機能を担うツールは、導入の有無だけでなく、平常時からの活用体制が鍵となります。

国内で広く知られている安否確認サービスには、携帯電話やパソコンからアクセスできる専用システムが存在します。これらは、事前に登録された従業員の連絡先をもとに一括通知を行い、安否状況の入力を促すことができます。回答はリアルタイムで管理画面に反映され、全体の把握や対応の優先度判断に活かされます。

また、チャット機能や掲示板を備えたグループウェアも、非常時の連絡手段として活用されています。既に社内で導入されている場合は、災害時の利用方法や役割分担をあらかじめ決めておくと、混乱を最小限に抑えることができます。

加えて、スマートフォンアプリを利用する形のサービスも普及しており、モバイル端末を通じて従業員が迅速に情報を確認・報告できる点が利便性の高いポイントといえます。

防災備蓄や設備導入を支援するサービス

オフィス内の物資備蓄や防災設備の導入も、BCP対策の実行に不可欠な要素です。近年では、備蓄品の一括管理や自動補充に対応した法人向けサービスが多数提供されており、利便性と継続性を両立させた運用が可能になってきました。

たとえば、国内の大手防災用品メーカーが提供する法人向け防災パッケージでは、食品・水・トイレ・衛生用品など、最低限必要とされる物資をまとめて提供するセット商品が用意されています。これらは、オフィスの規模や業種に合わせてカスタマイズできる場合もあるため、柔軟に対応できる体制が整っています。

また、オフィスビル管理会社と連携した非常用電源の設置支援や、耐震対応家具の導入サポートなども、BCP対策の一環として選ばれることがあります。こうした取り組みは、一度導入すれば完了するものではなく、継続的な点検や更新が求められるため、信頼できる国内業者の選定が欠かせません。

ツールやサービスは、導入そのものが目的ではなく、「機能させ続ける」ことに価値があります。日常的な運用が想定された設計かどうか、定期点検やサポート体制が整っているかを基準に、選定を進めることが重要です。

BCP対策は「構造」と「運用」の両輪で考える

対策を継続的に運用できる仕組みが鍵

BCPを計画として策定するだけでは、実効性のある対応にはなりません。策定した内容を、いかに現場で運用できる状態に保つかが、BCPの成否を分ける重要な要素です。特にオフィス環境では、設備や物理的対策に加え、ルールやマニュアルが日常業務と無理なく結びついていることが求められます。

避難経路の見直しや備蓄品の点検、非常時対応マニュアルの更新など、継続的な運用を意識した仕組みづくりが重要です。一度整えた仕組みも、時間の経過とともに現場とのズレが生じていくため、定期的な訓練や社内フィードバックを通じて修正する柔軟性が求められます。

備える意識を社内文化にすることの価値

BCP対策の効果を最大化するには、組織全体で「備える意識」を共有する必要があります。これは一部の担当者に任せきりでは実現できません。従業員一人ひとりが、非常時にどのように行動すべきかを理解し、日常の中で意識を持ち続けることが求められます。

そのためには、研修や情報共有の場を定期的に設けるだけでなく、BCPの考え方そのものを企業文化として根付かせる取り組みが効果的です。たとえば、業務改善やレイアウト変更の際にBCPの視点を取り入れるなど、日々の業務と自然に接続する工夫が有効といえます。

BCPは、特別な時だけに使うものではなく、企業の「日常的な思考」に組み込まれてはじめて機能します。形式だけの整備にとどまらず、実際に動かせるかどうかという視点で、今一度見直すことが必要です。