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2025.09.09  2025.08.29コラム

なぜいまオフィス回帰が進んでいるのか?企業が求める新しい働き方

オフィス回帰の動きが再び注目されています。テレワークを経験した企業が、なぜ出社の価値を再評価しているのか。その背景には、コミュニケーションの質、組織の一体感、そして柔軟性との両立といった多層的な課題があります。本記事では、その実態と具体的な対応策をわかりやすく解説します。

オフィス回帰とは何か?

テレワークからの揺り戻しとしての位置づけ

ここ数年で急速に広まったテレワークは、多くの企業にとって働き方の見直しを迫るきっかけとなりました。一時的な対応として始まったリモート勤務は、柔軟性や通勤負担の軽減といった利点が評価され、定着する企業も増えました。しかしその一方で、社内コミュニケーションの減少や意思決定の速度低下といった課題も徐々に顕在化し、「やはり出社には意味があるのではないか」という見直しの機運が高まっています。

このような流れの中で進んでいるのが「オフィス回帰」です。完全なフルリモートから、定期的な出社を組み込んだハイブリッド型勤務へ移行する動きは、多くの業種で見られるようになりました。業務効率だけでなく、職場での偶発的な会話や相互理解の機会を重視する声が、出社の価値を再評価する要因となっています。

企業・行政が語る「出社回帰」の文脈とは

企業がオフィス回帰を進める理由は、単なる管理のしやすさや勤怠把握だけではありません。対面の場でこそ成立する教育や育成、組織文化の共有、マネジメントのリアリティなど、長期的な視点で見たときに欠かせない要素がオフィスには集約されています。特に若手社員にとっては、上司や先輩との直接的なやりとりを通じて得られる「空気感」や「温度感」が学習機会として機能する場面も多く、単なる業務処理だけでは補えない価値があります。

また、行政や経済団体からも「都市の機能維持」や「地域経済の循環」を目的とした出社推奨の動きが見られ、民間との連携を通じた出社支援やオフィス再設計への補助制度が展開されるケースもあります。つまり、オフィス回帰は単なる社内方針の変化ではなく、社会的・経済的文脈とも結びついた動きとして捉えられ始めています。

再評価されるオフィスの価値

対面コミュニケーションによる信頼と協働

テレワークでは業務遂行に必要なやりとりは可能ですが、細かなニュアンスや非言語的な情報が伝わりづらいという課題があります。対面でのコミュニケーションでは、相手の表情や姿勢といった情報を含めてやりとりが行われ、場の空気から得られる暗黙知も共有されやすくなります。こうしたやりとりが信頼関係を築き、協働を促進する土台になります。業務上の報告や連絡だけではなく、偶発的な会話から新たな視点やアイデアが生まれる可能性もあり、オフィス空間がその触媒としての役割を果たす点に注目が集まっています。

情報共有・ナレッジ伝達の精度向上

部門やチームの間で日々交わされる情報の多くは、必ずしも正式な資料として残されるわけではありません。業務の背景や優先度、判断の根拠といった「言葉にしきれない情報」は、オフィスでのちょっとした会話ややりとりの中で自然に伝わることが多くあります。特に新しく入ったメンバーにとっては、同じ空間に身を置くことで業務全体の流れや雰囲気を体感的に理解しやすくなります。このような情報共有の効率や、チーム全体での意思統一のスピードと精度が、オフィスでの勤務によって高まりやすいという見方が広がっています。

オンボーディングや若手育成の再設計

新入社員や若手社員の育成においては、経験豊富な先輩社員との距離感が大きな意味を持ちます。テレワーク環境では質問しづらい、聞くタイミングが難しいといったハードルが生じやすく、学びの機会が制限される傾向があります。オフィス勤務であれば、仕事の合間の雑談や、近くの席で交わされる会話を通じて、自然と知識や価値観が伝わっていく環境が生まれます。これは「目の前で学ぶ」「見て覚える」といった、言語化しにくい教育のプロセスにおいて非常に重要です。オフィスを活用したオンボーディングの仕組みづくりは、これからの人材育成において見直されるべき視点となっています。

従業員の本音とすれ違い

柔軟性を重視する働き方の志向

多くの人がテレワークを経験したことで、働き方に対する価値観が大きく変化しました。通勤時間の削減や業務への集中環境、生活とのバランスなど、自身にとって最も合理的な時間の使い方を模索する動きが加速しています。特に、家庭やプライベートとの両立を重視する層にとっては、柔軟な働き方が生産性や生活の質の向上に直結するため、一律の出社方針に抵抗感を持つケースも少なくありません。

このような柔軟性へのニーズは、職種や世代によって異なるものの、全体的には「自分の働き方を選べる」ことに価値を感じる傾向が強まっていると考えられます。従業員のパフォーマンスを引き出すうえでも、勤務形態の一方的な固定ではなく、状況に応じた選択肢のある環境が求められています。

「週3日以下の出社希望」が示す背景

各種の調査でも、「週に3日以下の出社」を理想とする声が多数を占める傾向が見られます。これは、テレワークが日常化したことで従業員自身が「出社しなくても仕事は回る」という実感を得たことに起因しています。加えて、単なる働きやすさだけでなく、通勤ストレスや職場での心理的負荷を避けたいという声も背景にあります。

こうした意識は、企業が出社を求める意図としばしば衝突します。企業は対面での連携強化や文化醸成といった観点から出社の必要性を唱える一方、従業員側は「それが本当に必要か」という冷静な視点で判断するようになっています。このギャップを無視した一方的な方針転換は、モチベーションの低下や離職意向につながる可能性もあるため、注意が必要です。

心理的安全性や業務との適合性のズレ

テレワークに慣れた従業員の中には、出社に対して強い心理的抵抗を抱くケースもあります。たとえば、職場での人間関係にストレスを感じていた人にとっては、在宅勤務が精神的な安定をもたらしていた可能性があります。そうした人にとっての「オフィス回帰」は、環境の後退とも感じられ、受け入れがたい変化として捉えられがちです。

また、業務内容によっては出社の必要性が感じられにくい場合もあります。すでにデジタル化が進んでいる業務や、顧客との直接的なやりとりを伴わない職種などでは、在宅でも問題なく業務を遂行できる実感があるため、出社が逆に非効率だと感じられることもあります。オフィス回帰を推進する際には、こうした業務ごとの適合性を丁寧に見極めたうえでの運用設計が不可欠です。

オフィス回帰を支える制度と仕組み

段階的出社ルールの設計

出社回帰を進める際、従業員に一律の出社を求めるのではなく、段階的な導入が重要とされています。例えば、週に数日の出社から始め、業務内容やチームの状況に応じて柔軟に調整する方法が注目されています。これにより、出社に対する心理的なハードルを下げながら、企業が求める対面の価値も確保しやすくなります。

また、部署ごとに業務の特性が異なることを踏まえ、ルールを画一的にせず、一定の裁量を持たせる仕組みも有効です。トップダウン型で進めるのではなく、現場の声を聞きながら調整していくことが、制度設計の鍵となります。

ハイブリッドワークを可能にする時間設計

出社とテレワークのバランスを取るうえで重要なのが、時間の設計です。例えば、出社日は対面での打ち合わせやレビューを中心に据え、テレワーク日は集中作業を行うなど、業務内容に応じた運用が求められます。これは単なる場所の切り替えにとどまらず、時間の使い方を再設計するという視点を含みます。

このような運用には、各社員が自律的にスケジュールを立てられることが前提となります。そのためには、業務の目的や進行状況を可視化し、チーム内で共有できる体制づくりが必要です。これにより、出社・在宅を問わず、生産性と連携の両立が実現しやすくなります。

出社したくなる環境の条件とは

制度を整えるだけでは、従業員の出社意欲を高めるには不十分です。出社する価値を感じてもらうためには、オフィス自体の魅力を高める工夫も欠かせません。たとえば、リラックスして話し合える共用スペースや、集中できる個別ブースなど、用途に応じた空間設計が求められます。

また、偶発的なコミュニケーションが生まれる仕掛けや、自然と人が集まる導線づくりなども、空間活用の重要な要素です。単なる「作業場所」ではなく、「人とつながる場」としての価値を持たせることが、出社の動機づけにつながります。

レイアウトと空間設計の再定義

固定席からフリーアドレス・ABWへ

出社とテレワークが混在する働き方が定着しつつある中、オフィスレイアウトにも見直しが求められています。従来のような個別の固定席は、出社率が低い状態では非効率になりやすく、空間の無駄が目立つようになります。その代替として注目されているのが、フリーアドレスやABW(Activity Based Working)といった柔軟な座席運用です。

フリーアドレスでは、社員が自由に空いている席を選んで業務にあたるスタイルを採用することで、スペースの有効活用が可能になります。さらに、ABWの考え方を取り入れることで、業務内容に応じた最適な場所で働くことができるようになり、集中・対話・リラックスなど、多様な働き方を支える設計が実現できます。

共創空間・雑談スペースの再設計

出社する意義のひとつとして挙げられるのが、偶発的なコミュニケーションによるアイデアの創出や関係性の深化です。これを意識したレイアウトとして、共創空間や雑談スペースの再設計が進んでいます。

具体的には、打ち合わせ以外でも立ち寄りやすいカジュアルなソファ席やスタンディングテーブルの配置、社内カフェ風のスペースなど、自然に人が集まり会話が生まれる仕掛けが求められます。意図的に「余白」を作ることで、日常の中で交差する人と人との接点を増やし、業務外のやりとりが結果的に組織の一体感を高めるという発想です。

また、これらのスペースは単なる雰囲気づくりではなく、チームの垣根を越えた共創を促す場としても機能します。部署を横断する議論や情報共有のきっかけとして設けることは、イノベーションを生む土壌づくりにもつながります。

集中と交流のバランスを取る家具と構造

オフィスの価値を最大限に引き出すためには、「交流のしやすさ」と「集中できる静けさ」の両立が欠かせません。オープンすぎる空間は話しかけやすい反面、集中しにくいという課題を生みやすく、逆に区切りすぎると疎外感が生まれます。

このバランスを取るために、パーテーションの高さを調整した半個室型のデスクや、吸音パネルを用いた集中ブース、会話を前提としたミーティングエリアとのゾーニングが重要になります。家具選定や配置次第で、オフィスの機能性と快適性は大きく変わります。

こうした設計の前提には、「社員が何のために出社するのか」を明確にする視点が欠かせません。ただ席があるだけでなく、その場が目的に応じた行動を支える設計であることが、これからのオフィスづくりに求められています。

制度だけでは動かない──社内文化のアップデート

価値観の更新とチームマネジメントの見直し

出社を促す制度を整えても、それだけで社員が自然と足を運ぶようになるわけではありません。オフィス回帰を機能させるには、制度設計と並行して、社内文化そのものをアップデートする必要があります。
特に重要なのは、働き方に対する価値観の共有です。これまでの「時間」や「場所」を基軸にした働き方から、目的や成果を重視する姿勢へと、組織全体の認識を切り替える必要があります。

そのためには、現場のマネジメント層が主導して「なぜ今、出社なのか」「オフィスに戻ることで何が得られるのか」といった意義を言語化し、メンバーに伝えることが求められます。形式的な号令ではなく、対話を重ねて納得を引き出すアプローチが重要です。

「出社の意義」を共有する社内発信の工夫

制度を導入した後に効果が出るかどうかは、社内での情報発信の質にも左右されます。オフィスに来ること自体が目的化しないように、「どのような行動や成果につながるのか」を丁寧に説明することがカギとなります。

例えば、出社を通じて得られるナレッジや人との接点について、社員からの声を集めて発信したり、対面で生まれたプロジェクトの成功事例を紹介したりするなど、具体的な価値を可視化する取り組みが有効です。
そのうえで、「物理的にそこにいること」ではなく、「組織としてつながりを保つこと」に意味があるという共通認識を築くことが、文化としての定着につながります。

評価制度との整合性を取る方法

文化や制度を整えても、最終的に行動に結びつくかどうかは「評価」によって左右される場面も多くあります。もし出社を推奨していながら、成果評価がリモート主体の働き方でも問題なく成立するような仕組みになっていれば、出社に対するインセンティブは働きません。

ここで重要なのは、出社の有無そのものを評価基準にするのではなく、出社を通じた成果や関与の質を、定性的・定量的に評価できるようにすることです。たとえば、対面での協働によって発揮されたリーダーシップや、他部署との連携を推進する姿勢など、現場でしか見えにくい行動に目を向ける視点が必要です。

このように、オフィス回帰の取り組みを成功させるには、単に仕組みを整えるだけではなく、企業文化や価値基準そのものを柔軟に更新していく姿勢が欠かせません。

まとめ:オフィス回帰は戦略と柔軟性の両立から

出社の「目的」を言語化し、共感を生む運用へ

コロナ禍以降に定着した柔軟な働き方は、多くの企業にとって新しい選択肢となりました。その一方で、組織としての結束や暗黙知の共有、若手育成の課題が浮き彫りになった今、オフィスへの回帰が再評価されています。ただし、それは単なる「出社の強化」ではなく、戦略的かつ柔軟な運用が求められるフェーズに入っています。

まず重要なのは、なぜ出社するのかという「目的」を企業側が明確にし、社員が納得できるように伝えることです。対面だからこそ生まれる価値を具体的に示すことで、形式的な出社要請とは異なる意味づけが可能になります。制度の整備だけでなく、価値観や評価制度も含めた全体設計が不可欠です。

オフィス空間を再定義し、新しい価値を設計する

オフィスの役割は、単なる作業場から「つながりを生む場」へと進化しています。今後は、集中・交流・学習といった多様な目的を支える空間構成や、働く人にとって心理的にも快適な場づくりが重視されていきます。そうした視点を持つことで、出社を「義務」ではなく「選択」へと転換でき、社員の主体性を促す環境が整います。

オフィス回帰は、企業文化や働き方そのものを見つめ直す機会でもあります。短期的な対策ではなく、中長期的な視点での設計と、柔軟性を備えた運用体制を築くことが、今後の持続的な組織づくりにつながっていきます。