2020.10.27 2020.10.22オフィスデザイン
顧客がイメージしやすい空間を再現したオフィス
オフィスデザインをするうえでポイントとなる一つに機能性があります。個性的なデザインは面白いですが、そこにばかり目を向けて使い勝手が悪くなっては本末転倒です。 色使いによっては落ち着かない空間になってしまうこともあるでしょう。特に、接客をともなうオフィスはそこを訪れる人の目線も配慮してデザインしなければなりません。 その成功事例として、リスクキャリア株式会社のオフィスを紹介します。
目次
基本コンセプトは「顧客にイメージしてもらうオフィス」
リスクキャリア株式会社は不動産を扱っている会社です。不動産売買に仲介、さらにリノベーション工事と、入居からアフターサービスまでをワンストップで請け負っています。
はじめに、業務内容に沿ったニーズを実現するための基本コンセプトについて紹介します。
大切な顧客に来てもらうという発想
工事を請け負う場合、オフィスで商談や打ち合わせをすることも少なくありません。その際、普通のオフィスで行うよりも、内装をイメージできるショールームを新設したいという発想が今回のコンセプトになっています。
オフィスの応接ルームで話をする場合と、内装が再現されている空間で話をするのとではモチベーションにも違いが出てきます。顧客にとって不動産の購入とは大きな買い物であり、長く生活をする大切な空間です。
その気持ちに向き合い、「大切な顧客に足を運んでもらう」という思いからこのショールームが生まれています。
その場にいることでイメージを掴んでもらう
建物がどのように仕上がるのかイメージを掴んでもらうには、現地での説明が必要になることもあります。しかし、何もない現地で毎回打ち合わせを行うのは限界が出てきます。
その問題を解決したのが、オフィスにいながらイメージを掴んでもらうという発想です。高さや奥行きなど、数字で聞いても感覚は個人差があります。
そうなると、発注者と受注者の間にはズレができてしまうでしょう。実際に見てもらうことができれば納得してもらいやすく、打ち合わせもスムーズに進みます。
異なる素材の組み合わせで誕生した斬新な空間
ショールームという性質上、そこで見て欲しいのはリノベーションに使用する建材です。この事例では、オフィスの中のショールームという位置を活かしつつ、面白いデザインに仕上げています。
顧客の疑問を視覚的に解決
リノベーション工事を発注するとき、自分の希望するイメージがなかなか伝えられないという人もいます。しかし、それは受注側にもいえることです。
例えば、壁材や床材などはサンプルを見て決めるのが一般的ですが、実際の大きさになったときのイメージはしにくいでしょう。
また、異なる素材の組み合わせからくる印象の違いなども、なかなか掴めないこともあります。この事例では、ショールームに複数の素材を用いることで、依頼者に実際の雰囲気を感じてもらうことが可能です。
素材ごとで異なる圧迫感や感触、開放感など、説明ではなく視覚的に解決してもらえます。
状況に応じて使い分け可能な空間
ショールームとは、実際の内装を再現するものです。今回の事例では、キッチンダイニングとリビング、そしてガーデンの3つをテーマにデザインをしています。
しかし、オフィスの一角を利用していることもあり、再現に限界が出るのは仕方がないでしょう。そこで、うまく利用しているのがガーデンスペースです。
この部分にはテーブルと低めの棚しか置かれていません。この空間があることで、その都度必要な建材やファブリックなどの素材サンプルを展示できるようになっています。
しかも、全体のデザインバランスを崩すことなく違和感がありません。
絶妙なカラーバランスで作り出した「信頼と安心感」
色には、見る人に与える印象や意味合いがそれぞれにあります。どのような色を加えるかは、空間作りにおいて大切なポイントといっていいでしょう。
今回の事例でアクセントカラーとなっているグリーンとブルーには、どのような効果があるのか説明していきす。
信頼、安全、安心感をグリーンとブルーで表現
グリーンには調和や慎重などの意味があります。グリーンは自然界に存在する色でもあり、見ているだけでリラックス効果をもたらしてくれる色です。
そして、ブルーは誠実や信頼といった意味を持っています。グリーンもブルーも、信頼を必要とする業種によく使われる色です。
例えば、医療機関や銀行、建設会社のような「信頼と安心感」が重視される会社のロゴやマーク、またはオフィスには、グリーンやブルーがよく採用されています。
今回紹介しているリスクキャリア株式会社は不動産業ですから、この2色を使うことは理にかなっているというわけです。グリーンとブルーをアクセントに使うことで、そこを訪れる人に信頼と安全、安心感を感じてもらうことができるでしょう。
明度の高い色調にすることで温かい空間に
同じ色でも、色相や明度が変わることで印象はさまざまに変化します。例えば、グリーンには黒みがかった濃い色もあれば、イエローが強めの明るい色もあります。
今回のオフィスに使用しているのは、グリーンもブルーも明度が高い色調のものです。明度が低いと硬い印象を与えやすいものですが、高くすることでやわらげることができます。
打ち合わせをするときは、顧客が抱える疑問や希望を話しやすい雰囲気作りを優先しなければなりません。
ショールームで説明をしている間は相手にくつろいでもらうだけでなく、親しみやすい印象を与えることも必要です。明るめのグリーンとブルーを取り入れることで緊張感が解け、温かみのある話しやすい空間になっています。
あえて見せることで圧迫感のない空間づくりを実現
限られたスペースの中で内装を作っていく場合、注意したいのが圧迫感です。個人差はありますが、部屋を細かく区切るとそれだけ圧迫感が生まれますし、落ち着かないという人もいるでしょう。
今回の事例では、その点を上手に解決している成功例といえます。
スケルトンの天井で圧迫感を払拭
スケルトンとは、壁紙や床、天井などの内装工事をしていない状態のことです。賃貸の店舗やオフィスなどにはよく見られるもので、借主は自由に内装工事を行えるというメリットがあります。
実際には契約内容の条件によって左右されますが、ゼロの状態から自由にデザインを考えることが可能です。今回の事例では、天井部分をスケルトンのまま使うことで圧迫感を払拭することに成功しています。
本来隠してしまう部分をあえて見せることで天井が高くなりますし、剥き出しのコンクリートの色で緊張感のない穏やかな内装になります。
また、スケルトンの魅力を直に感じてもらうこともできるでしょう。
透明の間仕切りで奥行きのある空間作り
圧迫感を与えてしまうのは、壁にもいえることです。今回のように、既存のオフィスにショールームを新設する場合は特に注意しておかなければなりません。
スペースが限られているとはいえ、どうしても商談する空間と業務する場所は分ける必要があります。その点、この事例では間仕切りに透明の素材を採用することで解決しています。
しかも、オフィス空間との間仕切りにはやや明度の高い色調を使っているため、緊張感を持たせるという効果も得られるでしょう。全体のカラーバランスは崩さず、上手に空間の使い分けができています。
顧客への思いやりから生まれた温かい空間
今回の事例のように、既存のオフィスにショールームを新設するにはさまざまな制限が出やすくなります。しかし、どこか妥協をしてしまってはオフィスもショールームも活かすことはできません。
デザインをともなう業種である以上、バランスを考えることは非常に大切です。既存のオフィスに何か新設したいというときには、オフィスデザインのプロに相談してみましょう。
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