2023.10.30 2023.10.18オフィスデザイン
オフィスビルの防火区画とは?防火管理者・火災の原因と防火対策・防火性能を高める方法
本記事で、オフィスの防火区画について解説します。またオフィスの防火管理者・火災の原因と防火対策・防火性能を高める方法もご紹介します。オフィスの開設や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。
目次
オフィスビルの防火区画とは?種類別の紹介
オフィスビルの防火区画とは、火災発生時に炎や煙の広がりを防ぐために、建築構造が制限されるエリアです。建築基準法施行令に定められています。オフィスビルの防火対策を講じる前に、防火区画の種類(面積区画・高層区画・竪穴区画・異種用途区画)を確認しましょう。
面積区画
まず面積区画とは、床面積の大きいオフィスを制限する防火区画の種類です。床面積に応じて、準耐火素材や特定防火設備、間仕切り壁などが求められます。
面積区画の適用されるオフィスの床面積と建築構造の制限内容について、下表にまとめました。
オフィスの床面積 | 建築構造の制限内容 |
1500㎡以上 | 1時間準耐火構造の床と壁 特定防火設備 |
1000㎡以上 | 1時間準耐火構造の床と壁 特定防火設備 |
500㎡以上 | 1時間準耐火構造の床と壁 特定防火設備 防火上主要な間仕切壁の設置 |
高層区画
次に高層区画とは、11階以上に位置するオフィスを制限する防火区画の種類です。内装仕上げの状態に応じて、耐火構造の床・壁と防火設備・特定防火設備が求められます。
高層区画の適用されるオフィスの床面積・内装仕上げと建築構造の制限内容について、下表にまとめました。
オフィスの床面積と内装仕上げ | 建築構造の制限内容 |
500㎡ごと不燃材料 | 耐火構造の床と壁 特定防火設備 |
200㎡ごと準不燃材料 | 耐火構造の床と壁 特定防火設備 |
100㎡ごと一般の材料 | 耐火構造の床と壁 防火設備 |
竪穴区画
また竪穴区画とは、火災発生時の煙を別階に広げる箇所(階段や吹き抜け、昇降路など)を制限する防火区画の種類です。主要構造部の建築構造に応じて、床や壁、開口部の建築構造が制限されます。
竪穴区画の適用されるオフィスの条件と建築構造について、下表にまとめました。
オフィスの条件 | 建築構造の制限内容 |
主要構造部が準耐火構造または耐火構造 | 準耐火構造もしくは耐火構造の床と壁 遮煙性能付きの防火設備 |
ただしオフィスビルの外に施工された廊下やバルコニーの吹き抜け部分に対しては、竪穴区画が適用されません。
異種用途区画
また異種用途区画とは、異なる用途の物件が入居する建築物を制限する防火区画の種類です。例えば住宅やオフィス、店舗などが入居している複合ビルなどに適用されます。
異種用途区画の適用される建築物の条件(用途・階数・床面積)について、下表にまとめました。
建築物の用途 | 階数 | 床面積 |
学校・体育館など | 3階以上 | 2000㎡以上 |
百貨店・遊技場など | 3階以上 | 500㎡以上 |
病院・ホテルなど | 3階以上 | 300㎡以上 |
劇場・映画館など | 3階以上 | 200㎡以上 (1000㎡以上の屋外観覧席) |
ただし異なる用途の物件が入居している建築物であっても、管理者が同じ場合や国土交通省の基準を満たしている場合には、異種用途区画の適用が免除されます。
オフィスの防火管理者とは?
オフィスの防火管理者とは、オフィスビル火災の予防と火災時の避難に必要な業務を統括する役職です。オフィスビルの防火区画だけではなく、防火管理者の役割・選任基準・種類・資格の取得方法も確認しましょう。
役割
まずオフィスの防火管理者の役割は、オフィスビル内の火災の予防と火災時の消火・通報・避難などに必要な業務の統括です。オフィスビル内の火災の発生や被害を最小限に抑える役割が求めらます。
参照元:上尾市「防火管理とは 防火管理者の業務と管理権原者の責務」
防火管理者の具体的な業務としては、消防計画の作成、消防計画に基づく消火・通報・避難訓練の実施、消防用設備・消防用水・消火活動に必要な施設の点検と整備、火気の使用・取扱いに関する監督と避難、防火に必要な構造・設備の維持管理、収容人員の管理などが挙げられます。
参照元:e-Gov法令検「消防法」第8条
選任基準
次にオフィスの防火管理者の選任基準は、防火管理に必要な知識・技能とオフィスの管理・監督的立場です。防火管理者として選任されるためには、資格が必要です。資格の取得方法については、後ほどご紹介します。
また防火管理者には、消防計画の作成や避難訓練の実施などが求められるため、リーダーシップがあり現場を統括できる人物が適しています。オフィスの従業員の中から、勤続年数や役職を踏まえて、適任者を選びましょう。
参照元:e-Gov法令検「消防法」第8条
種類
またオフィスの防火管理者の種類は、「甲種防火管理者」と「乙種防火管理者」です。防火対象物の収容人数と用途・床面積によって、必要な資格が異なります。甲種防火管理者の資格なら、乙種防火対象物の管理も可能です。
防火対象物の収容人数と用途 | 防火対象物の床面積 |
50名以上 非特定用途 (集合住宅・学校・図書館・倉庫・事務所など) | 延べ面積500㎡以上なら甲種 延べ面積500㎡未満なら乙種 |
30名以上 特定用途 (カフェ・飲食店・スーパーマーケット・ クリニックなど) | 延べ面積300㎡以上なら甲種 延べ面積300㎡未満なら乙種 |
10名以上 社会福祉施設 (養護老人ホーム・障害福祉施設など) | 延べ面積300㎡以上なら甲種 延べ面積300㎡未満なら乙種 |
資格の取得方法
そしてオフィスの防火管理者資格の取得方法は、防火管理講習の受講です。日本防火・防災協会や自治体が主催しています。オフィスビルの所在地を管轄する消防署にご確認ください。
なお特定の資格を保持する場合(消防設備点検資格者や自衛消防業務講習修了者など)には、防火管理講習の一部の科目が免除されます。科目免除申請の条件や方法などについては、各講習主催者のWebサイトをご確認ください。
オフィスで発生する火災の原因と防火対策
オフィスで発生する火災の原因は主に電子機器・配線・電熱器の誤使用で、発生場所は主に執務室・会議室・キッチンです。防火区画や防火管理者と併せて、火災原因に対する防火対策も確認しましょう。
参照元:東京消防庁「第7章 出火用途別火災状況」(208ページ)
電気配線のショート
まず電気配線のショートが、オフィスで発生する火災の原因として挙げられます。電源プラグをコンセントに差し込む際に、アース端子やホッチキスの芯などを巻き込んでしまうと、火災発生の恐れがあります。
電気配線のショートの防火対策として、アース端子が付いている電源プラグに絶縁保護カバーを付けましょう。そして延長コードを使用する場合には、電気配線を傷つけないように、机や椅子などの下に配置しないようにしてください。
電気配線のトラッキング
次に電気配線のトラッキングも、オフィスで発生する火災の原因です。コンセント部分にほこりや湿気が溜まると、電気を通しやすい状態になり、放電による発火の恐れがあります。
電位配線のトラッキングの防火対策として、定期的に電気プラグを抜いて清掃しましょう。乾いた布を使用して、コンセントに溜まったほこりや汚れを取り除きます。またトラッキング対策の施された電気プラグも、防火対策に有効です。
参照元:新宿消防署「電気配線にご注意」
電気配線の半断線
また電気配線の半断線も、オフィスで発生する火災の原因です。損傷した電源コードから剥き出しになった心線が、鉄蓋などに接触するとショートが発生するため、火災を引き起こす恐れがあります。
電気配線の半断線の防火対策として、コード部分を挟み込んだり、踏みつけたりしない位置に電気配線を設置します。また定期的に、絶縁体の損傷具合を目視で確認しましょう。
コンセントの過熱
そしてコンセントの過熱も、オフィスで発生する火災の原因です。電気配線のコンセントや電子機器(OA機器やパソコンなど)の接触部が緩んだまま使用されると、電気抵抗が増加して発火を引き起こす恐れがあります。
コンセントの過熱による防火対策として、コンセントに負荷をかけないように、抜き差しを丁寧に行いましょう。またコンセントや電気機器を定期的に検査して、差し込みの緩い場合には交換してください。
参照元:新宿消防署「電気配線にご注意」
タコ足配線による過電流
それからタコ足配線による過電流も、オフィスで発生する火災の原因です。1つのコンセントに多くの電化製品を接続して、電流の定格容量を超えてしまうと、コンセントが発熱して出火を引き起こす恐れがあります。
タコ足配線による過電流の防火対策として、電化機器の消費電力やコンセントの許容電流を確認してください。また過電流の防止機能が備わった電源ケーブルの導入も検討しましょう。
参照元:岐阜市「電気火災に注意」
シュレッダーの詰まり
さらにシュレッダーの詰まりも、オフィスで発生する火災の原因です。シュレッダーの掃除に可燃性のエアダスターを使用して、内部のモーターから発生する電気火花で引火すると、爆発を引き起こす恐れがあります。
シュレッダーの詰まりの防火対策として、シュレッダーの掃除に可燃性のエアダスターを使用しないでください。またエアダスターを使用する際には、取り扱いの注意事項を確認しましょう。
参照元:消防防災博物館「シュレッダーから出火した火災について」
オフィスの防火性能を高める方法
オフィスで発生する火災の原因と防火対策に加えて、オフィスの防火性能を高める方法も確認しましょう。本記事では、4つの方法(防火素材・消防用設備・内装制限の緩和策・避難経路)をご紹介します。
防火素材の施工
まず防火素材の施工が、オフィスの防火性能を高める方法です。オフィスの火災予防や初期消火、安全な避難などのために、建築基準法により内装制限が定められています。建築物の条件(用途や規模など)に応じて、防火素材(不燃材料・準不燃素材・難燃材料)を施工しなければなりません。
また建築基準法施行令により、不燃材料・準不燃材料・難燃材料の基準が定められています。不燃材料・準不燃材料・難燃材料の基準については、国土交通省が通知している資料をご確認ください。
参照元
なおオフィスの内装デザインと工事の流れをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
消防用設備の設置
次に消防用設備の設置も、オフィスの防火性能を高める方法です。消防法に基づいて、消防用設備(消火・警報・避難設備や消火活動上必要な施設)の基準が定められています。
消防用設備の種類と具体例をまとめましたので、ご確認ください。
- 消火設備:消化器・スプリンクラー・消火栓・動力消防ポンプ
- 警報設備:自動火災報知器・ガス漏れ火災警報器・漏電火災警報器・非常警報器具
- 避難設備:避難はしご・救助袋・緩降機・避難用タラップ・誘導灯・誘導標識
- 消防活動用設備:排煙設備・連結散水設備・非常コンセント設備・無線通信補助設備
なおオフィスに導入される設備の種類と工事費用をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
避難経路の確保
それから避難経路の確保も、オフィスの防火性能を高める方法です。下記の廊下に対する法規制を遵守したうえで、オフィスをデザインしなければなりません。
- 建築基準法の定める廊下の幅
- 労働安全衛生法の定める廊下の幅
- 消防法の定める避難経路
- 消防法の定める消防設備
以上の法規制やオフィスの廊下をデザインするポイント、施工事例などをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
内装制限の緩和策
また内装制限の緩和策も、オフィスの防火性能を高める方法です。内装制限は火災予防や初期消火、安全な避難などに必要ですが、下記の緩和策を講じることで内装デザインの自由度が増します。
- 天井の高さを6m以上にする
- 警報設備とスプリンクラーを設置する
- 天井を準不燃材料で仕上げる
- 梁や柱の面積を床面積の1/10以内にする
なお内装制限を受けるオフィスの条件や内装制限の内容などについてまとめてありますので、次の記事を併せてご覧ください。
オフィスに防火対策を講じよう!
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