2023.03.10 2023.03.07オフィスデザイン
オフィスに換気設備をデザインするポイント!換気の理由・方法・種類・費用
本記事で、オフィスに換気設備をデザインするポイントを解説します。オフィスを換気する理由や方法、種類、費用もご紹介します。オフィスの開業や移転、リニューアルなどを検討している方は、ぜひご覧ください。
目次
オフィス内を換気する理由
そもそもオフィス内の換気がなぜ必要なのでしょうか?単におしゃれな窓や設備を導入するだけでは、オフィスの換気効率が悪くなります。そこで4点に整理して、オフィス内を換気する理由をご紹介します。
法的に定められているため
オフィス内を換気する理由として、法的に定められている点が挙げられます。建築基準法により、居室の床面積に対して20分の1以上の換気設備を確保することが必要です。建築基準法施工例には、床面積や従業員1人あたりの占有面積に必要な換気量が示されています。
また2003年にシックハウス症候群対策の観点から建築基準法が改正され、全ての建築物に機械換気設備の設置義務が定められました。シックハウス症候群とは、化学物質(クロルピリホスやホルムアルデヒド)が原因で引き起こされる健康被害です。
ウイルスや汚染物質を除去するため
またウィルスや汚染物質を除去する点も、オフィス内を換気する理由です。空気が換気されずに室内に留まると、汚染物質が停滞したり、ウィルスが増殖したりしてしまいます。結果として、ウィルスや汚染物質による健康被害をもたらす恐れがあります。
特に感染症対策として、オフィス内の換気は重要です。換気によってウイルスの滞留を改善できるからです。コロナ禍におけるオフィスデザインの課題や解決策について詳しく解説しているので、次の記事も併せてご覧ください。
二酸化炭素の濃度を減らすため
さらに二酸化炭素の濃度を減らす点も、オフィス内を換気する理由です。空間の二酸化炭素濃度が高まると、不快感や眠気だけではなく、ときには頭痛やめまい、吐き気などを引き起こします。健康被害だけではなく、作業効率の低下も招きます。
また労働安全衛生法では、オフィス内の一酸化炭素と二酸化炭素の含有率が定められています。したがって法令に則って、オフィス内の二酸化炭素濃度を減らさなくてはなりません。
参考:e-GOV法令検索「労働安全衛生法 事務所衛生基準規則」第3条
結露とカビを防止するため
さらにオフィス内を換気する理由として、結露とカビの防止も忘れてはなりません。例えばオフィス内で暖房機器を使うと水蒸気が発生して、結露の原因となります。結露を放置しておくと、カビやダニが発生しやすいです。
また結露(水分)はゴミやホコリを吸着しやすいため、温湿度の条件が整うとカビのエサ場になります。カビやダニが集まる空間に長時間いると、健康被害をもたらす恐れがあります。適度な換気によって、結露やカビの発生を防止しなくてはなりません。
オフィス内を換気する方法
オフィス内を換気する理由を確認したうえで、具体的な換気方法を確認しましょう。換気は、給気(空間への空気の供給)と排気(空間からの空気の排出)の流れで構成されます。オフィス内を換気する方法として、自然換気と機械換気をご紹介します。
自然換気
自然換気は、ドアや窓などの換気設備を開閉する方法です。室内外の温度差や風圧を活用して換気をして、機械に頼らないため自然換気と呼ばれます。ドアや窓を対角線上に設置すると、オフィス内に吸気と排気の流れができて効率的に自然換気を行えます。
自然換気のメリットは、電気代がかからない点や手軽に換気できる点などです。ただし外気の影響を受けて室内の温度が変化する点や窓やドアからほこり・虫が入る点などが、自然換気のデメリットです。
また住宅では窓やドアを開けて自然換気を行いやすいですが、オフィスでは必ずしも窓やドアを開けて換気できるわけではありません。例えば車通りや線路が近いオフィスでドアや窓を開けると、外気や騒音が入り業務に集中しづらくなるからです。
機械換気
機械換気とは、機械式の換気設備(換気扇など)を利用する方法です。建築基準法によって、オフィスに機械換気設備の設置が義務化されていますので、自然換気のみで換気できません。
機械換気は、3方式(第1種機械換気方式と第2機械換気方式、第3種機械換気方式)に分けられます。各方式のメリット・デメリットを確認したうえで、導入する方式を選びましょう。
第1種機械換気方式
第1種機械換気方式は、給気も排気も機械換気設備で行います。給気と排気のバランスを調整して、オフィス内の空気を快適な状態に保ちやすい点などがメリットです。
ただし第1種機械換気方式のデメリットとして、給排気に機械換気設備を導入するコストがかかる点が挙げられます。予算内に設備費や電気代を抑えられるように、慎重に検討してください。
第2種機械換気方式
第2種機械換気方式は、給気を機械換気で行いますが、排気をオフィス内の窓やドア、排気口などで行います。排気に機械を使わないので、第1機械換気方式に比べてコストがかからない点がメリットです。
しかし第2種機械換気方式のデメリットは、窓やドア、排気口を使えないと排気率が低下して、給気率も低下させる点です。オフィス内の窓やドア、排気口を塞がないようにしてください。
第3種機械換気方式
第3種機械換気方式は、給気をドアや窓、給気口などから自然に行いますが、排気を機械換気で行います。第2種機械換気方式と同じく、第1種機械換気方式よりコストがかからない点がメリットです。
ただし第3種機械換気方式のデメリットとして、給排気のバランスを一定に保つことが難しい点や外気の影響を受けやすい点などがあります。特に冬場は扉や窓から冷気が入ると、オフィス内の温度を一定に保ちにくく、暖房機器の電気代がかかります。
また給排気のバランスが悪いと、従業員の業務効率に悪影響を与えてしまいます。バランスよく吸排気できるように、オフィスの内装デザインを検討してください。
オフィスに換気設備をデザインするポイント
換気方式を決めたうえで、オフィスに換気設備をデザインしましょう。オフィス空間を快適に維持できるように、オフィスに換気設備をデザインするポイントをご紹介します。法的な基準や内装や設備とのバランスなどをご確認ください。
法定検査の条件を確認する
オフィスに換気設備をデザインするポイントとして、まず法定検査の条件を確認する点が挙げられます。法定検査の条件(対象となるオフィスビルや検査内容など)は、管轄する行政機関によって異なりますので、オフィスビルの管理業者や自治体に確認してください。
なおオフィスの法定検査は義務であると、建築基準法に定められています。換気設備の検査頻度は、1年以内ごとされています。検査項目は、換気設備の作動状況や給排気口の状態などです。
参考:横浜市建築保全公社「建築基準法第12条 点検について」(P6と16)
オフィスの空気環境の基準値を把握する
次にオフィスの空気環境の基準値を把握する点も、オフィスに換気設備をデザインするポイントです。厚生労働省によって、次のように基準値が定められています。
基準の項目 | 基準値 |
浮遊粉じんの量 | 0.15mg/m3以下 |
一酸化炭素の含有率 | 100万分の6以下(6ppm以下) |
二酸化炭素の含有率 | 100万分の1000以下(1000ppm以下) |
温度 | 18℃以上28℃以下 ※オフィス内の温度を外気温より低くする場合は、差を著しくしない |
相対湿度 | 40%以上70%以下 |
気流 | 0.5m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 | 0.1mg/㎥以下(0.08ppm以下) |
上表に示したとおり、空気環境の基準値が細かく定められています。条件を満たすように、オフィス空間に換気設備を導入しましょう。
給排気の流れを確保する
また給排気の流れを確保する点も、オフィスに換気設備をデザインするポイントです。給排気の流れを確保するために、空気の入口と出口の場所を検討してください。換気設備を少なくとも2つ以上設けて、オフィス空間の対角線上に配置します。
また高さの異なる給排気口や窓を活用する方法もあります。温かい空気は上へ流れて、冷たい空気は下へ流れます。高い位置と低い位置に給排気口や窓を設置すると、給排気の流れができてオフィス空間全体を換気しやすいです。
給排気のバランスを保つ
そして給排気のバランスを保つ点も、オフィスに換気設備をデザインするポイントです。給気が足りないとオフィス空間の気圧が上昇して、ドアを開けにくくなります。一方で排気が足りないと嫌な臭いが排出されないため、オフィス空間にこもってしまいます。
給排気のバランスを保つことで、快適なオフィス空間を維持できます。換気をしても快適性を感じられない場合は、給排気のバランスをご確認ください。
換気効率を高める
さらに換気効率を高める点も、オフィスに換気設備をデザインするポイントです。シックハウス対策として、オフィス内の空気が入れ替わる回数が1時間当たり0.3〜0.5回以上と建築基準法に定められています。
参考:国土交通省「ホルムアルデヒドに関する建築材料及び換気設備の規制について」
そこで換気効率を高めるために、機械換気設備の数と配置を確認しましょう。また機械換気設備だけではなく、1時間当たり10分程度を目安として窓を開けて自然換気もしてください。冬場は5分程度の換気を1時間に2回する方法でも構いません。
間仕切りの位置や高さに配慮する
それから間仕切りの位置や高さに配慮する点も、オフィスに換気設備をデザインするポイントです。高さのある間仕切りを設置すると、室内を換気しづらくなるからです。特に換気設備の少ない空間に、天井高の間仕切りを設置してしまうと、換気効率が下がります。
そこで間仕切りの位置や高さによって、換気設備の増設が必要です。パーテーションのサイズや費用を紹介していますので、次の記事も併せてご覧ください。
定期メンテナンスをしやすくする
加えて定期メンテナンスをしやすくする点も、オフィスに換気設備をデザインするポイントです。換気設備を長く使用するほど、フィルターにホコリやウィルスが溜まります。定期的にメンテナンスせずに換気設備を稼働し続けると、フィルターが機能しなくなる恐れがあります。
したがって換気効率や安全性を高めるために、定期メンテナンスを計画してください。フィルター交換や定期点検をしやすいように、換気設備の種類や位置を検討しましょう。
空調設備も併せて検討する
なおオフィスに換気設備をデザインする際には、空調設備も併せて検討してください。例えば換気機能が備わったエアコンなら、オフィス内の温湿度管理と空気清浄を同時に行えます。
ただしオフィス空間の広さによって、適したエアコンの種類は異なります。導入前にオフィスに適するエアコンの種類を確認してください。空間の広さに合わない空調設備を設置すると、換気と温度の管理が行き届かなくなります。
オフィスに施工できる機械換気設備の種類と費用
オフィスに適した換気設備をデザインできるように、オフィスに施工できる換気設備の種類と費用をご紹介します。換気設備の種類と費用は幅広いので、代表的な3種類の特徴と費用相場をご確認ください。
標準型
標準型は、四角い本体にファンの付いた機械換気設備です。一般住宅にも採用されるため、身近なタイプです。一般住宅の台所程度の広さであれば、給排気をバランスよく行えます。オフィスの広さを考慮して、複数台の設置により換気効率を高めることが可能です。
標準型の機械換気設備の費用相場(本体価格と工事費用)は、1台1万〜3万円程度です。ただしオフィス空間の広さによって必要となる台数は異なるため、設置台数が増えると費用総額も増加します。複数の業者から見積りを取って、費用の合計と内訳を比較してください。
パイプ型
パイプ型は、パイプで給排気する機械換気設備です。天井や壁にはめ込まれたパイプを使用して給排気します。ダクト型より小さい設備であるため、オフィス内の手狭な空間(トイレや給湯室など)にも設置できます。
パイプ型の機械換気設備の費用相場(本体価格と工事費用)は、1台1万5,000〜3万5,000円程度です。対人センサーやタイマーなどの付いた高機能タイプは本体価格が高くなり、1台4万以上する設備もあります。
なおパイプ型の機械換気設備の設置箇所によって、適したファンの大きさは異なります。トイレにはファンの小さいタイプで済みますが、トイレより広い空間にはファンの大きいタイプを採用してください。
ダクト型
ダクト型は、天井に埋め込まれた四角い形状の機械換気設備です。外気に面していない部屋において、天井裏に通したダクトを使って換気します。オフィスや店舗などの密集しているビルで採用されやすいです。
ダクト型の機械換気設備の費用相場(本体価格と工事費用)は、1台2万〜5万円程度です。ダクト型の機械換気設備が施工されている場合は、取り外して新しい設備を埋め込まなくてはならず、工事費用がかさみます。
またサイズの違う設備を天井に埋め込む場合は、天井を改装しなければなりません。オフィスに天井をデザインするポイントを解説していますので、次の記事も併せてご覧ください。
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