2023.11.13 2023.11.19オフィス経営
オフィスの省エネ対策とは?ポイント・事例・補助金・助成金を紹介
本記事で、オフィスの省エネ対策のポイントを解説します。省エネ対策の基本情報・事例・補助金・助成金もご紹介します。オフィスの開設や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。
オフィスの省エネ対策とは?基本情報を解説
オフィスの省エネ対策とは、オフィス内の無駄なエネルギー消費を減らす活動です。オフィスの省エネ対策を計画する前に、基本情報(目的やメリット・デメリット、関係法令、実態)を確認しましょう。
目的
まずオフィス省エネ対策の目的には、コスト削減だけではなく、地球温暖化防止やエネルギー安定供給、経済効率性なども含まれます。オフィスの事業経営にかかる電気・ガス・水道の使用料を削減できれば、利益率を高められます。
そして世界的なエネルギー需要の増加に対して、限りある資源の枯渇が危惧されています。オフィスの電気・ガス・水道の使用量を減らせると、環境保護や持続的な経済活動に貢献できるため、オフィスとしての社会的な信頼や信用を得やすくなります。
メリット
次にオフィスの省エネ対策のメリットには、オフィスのイメージアップやESG投資の増加などがあります。省エネ対策を推進するオフィスは、社会的に評価されます。例えば省エネ性能の高いオフィスビルが、カーボンレポート制度により公表されています。
また投資家は、ESG(環境や社会、コーポレート・ガバナンス)の視点から投資先を判断しています。省エネ対策を推進することで、ESG投資が増加すれば、オフィスの継続的な事業の発展につながります。
デメリット
一方でオフィスの省エネ対策のデメリットとして、経費増加と生産性低下などが挙げられます。省エネ対策として高効率設備を導入したり、業務の手順を変更したりするためには、初期費用や研修時間などのコストがかかるからです。
また現場の声を無視して、トップダウンで省エネ対策を進めてしまうと、従業員のモチベーションや省エネ効果が低下する恐れがあります。省エネの目的や必要性を周知しながら、スモールステップで対策を進めなくてはなりません。
関係法令
そしてオフィスの省エネ対策の関係法令として、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(省エネ法)があります。一定規模以上の事業者に、エネルギー使用の報告や非化石転換の取り組みなどを求める法律です。
参照元:経済産業省「「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する基本方針」が閣議決定されました」
なお省エネ法の対象には、工場の設置者や貨物・旅客輸送事業者、荷主、機械器具等の製造・輸入事業者、家具等の小売事業者、エネルギー小売事業者などが含まれます。以上の業種・業態に関わる一定規模以上のオフィスは、省エネ法の規制を受けます。
参照元:環境エネルギー事業協会「【2023年】省エネ法 定期報告の義務が課される事業者は?」
実態
なおオフィスの省エネ対策の実態について、「都内では中小規模オフィスにおいて省エネ対策の実施率が低い」と報告されています。「トラブルや不具合の恐れ」「情報不足」「費用捻出の困難さ」「優先順位の低さ」などが、省エネを妨げるバリアです。
参照元:片野博明・藤井康平「都内中小規模オフィスにおける省エネバリアに関するアンケート調査」
したがって中小規模オフィスにおいては、照明・冷暖房・外気導入の適正化や高効率設備の導入などが進まない状況にあります。オフィスの省エネ対策に対する補助金・助成金や啓蒙活動などが必要です。
オフィス省エネ対策の方法とポイント
基本情報だけではなく、オフィス省エネ対策の方法とポイントも押さえましょう。本記事では、9点(予算と診断、空調・換気、照明、太陽光発電、給水・給湯、EMS、テレワーク、周知と研修)を取り上げます。
必要な予算の確保
まず必要な予算の確保が、オフィス省エネ対策の方法として挙げられます。予算を正確に計算するために、省エネ対策の具体的な内容(設備の運用改善や高効率設備の導入など)を明確にすることが必要です。
予算確保のポイントは、補助金・助成金の活用です。省エネ対策の補助金や助成金が活用できれば、自社の負担する経費を削減できます。後ほど具体的な補助金・助成金をご紹介します。
省エネ最適化診断の実施
次に省エネ最適化診断の実施も、オフィス省エネ対策の方法です。省エネ最適化診断とは、省エネ診断と再エネ提案によって、エネルギー利用の最適化を支援するサービスです。オフィスにおける現状のエネルギー消費の実態を把握しましょう。
省エネ最適化診断のポイントは、loT・AIを活用した見える化や省エネ補助金における加点などです。IoTやAIを活用したシステムを導入して、エネルギー消費の無駄を見える化することができます。また省エネ最適化診断の受診は、省エネ設備導入補助金の申請において加点評価の対象です。
参照元:
空調・換気設備の設定・交換・メンテナンス
また空調・換気設備の設定・交換・メンテナンスも、オフィス省エネ対策の方法です。設定温度の適正化やフィルター・室外機の清掃などにより、省エネ効果(1℃につき10%)を得られます。
参照元:経済産業省 関東経済産業局「省エネの進め方と 現場で役立つ着眼点」(P12)
空調・換気設備のポイントは、外気導入量の削減です。二酸化炭素濃度や結露・カビの防止などのために換気は重要ですが、外気温の影響により空調の電力量が増えてしまいます。オフィスの空調・換気設備のデザインについてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
LED照明器具の導入・メンテナンス
さらにLED照明器具の導入・メンテナンスも、オフィス省エネ対策の方法です。LED照明器具を導入すると、白熱灯や蛍光灯などに比べて、消費電力を50〜90%程度削減できます。
参照元:経済産業省 関東経済産業局「省エネの進め方と 現場で役立つ着眼点」(P13)
LED照明器具のポイントは、使用しない時間帯の消灯や間引き、採光などです。LED照明器具の導入だけではなく、照明器具の運用改善を実施しましょう。オフィスの照明デザインについてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
太陽光発電設備の導入・メンテナンス
それから太陽光発電設備の導入・メンテナンスも、オフィス省エネ対策の方法です。太陽光発電設備を導入することで、営業日に発電した電力を消費したり、休日に発電した電力を売電したりできます。
参照:一般財団法人省エネルギーセンター「ビルの省エネルギーガイドブック2022」(P40)
太陽光発電設備のポイントは、リースやオンサイトPPAの検討です。太陽光発電設備の初期費用やメンテナンス費用を抑えられます。オフィスの電気工事についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
給水・給湯設備の交換・メンテナンス
さらに給水・給湯設備の交換・メンテナンスも、オフィスの省エネ対策の方法です。給湯器が劣化した際に省エネタイプに交換したり、設定温度を下げたり、定期的に清掃したりしましょう。
給水・給湯設備のポイントは、節水機器の導入です。蛇口やトイレ、シャワーなどに節水コマを設置することで、節水効果を得られます。導入する際には、故障を勘違いされないように、オフィス全体へ周知しましょう。
参照元:国土交通省「節水機器」
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入
そしてエネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入も、オフィス省エネ対策の方法です。EMSは、エネルギーの使用量をリアルタイムで見える化して、運用改善を支援してくれます。
参照元:大阪府「エネマネで無理のない省エネ→エネルギーコスト削減!」
EMSのポイントは、契約電力と使用電力の削減です。電力使用量の目標値を設定したうえで、EMSのデータを確認しながら、設備の温度設定や使用時間を調整しましょう。EMSの導入・運営を支援するサービスもあります。
テレワークの導入
続いてテレワークの導入も、オフィス省エネ対策の方法です。従業員がオフィス外でテレワークすることで、オフィスのエネルギー使用量を削減できます。またオフィスフロアを縮小することで、空調・換気・照明などの設備費の減少も可能です。
テレワークのポイントは、個室のレイアウトやコミュニケーション活性化、ICTツールの利用などです。テレワーク導入後に求められるオフィスの役割についてまとめてありますので、次の記事もご覧ください。
周知と研修
なおオフィス省エネ対策の方法として、周知と研修を心がけましょう。高性能設備を導入したり、運用改善を計画しても、従業員の理解と協力を得られなければ、省エネ効果を上げることができないからです。
周知と研修のポイントは、省エネ対策目標の共有やチェックリストの活用などです。オフィス全体の省エネ意識を高めるために、各従業員の意見や要望も取り入れながら、省エネ対策を計画しましょう。
参照元:台東区「オフィスビル(テナントビル)向け 省エネセミナー」(P9)
オフィスの省エネ対策事例
オフィスの省エネ対策方法を決めるために、参考となる事例を調査しましょう。本記事では事例5点(照明・空調・EMS・テレワーク・啓蒙活動)を取り上げて、各省エネ対策の特徴をご紹介します。
休憩時間中に消灯が実施されるオフィス
共立速記印刷株式会社は、速記・印刷業を営む企業です。オフィスの省エネ対策として、休憩時間中に消灯が実施されています。電力使用量を削減して、年間2万円のコスト削減につながっています。
他にも省エネ診断に基づいた提案により、空調温度の緩和や補助金を活用した省エネ設備導入、照明設備のLED化などの省エネ対策も実施。別の事業場への水平展開も計画されています。
参照元:一般財団法人省エネルギーセンター「経営改善につながる省エネ事例集 2021年度」(P8~9)
放射空調システムが導入されたオフィス
清水建設株式会社は、オフィスビルなどの設計・建設を営む企業です。自社開発の天井放射パネルが活用されて、テナントビルに放射空調システムが構築。ZEB Ready(年間の一次エネルギー消費量を基準値より50%以上削減したビル)が達成されました。
またビル全体の空調負荷が低減されるように、テナントビルの外装はデザイン性と機能性が両立されたデザイン。そして照明設備の電力量も減らせるように、ブラインド閉鎖時でも採光量が確保されています。
参照元:一般財団法人省エネルギーセンター「経営改善につながる省エネ事例集 2021年度」(P24~25)
エネルギーマネジメントシステムが導入されたショールーム
ダイキン工業株式会社は、空調や化学の関連事業を展開する企業です。ショールームに、エネルギーマネジメントシステム搭載のビル統合管理システムを導入。ビル内の快適性を維持しながら、空調消費電力量が年間30%以上削減されました。
空調設備の運転データが蓄積されており、電力量のデマンド制御も行われているため、ピーク電力の抑制が可能です。また統合管理システムと併せて、CO2センサーも導入されており、人の混み具合に応じて換気量が調節されています。
参照元:一般社団法人 電子情報技術産業協会「ショールームにおける換気最適化と空調運用改善による省エネ」
テレワークが導入されたオフィス
ARM(アザーブ・リソースマネジメント)は、学術研究や専門・技術サービス業を展開する企業です。Tokyo Branchのオフィスに、省エネ化を目的としたテレワークが導入。オフィスの電力量は、テレワーク導入前より60%以上削減されました。
テレワーク導入に際して、オフィスは完全に閉鎖されず、規模縮小により活用されています。省エネだけではなく、フレキシブルな働き方やワークライフバランスの向上も進みました。
参照元:総務省「令和3年度 テレワーク先駆者百選 取り組み事例」(P7)
全従業員対象の啓蒙活動が展開されたオフィス
キヤノン化成株式会社は、光学用塗料やトナーカートリッジなどを製造・販売する企業です。オフィス内にて、全従業員対象の啓蒙活動が展開。ワンコイン運動提案シートが配布されて、省エネのアイデアが収集されています。
そして従業員の省エネ意識を高めるために、各部門でポスターが作成。全社で消灯や電源OFFなどの取り組みが行われ、2014年には130万kWhの電力量が削減されました。
参照元:キヤノン化成株式会社「全員参画省エネルギー活動」(P8-12)
オフィスの省エネ対策に活用できる補助金・助成金
オフィスの省エネ対策を進めるためには、予算が必要です。そこでオフィスの省エネ対策に活用できる補助金・助成金をご紹介します。各補助金・助成金の運営主体や目的、対象事業者などを確認しましょう。
中⼩企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業補助金(経済産業省)
まず中⼩企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業補助金は、経済産業省の運営するオフィスの省エネ対策に活用できる補助金です。対象は条件を満たす中小事業者(製造業・卸売業・運輸業・サービス業・小売業など)で、省エネ診断費用が補助されます。
参照元:
省エネルギー診断「設備を点検して光熱費削減 省エネルギー診断」
大阪府「中小企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業(令和4年度第二次補正予算)」
省エネルギー投資促進支援事業費補助金(経済産業省)
次に省エネルギー投資促進支援事業費補助金も、経済産業省の運営するオフィスの省エネ対策に活用できる補助金です。対象は条件を満たす国内の法人や個人事業主などで、省エネ設備(高効率の空調や冷凍冷蔵設備など)の導入費用が補助されます。
参照元:一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業 公募情報(2次公募)」(事業概要パンフレット)
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業補助金(経済産業省)
また省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業補助金も、経済産業省の運営するオフィスの省エネ対策に活用できる補助金です。対象は条件を満たす国内の法人と個人事業主などで、省エネ設備(先進設備やオーダーメイド型設備、エネルギーマネジメントシステム)の導入費用が補助されます。
参照元:一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業 公募情報(4次公募)」(事業概要パンフレット)
工場・事業場における先進的な脱炭素化取組推進事業補助金(環境省)
それから工場・事業場における先進的な脱炭素化取組推進事業補助金は、環境省の運営するオフィスの省エネ対策に活用できる補助金です。対象は条件を満たす工事・事業場で、脱炭素化の取り組み(CO2削減計画策定や省CO2型設備更新支援など)の費用が補助されます。
参照元:環境省「SHIFT事業とは」
大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業補助金(環境省)
そして大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業補助金も、環境省の運営するオフィスの省エネ対策に活用できる補助金です。対象は不特定多数の人が利用する施設等で、高機能換気設備などの導入費用が補助されます。
参照元:環境省「令和4年度「大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業」の2次公募開始について」
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(環境省)
続いて二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金も、環境省の運営するオフィスの省エネ対策に活用できる補助金です。対象は条件を満たす民間企業や個人事業主などで、建築物のZEB化や省CO2改修などの費用が補助されます。
参照元:一般社団法人 静岡県環境資源協会「令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業)」
ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業助成金(東京都)
なおゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業は、東京都の運営するオフィスの省エネ対策に活用できる助成金です。対象は条件を満たす中小企業などで、省エネ設備の導入や運用改善の実践に必要な費用が助成されます。
参照元:
東京都「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業」
オフィスの省エネ対策を計画しよう!
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