2023.08.25 2023.08.26オフィス内装工事
オフィスの耐震対策!耐震基準や耐震診断・耐震改修工事の費用を紹介!
本記事で、オフィスの耐震対策を解説します。耐震基準や耐震診断、耐震改修工事の基本情報や費用もご紹介します。オフィスの開業や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。
目次
オフィスに耐震対策が必要な理由
日本国内でオフィスを開設する際には、震災のリスクに備えなくてはなりません。そこでオフィスに耐震対策が必要な理由を正確に押さえたうえで、店舗の耐震診断や耐震改修工事を計画しましょう。
地震による被害を軽減する
まずオフィスに耐震対策が必要な理由として、地震による被害を軽減する点が挙げられます。耐震性の低いオフィス内では、地震により内装や設備がダメージを受けやすく、来訪者や従業員の安全が脅かされます。
地震により物や人に被害が及ぶと、オフィスの営業が停止されてしまいます。震災後にオフィス内の安全が確保されないと、営業利益を獲得できずオフィス経営が不安定になります。
そのため地震が起きた際でも、オフィスの営業を継続できるように、事前に耐震対策を行うことが大切です。大規模な地震(阪神・淡路大震災や東日本大震災など)を想定し、オフィスの耐震性を高めて、被害の軽減を図りましょう。
企業に対する信頼を得る
次に企業に対する信頼を得る点も、オフィスに耐震対策が必要な理由です。地震が起こった際には、オフィス内の従業員や来訪者の安全を守る社会的責任があります。そこでオフィスに耐震対策を講じなくてはなりません。
例えばオフィス物件の耐震補強工事を計画したり、設備・機器・什器の転倒や落下を防止したりして、オフィスの耐震性を高めることが重要です。また帰宅が困難になる従業員の対応策も講じておくと、企業に対する信頼感を得られます。
さらにオフィス周辺の住民や企業と、震災時に地域共助を実行できるように、防災対策の連携を図ることも大切です。地域内において、定期的な安全点検や避難訓練、避難場所の提供準備などを計画しましょう。
関係法令を遵守する
そして関係法令を遵守する点も、オフィスに耐震対策が必要な理由です。「建築物の耐震改修の促進に関する法律」により、地震による建築物の倒壊などから人命や財産を守るため、耐震改修の促進が求められています。
参照元:e-GOV法令検索「建築物の耐震改修の促進に関する法律」第1条
また大規模地震(阪神淡路大震災や東日本大震災など)のたびに、耐震基準の大幅な改正が行われてきました。
参照元:一般財団法人日本耐震診断協会「耐震診断義務付け対象となる「大型店舗等」とは?」
なお各自治体の判断により、大規模建築物や広域防災拠点となる建築物、避難路沿道の建築物などに対して、耐震診断が義務付けられています。
なお耐震工事以外の工事についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
オフィスの耐震診断
オフィスに適切な耐震対策を講じるためには、正確な耐震診断が必要です。そこで耐震診断の法的義務や耐震基準、方法、業者、費用について確認しましょう。
法的義務
まずオフィスの耐震診断の法的義務は、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(耐震改修促進法)によって、建築基準法改正(1981年5月31日)以前に建てられたオフィス物件を含む建築物(特定建築物)に課せられています。
また2013年からは、不特定多数の人が利用する大規模な建築物(大型店舗等)にも、耐震診断の実施と結果報告の法的義務が課せられています。以下の条件に当てはまるオフィス物件には、耐震診断が必要です。
- 1981年5月31日以前に旧耐震基準に基づいて建てられた大型店舗等
- 3階以上で床面積5,000㎡以上の大型店舗等
- 防災拠点建築物となる大型店舗等
- 避難路沿道建築物となる大型店舗等
参照:一般財団法人日本耐震診断協会「耐震診断義務付け対象となる「大型店舗等」とは?」
そして地方自治体の判断により、以下の条件に当てはまる建築物(オフィス物件を含む)にも、耐震診断が求められます。
- 不特定多数・避難弱者が利用する大規模建築物等
- 広域防災拠点となる建築物
- 避難路沿道の建築物
耐震基準
次にオフィスの耐震基準とは、「新耐震基準」を指します。1981年に建築基準法が改正され、大規模地震(震度6強〜7程度)でも倒壊しない建築物構造が求められています。1960~1970年代の地震被害を受けて、新耐震基準へと改正されました。
一方で旧耐震基準では、中規模地震(震度5強程度)でも損傷しない建築物構造が求められていました。そのため1995年の阪神・淡路大震災では、新耐震基準に基づいた建築物より、旧耐震基準に基づいた建築物のほうが大きな被害を受けました。
方法
またオフィスの耐震診断の方法も確認しましょう。
- 予備調査
- 現地調査
- 詳細診断
まずオフィスの耐震診断は、予備調査から開始されます。予備調査では、耐震診断に必要となる情報(対象となる建築物の構造や使用・増改築の履歴など)が収集されます。
続いて現地調査では、目視により建築物が調査され、設計図書の内容や建築修繕履歴等も確認されます。また診断レベルに応じて、建築物の基礎や地盤、劣化状況、部材寸法、配筋状況、コンクリート強度なども調査されます。
そして詳細診断は、建築物構造に応じて第一次~第三次まで実施されます。
- 第一次診断:柱と壁の断面積から構造耐震指標を評価
- 第二次診断:柱と壁の断面積と鉄筋の影響から構造耐震指標を評価
- 第三次診断:柱と壁の断面積と鉄筋・梁の影響から保有水平耐力を評価
耐震診断を依頼できる業者
そしてオフィスの耐震診断を依頼できる業者は、関係機関で必要な講習を受けた資格保持者です。法令に基づいて、耐震診断や耐震改修工事は有資格者によって行われます。
したがって耐震診断を依頼する業者を慎重に選ぶ必要があります。詐欺や悪質な勧誘から不利益を被る恐れがあるため、必要以上に耐震診断や耐震改修工事を勧める業者には注意が必要です。
また自治体によっては、耐震診断を依頼できる業者の登録制度が設けられています。トラブルを避けるために、自治体の登録システムを活用しましょう。ただし自治体に登録されてないからといって、信頼できない業者とは限りません。そして耐震支援ポータルサイトも活用できます。
参照元:一般財団法人 日本建築防災協会「耐震支援ポータルサイト」
費用
なおオフィスの耐震診断の費用は、1,000~4,000円程度/㎡です。ただし建築物の構造や面積などによって変動します。
下表に、耐震診断の費用相場をまとめましたので、ご覧ください。
建物 | 延床面積の目安 | 費用の目安 |
RC造(鉄筋コンクリート造) | 1,000㎡~3,000㎡1,000㎡以下 | 1,000~2,500 円/㎡2,000円以上 |
S造(鉄骨造) | 1,000㎡~3,000㎡1,000㎡以下 | 1,000~3,000円/㎡2,500円以上 |
木造(在来軸組構法) | 120㎡程度 | 40万~50万円程度 |
参照元:一般財団法人 日本耐震診断協会「耐震診断の料金(費用)」
上表の費用相場は、参考情報です。設計図のない建築物の耐震診断には、図面の復元費用がかかります。耐震診断を依頼する業者から見積りを取りましょう。
なおオフィス空間デザインのポイントについてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
オフィス耐震改修工事の基本情報
耐震診断で改修が必要と判断されたオフィス物件には、耐震改修工事の努力義務があります。震災被害の軽減と企業の信頼獲得のために、耐震改修工事を検討しましょう。それでは耐震改修工事の目的と流れ、種類、注意点をご紹介します。
目的
まずオフィス耐震改修工事の目的は、躯体の強度と内装の安全性の補強です。
建築物の躯体には基礎や梁、柱、壁などが含まれ、建築物を支える役割があります。躯体の強度を高めて、地震の揺れに耐えられると、破損や損壊を防止できます。特に壁の強度が建築物の耐震性を左右するため、耐震壁を取り入れるとオフィスの強度を高められます。
そして強度を高めた躯体に内装材を施工することで、内装の安全性を高められます。オフィスの内装空間には内装材(天井材と壁材、床材、建具など)だけではなく、設備・機器・什器なども含まれます。人命や財産を守るためには、地震の揺れに耐えうる内装に改修することが必要です。
流れ
次にオフィス耐震改修工事の流れをご確認ください。
- 工事の計画
- 工事の開始(基礎の打ち増しや柱や梁などの固定、壁の増強など)
- 工事後の検査
まず工事の計画では、工事にかかる費用や期間を計算して、オフィスの営業予定を検討しましょう。工事の内容や期間などに応じて、営業時間短縮や休業が必要です。
次に工事が開始されると、基礎の打ち増しは鉄筋が入っていないオフィス物件に必要です。柱や梁などの固定には、筋交が接合部分から外れないように、耐震金物が用いられます。壁の増強には、耐震壁が施されます。
そして工事後の検査により、耐震材の施工状態が確認されます。耐震診断の結果により必要な工事内容は異なるため、業者の提案する工事内容を確認しましょう。
種類
またオフィス耐震改修工事は、以下の3種類に分けられます。
- 耐震補強工事
- 制震補強工事
- 免震補強工事
耐震補強工事では、建築物の耐震性を補強するために、耐震壁や外付けフレームなどが施工されます。既存の建築物に施工できるため、オフィスの営業を続けながら、コストを抑えやすいです。
制震補強工事では、建築物の制振性を補強するために、ダンバーなどの制震装置が施工されます。制振装置が地震の揺れを受け止めますが、オフィス間取りによって施工が制限されます。
免震補強工事では、建築物の免振性を補強するために、基礎との間に免振装置が施工されます。オフィスに地震の揺れを伝えないことができますが、大がかりな工事のためコストがかかります。
注意点
そしてオフィス耐震改修工事の注意点も把握しておきましょう。
- 工事内容によっては休業や移転が必要になる
- 耐震診断の結果によっては建て替えが必要になる
- 賃貸オフィスなら貸主が判断する
オフィスのビルや物件を所有している場合は、耐震診断結果に基づいて、耐震改修工事の内容を決めましょう。オフィスを賃借している場合は、貸主が耐震診断や耐震改修工事を判断します。
なおオフィスの内装工事を依頼する業者の選び方をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
オフィス耐震改修工事の費用
オフィスに耐震改修工事を依頼するためには、必要な予算を確保しなくてはなりません。そこでオフィスの耐震改修工事の相場と内訳をご紹介します。経費の無駄を省けるように、節約法も確認しましょう。
相場
まずオフィス耐震改修工事費用の相場は、3万〜10万円/㎡程度です。50㎡(約15坪)のオフィスなら、150万〜500万円程度かかります。ただし建築物全体の耐震改修工事を想定した金額となります。
また耐震改修工事費用は、オフィスの入居する建築物の規模や構造、耐震補強材、工法などによって変動します。例えば居抜き物件(前所有者の施工した内装や設備などが残っている状態)とスケルトン物件(躯体だけの状態)では、必要な工事内容が異なります。
そのため耐震改修工事を依頼する業者に、工事の見積もりを依頼することが大切です。工事前の耐震診断の費用も含めて、予算を確保しましょう。
内訳
次にオフィス耐震改修工事費用の内訳について、下表にまとめました。参考情報として、50㎡の小規模オフィスにかかる費用を試算してあります。
工事費用の内訳 | 工事費用の相場 | 工事費用の試算50㎡の小規模オフィス |
耐震補強 | 5千〜3万円/㎡程度 | 25万~150万円程度 |
制震補強 | 5千〜3万円/㎡程度 | 25万~150万円程度 |
免震補強 | 2万〜4万円/㎡程度 | 100万~200万円程度 |
合計 | 3万〜10万円/㎡程度 | 150万~500万円程度 |
上表のとおり免振補強の工事費用が、耐震補強や制振補強よりも高いです。ただし耐震診断結果によって、全ての工事が必要になるわけではありません。また耐震補強後に施工する壁材によって費用は変動し、免震装置にはメンテナンス費用もかかります。
節約法
そしてオフィス耐震改修工事費用の節約法をご紹介します。
- 相見積もりを取る
- 補助金・助成金を申請する
- 耐震補強材の種類を検討する
まず相見積もりを取ることで、複数の業者が提案した工事の内容と費用を比較できます。オフィスの耐震診断と耐震補強工事を同じ業者に依頼するほうが、相談の手間や手数料などを節約できます。
また補助金・助成金を申請をすることで、返済義務のない資金を受給できます。オフィス所在地を管轄する自治体が運営する制度を調査しましょう。
なお耐震補強材の種類を検討することで、材料費を節約できます。耐震診断結果に基づいて、オフィスに必要な耐震性を確認しましょう。
なおオフィスに対する内装制限についてまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
オフィスに耐震対策を講じよう!
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