2024.06.21 2024.07.05オフィスデザイン
オフィスをユニバーサルデザイン(バリアフリー化)する方法と費用・事例
本記事で、オフィスをユニバーサルデザイン(バリアフリー化)する方法と費用を解説します。またポイントや事例もご紹介します。オフィスの新設や移転、リニューアルなどをご検討中の方は、ぜひご覧ください。
目次
オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)に関する基本情報
オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)を検討する際には、基本情報を確認しましょう。基本情報を確認することで、検討しやすいからです。それではユニバーサルデザイン(バリアフリー化)の法律や違い、メリット・デメリットをご紹介します。
法律
まずオフィスにユニバーサルデザイン(バリアフリー化)を求める法律には、「バリアフリー法」(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)や「障害者の雇用の促進等に関する法律」などがあります。
参照元:
e-GOV法令検索「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(第6条)
e-GOV法令検索「障害者の雇用の促進等に関する法律」(第5条)
以上の法律に基づいて、障害者を雇用する場合には、健常者と同じように業務を遂行できるように、オフィスのバリアフリー化が必要です。そしてオフィスを訪れる全ての人が利用しやすいように、ユニバーサルデザインが求められています。
参照元:
厚生労働省「障害者雇用促進法の概要(昭和35年法律第123号)」
違い
次にユニバーサルデザインとバリアフリーの違いは、バリアへの対処方法です。バリアフリーは、社会的・制度的・心理的なバリア(障壁)を見つけて除去します。例えばオフィスの階段にスロープを付けたり、近くにエレベーターを増設したりする対処方法です。
一方でユニバーサルデザインは、バリアが生じないように、多様な人が利用しやすい環境を整備します。例えば車いす利用者が移動しやすいように、オフィスの通路幅を広くしたり、自動ドアを設置したりする対処方法です。
参照元:総務省「バリアフリーとユニバーサルデザイン」(1ページ)
メリット
それからオフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のメリットは、採用力の強化や従業員のモチベーション向上、ブランディングの効果、信頼性の向上などです。誰もが働きやすいオフィス環境は、従業員の採用とモチベーションに影響します。
また取引先や消費者に対して、オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)をアピールできれば、ブランディングの効果や信頼性の向上も期待できます。特に医療や福祉などのサービスを提供するオフィスにとって、重要です。
デメリット
しかしコストの増加や機能性の低下などは、ユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のデメリットです。既存のオフィス物件を改修工事するコストや工事後に定期的にメンテナンスするコストがかかります。
また一般的なオフィスとは通路幅や間仕切りなどのデザインが異なるため、移動しづらかったり、空調効率を下げたりする恐れがあります。オフィスを利用する従業員の業務や来訪者の特性などを想定して、ユニバーサルデザイン(バリアフリー化)を検討しましょう。
オフィスをユニバーサルデザイン(バリアフリー化)する方法と費用
基本情報だけではなく、オフィスをユニバーサルデザイン(バリアフリー化)する方法と費用も確認しましょう。5点(自動ドアと手すり・スロープ、センサー式の照明、図記号・多言語、バリアフリートイレ)を取り上げます。
自動ドア
まず自動ドアが、オフィスをユニバーサルデザイン(バリアフリー化)する方法として挙げられます。自動ドアは手動で開閉する必要がなく、衛生的で、セキュリティ対策や入退室記録なども可能です。
自動ドアの費用は、1台20万~100万円程度(本体価格と工事費用)です。ただし自動ドアのサイズや台数によって、費用は変動します。オフィスに施工できるドアの種類と費用をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
手すり・スロープ
次に手すり・スロープも、オフィスをユニバーサルデザイン(バリアフリー化)する方法です。通路や階段に手すりやスロープを施工すれば、足腰の弱い高齢者や視覚障がい者らが通行しやすくなります。
手すりの費用はm単価1~3万円程度(本体価格と工事費用)で、スロープの費用はm単価5~10万円程度(本体価格と工事費用)です。ただし手すり・スロープの材質や長さなどによって、費用は変動します。
センサー式の照明
またセンサー式の照明も、オフィスをユニバーサルデザイン(バリアフリー化)する方法です。センサー式照明は、人の通行や室内の照度を感知して自動的に点灯や調整をできます。オフィスの休憩室やトイレなどに必要です。
センサー式照明の費用は、1箇所1万~5万円程度(本体価格と工事費用)です。ただし照明の設置場所や数などによって、費用は変動します。オフィスに適した照明器具の種類をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
図記号(ピクトグラム)・多言語による案内
それから図記号(ピクトグラム)・多言語も、オフィスをユニバーサルデザイン(バリアフリー化)する方法です。案内用の図記号(ピクトグラム)には、国際規格が定められています。
参照元:一般社団法人日本標識工業会「図記号とは」(1ページ)
図記号(ピクトグラム)の費用は1箇所数万円程度(デザイン・工事費用)で、・多言語案内の費用は、文字単価数十円程度です。ただし案内を表示させる方法(文字や音声)や設備機器などによって、費用は変動します。
バリアフリートイレ
そしてバリアフリートイレも、オフィスをユニバーサルデザイン(バリアフリー化)する方法です。バリアフリートイレは、車いすやオストメイト、ベビーカー、介助犬などの利用者に対応できます。
参照元:厚生労働省「広いスペースのバリアフリートイレを必要としている方が困っています。」
バリアフリートイレの費用は、1箇所100万~300万円程度(本体価格と工事費用)です。ただしトイレの広さや機能などによって、費用は変動します。オフィスにデザインできるトイレの種類と費用をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のポイント
方法と費用に加えて、オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のポイントも確認しましょう。本記事では、7点(補助金・助成金と物件、7原則、ゾーニング・レイアウト、通路の幅、設備・機器・什器、安全対策)を取り上げます。
補助金・助成金
まず補助金・助成金が、オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のポイントです。国や地方自治体が運営している補助金・助成金ごとに、申請条件や用途などが異なります。
参照元:
そこで導入したいユニバーサルデザイン(バリアフリー化)の方法に当てはまる補助金・助成金を選びましょう。オフィスの移転に活用できる補助金・助成金をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
物件の立地・階数
次に物件の立地・階数も、オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のポイントです。オフィスを新設・移転する場合には、ユニバーサルデザイン(バリアフリー化)に合う立地や階数の物件を選びましょう。
例えばエレベーターのない地上階の物件では、不便を感じる利用者がいるかもしれません。ただしオフィス物件を選定する際には、賃料や間取り、周辺環境なども重要です。オフィス物件の探し方をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
ユニバーサルデザインの7原則
またユニバーサルデザインの7原則も、オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のポイントです。
- 誰にでも公平に利用できること
- 使う上で自由度が高いこと
- 使い方が簡単ですぐわかること
- 必要な情報がすぐに理解できること
- うっかりミスや危険につながらないデザインであること
- 無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
- アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること
以上の原則以外にも、経済性や耐久性、品質、美しさ、文化性、自然環境配慮などの原則も重要です。
フロアのゾーニング・レイアウト
それからフロアのゾーニング・レイアウトも、オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のポイントです。オフィスの事業内容や利用者の特性に応じて、必要なゾーン(受付や執務、休憩などのゾーン)を配置します。
そして各ゾーンの位置関係や利用者の動線などを考慮しながら、各ゾーンのレイアウトを検討しましょう。オフィスのレイアウトを変更する流れをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
通路の幅
続いて通路の幅も、オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のポイントです。バリアフリー法や障害者雇用促進法に基づいて、オフィスの利用者が通行しやすい通路の幅を計算しましょう。
参照元:
BUSINESS LAWYER「改正障害者雇用促進法の内容と実務上の対応」
ただし通路の幅を決める際には、建築基準法や消防法、労働安全衛生法も遵守しなければなりません。オフィスの廊下に対する法規制をまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
設備・機器・什器のサイズや位置
さらに設備・機器・什器のサイズや位置も、オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のポイントです。オフィスの利用者が困らないように、通信設備やOA機器のサイズや位置を検討しましょう。
設備・機器と同様に、什器(デスクやカウンター、収納棚など)についても、サイズや位置の確認が必要です。オフィスで利用される什器を選ぶポイントをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
安全対策
そして安全対策も、オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)のポイントです。オフィスの利用者が事故を防止したり、災害時に避難したりできるように、安全対策を講じましょう。
またオフィス内の物理的な安全はもちろん、インターネットセキュリティも重要です。オフィスのセキュリティ対策に役立つツールやシステムをまとめてありますので、次の記事も併せてご覧ください。
オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)の事例
ポイントを押さえてユニバーサルデザイン(バリアフリー化)を実現できるように、参考となる事例を調査しましょう。本記事では事例5点を取り上げて、各事例の特徴(自動ドアとスロープ、センサー式照明、ピクトグラム、バリアフリートイレ)をご紹介します。
バリアフリートイレの自動ドア
まず「秋葉原アイマークビル」は、スタイリッシュなオフィスビルです。バリアフリートイレには、自動ドアが設置されています。視覚障害者が認識しやすく、多言語の音声案内ができるユニバーサルデザインです。
またエントランスにも自動ドアが設置されています。安全性や快適性に配慮された引き戸タイプです。ナブコ社の自動ドアは、オフィスを始め、病院や公共交通機関、商業施設などにも採用されています。
スロープが施工されたオフィス
次に「株式会社セレスポ」は、バリアフリーやダイバーシティ、インクルージョンを推進するイベント制作会社です。障害のある従業員が働きやすいオフィス環境を整備するために、スロープが施工されています。
スロープ以外にも、障害のある従業員と相談しながら、必要な設備・機器(拡大器やモニター、筆談ボードなど)が導入されたり、手話教室が開催されたりしています。ユニバーサルデザインやバリアフリー化の取り組みをイベント制作に活かしている企業です。
参照元:とうきょうユニバーサルデザインナビ「株式会社セレスポ」
センサー式照明が施工されたオフィス
また「新栄クリエイト株式会社」は、北海道でライフラインの設計・施工を手掛ける企業です。オフィスにはセンサー式照明が施工されており、人感センサーと照度センサーにより明るさが制御されています。
各ゾーン(執務や会議、通路など)に、適した照明器具の種類(ダウンライトやシーリングライト、など)が採用されています。例えば会議室には埋込型の照明器具が均等に施工されており、落ち着いた雰囲気です。
参照元:三菱電機「納入事例:オフィスの様々な空間、用途にマッチしたLED照明」
オフィスに活用できるピクトグラム
それから「日本レストルーム工業会」は、訪日外国人にも使いやすいように、温水洗浄便座操作用ピクトグラムの国際標準化を目指しています。オフィスに活用できるピクトグラムの事例です。
参照元:IT media NEWS「「おしり洗浄」マーク統一 外国人にも分かりやすく トイレ操作の「標準ピクトグラム」作成」
また「HOHEIM」は、オフィスに活用できるピクトグラムをデザインしています。10種類以上のサイン(「RESTROOM」「WASH HAND」「NO PHONE」「Wi-Fi」など)を販売する企業です。
参照元:AXIS「公共スペースなど様々な場所にフィットするピクトグラム「SIGNS」に新デザインが追加」
バリアフリートイレのレイアウトされたオフィス
そして「株式会社影山鉄工所」は、鉄骨工事を請け負う企業です。オフィスの1階には、バリアフリートイレがレイアウトされています。白を基調にした清潔感のある空間は、車いすで入れる広さです。
オフィスの1階には、溶接体験スペースやカフェ、シャワールームなどもあります。2階にはABWが導入されており、ソファ席やPCデスクなどがレイアウトされています。業務効率化やコミュニケーション活性化を目指すオフィスデザインです。
オフィスのユニバーサルデザイン(バリアフリー化)を検討しよう!
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